工務店は外観や間取りなど住宅の設計に黄金比や白銀比を無理に取り入れない方がいい理由

建築のデザインだけでなく、Webやグラフィックなどのデザインにも用いられているのが、黄金比や白銀比といった比率デザインです。比率の種類には、他にも、青銅比とか白金比とか第二黄金比とかあるようですが、全然使われていないのでここでは省きます。

レイアウトなどを迷っている時、黄金比か白銀比を使うと、結構まとまりやすくなります。他にも写真撮影の構図にも使えますよ。

目次

黄金比 1:1.618(約5:8)

黄金比は、人間にとって最も安定し、美しく感じられる比率と呼ばれています。身近なのは名刺、ほぼ黄金比です。パルテノン神殿やサグラダ・ファミリア、ミロのヴィーナスやモナリザの顔とか、ヨーロッパの昔の芸術は黄金比が採用されているものが多いですね。日本では、金閣寺(鹿苑寺)が該当します。

比率:1:1.618(約5:8)なので、縦1に対して横が1.618ということです。

白銀比 1:1.414 = 1:√2(約5:7)

白銀比は「大和比」とも呼ばれ、日本に深い馴染みがある比率で、日本の古い建築によく用いられている比率です。身近なものでいうと、日本の紙の規格のA3やA4などのA用紙。建築関係だと、法隆寺の金堂や五重塔、日本の畳などがあります。

比率:1:1.414 = 1:√2(約5:7)なので、縦1に対して横が1.414ということです。

黄金比も白銀比も、細かい数字まで覚えきれない場合、1に対して60%~70%という感覚でも最初はいいかもしれません。

戸建て住宅に比率を取り入れると・・・

例えば、黄金比を外観と間取りに取り入れるとしたなら・・・

外観の場合

黄金比を外観設計に取り入れることは、単に数値を適用するだけではなく、建築の伝統と現代のデザインを融合させる芸術的なプロセスです。この比率は、建物が持つ独自のキャラクターを強調し、環境に溶け込むような自然な美しさを創出します。

住宅の外観に黄金比を取り入れる際のポイントは以下の通りです。

ファサードの比率

ファサード、つまり建物の正面は、最初に目に入る部分であり、黄金比を取り入れることで、見る者に深い印象を与えます。例えば、建物の全幅に対して高さを黄金比で設定し、その比率を基に屋根の勾配やバルコニーの出幅を決定します。この比率は、建物の横幅が16.18メートルの場合、高さを10メートルとすることで実現されます。

窓の配置とサイズ

窓は自然光を取り入れるだけでなく、外観の美しさにも大きく寄与します。窓の幅と高さ、そして窓同士の間隔を黄金比に基づいて設計することで、外観にリズムとバランスをもたらします。例えば、窓の幅が1.618メートルならば、高さは1メートルとすることで、黄金比の美学を窓に反映させることができます。

エントランスのデザイン

エントランスは家への入り口であり、訪問者に与える印象が非常に重要です。ドアのサイズを黄金比に基づいて設計し、さらにポーチやアプローチの空間も黄金比を意識して計画します。これにより、エントランス全体が調和と歓迎の雰囲気を醸し出します。

装飾要素

外観の装飾要素にも黄金比を取り入れることができます。例えば、装飾的な柱やトリム、フリーズ(横長の装飾帯)の長さを黄金比に基づいて設計することで、建物全体の美しさを高めます。

色彩とマテリアル

色彩と建材の選択においても、黄金比を意識したバランスが求められます。主要な色とアクセントカラーの面積比を黄金比にすることで、外観に深みと高級感を与えることができます。また、使用する材料の比率にも黄金比を適用し、例えば、石材と塗装面の比率を黄金比にすることで、視覚的な魅力を高めます。

ランドスケープとの調和

建物だけでなく、ランドスケープデザインにおいても黄金比を考慮します。植栽計画や庭のレイアウトに黄金比を取り入れることで、建物と自然との調和を図ります。例えば、庭の主要な花壇と歩道の幅を黄金比に基づいて設計することで、自然と建築が一体となった美しい環境を作り出すことができます。

間取りの場合

黄金比を間取りに取り入れることは、居住空間の美学だけでなく、住む人の心理的な快適さにも影響を与えます。この比率に基づいた空間は、人間の無意識に訴えかけ、落ち着きや安心感を提供すると言われています。

全体のレイアウトの最適化

住宅の全体的な長さと幅を黄金比に基づいて設定することから始めます。この比率を基本として、建物の主要なブロックを形成します。例えば、全体の長さが32.36メートルの場合、幅は20メートルとすることで、黄金比の理想に近づけることができます。この基本的な比率を設定することで、その他の設計要素が自然と調和しやすくなります。

個々の部屋のサイズの精緻化

主要な居室、特にリビングルームや寝室は、黄金比を基にサイズを決定します。部屋の一辺を基準にして、もう一辺を黄金比で設定することで、空間のバランスと機能性を高めます。例えば、リビングルームの長さが6.18メートルならば、幅は3.82メートルとし、この比率を維持することで、部屋全体が落ち着きと美しさを兼ね備えた空間になります。

部屋同士の関係の調整

部屋と部屋の面積比にも黄金比を適用します。リビングと隣接するダイニングエリア、キッチンとの関係性を黄金比に基づいて設計することで、空間の一体感を高め、家族のコミュニケーションを促進する設計になります。

通路と動線の最適化

家の内部を移動する際の通路や動線も、黄金比を意識して計画します。廊下の長さと幅の比率を黄金比に近づけることで、空間の流れをスムーズにし、無駄なく効率的な動線を実現します。

家具の配置と空間利用

家具の配置にも黄金比を取り入れることで、部屋の機能性と美観を向上させます。家具のサイズや配置を黄金比に基づいて計画することで、空間の利用を最適化し、居住空間をより快適にします。

窓と扉の配置の洗練

窓と扉のサイズと配置に黄金比を適用することで、自然光の流れや視覚的なバランスを考慮した設計が可能になります。窓の位置は光の取り入れ方だけでなく、外観との調和も重要であり、黄金比を用いることで、これらの要素を統一的に考慮することができます。

収納スペースの統合

クローゼットや収納スペースも黄金比を意識して設計することで、実用性と美観を兼ね備えた空間を作り出すことができます。収納スペースのサイズを黄金比に基づいて決定することで、部屋の整理整頓がしやすくなり、生活の質を向上させます。

注意点

黄金比は、住宅設計において美的な調和とバランスをもたらす一つのガイドラインですが、それは多くの設計要素の中の一つに過ぎません。実際の設計プロセスでは、黄金比の適用に加えて、住宅の機能性、居住者のニーズ、立地条件、地域の文化や気候、予算などの複数の要素を総合的に考慮し、これらすべての要素が調和し合うようにバランスを取ることが不可欠です。したがって、黄金比を利用する際には、それを絶対的な規則とするのではなく、住宅設計の全体的な繋がりの中で柔軟に適用し、全体としての調和と実用性を最適化することが重要となります。

AIで黄金比を取り入れた外観と間取りを生成してみた

細かい指示はしていないので、微妙ですね(笑)

工務店は外観や間取りなど住宅の設計に黄金比や白銀比を無理に取り入れない方がいい理由
工務店は外観や間取りなど住宅の設計に黄金比や白銀比を無理に取り入れない方がいい理由

上記の画像に限らず、実際、黄金比や白銀比で設計した住宅をいくつかネット上で拝見しましたが、個人的には微妙な感じが否めませんでした。

まぁ、昔からある比率デザインなのに、普及していない状況を鑑みたら、注文住宅に無理して取り入れるほどのものじゃないのかもしれません。

工務店は住宅の設計に黄金比や白銀比を無理に取り入れない方がいい理由

黄金比や白銀比は、古代から美の理想とされてきた比率ですが、現代の住宅設計においては、これらの比率を強引に適用することが、必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。工務店としてはこの問題を深く理解し、適切な設計を行うためには、以下の点を考慮する必要があります。

実用性と住み心地の優先

黄金比や白銀比は、視覚的な調和と美しさを提供することで知られていますが、住宅設計においては、住む人の実用性と快適性が最も重要です。これらの比率を無理に取り入れることで、居住空間が狭くなったり、家具の配置が困難になったりする可能性があります。また、日常生活における動線が不自然になることも考えられます。住宅は、その美観だけでなく、住む人が日々の生活を快適に過ごすための機能性を備えている必要があります。したがって、デザインの美しさを追求するよりも、住み心地や使い勝手を優先するべきです。

地域性と文化の考慮

黄金比や白銀比が普遍的な美の基準とされる一方で、地域によってはこれらの比率が必ずしも適していない場合があります。特に、伝統的な建築様式や地域の風土に根ざした設計が重視されるべきです。日本の伝統的な家屋やヨーロッパの古城など、地域の歴史や文化に合わせた設計が求められることが多いです。地域の文化や気候、風習に合わせた設計を行うことで、住宅はその地域に溶け込み、長く愛されるものとなります。黄金比や白銀比を無理に取り入れることは、地域の文化との不協和を生む可能性があります。

コストとのバランス

黄金比や白銀比を取り入れることは、設計や施工の難易度を上げ、結果としてコストが増加することがあります。特に、これらの比率に基づいた寸法や形状は、標準的な建材や建築方法では対応できないことが多く、カスタムメイドが必要になることがあります。予算に限りがある場合、コストとデザインのバランスを考慮し、無理に高価なデザインを追求するよりも、コストパフォーマンスの良い設計を選択することが望ましいです。

多様なニーズへの対応

注文住宅の住まい手は一人ひとり異なり、それぞれのライフスタイルやニーズに合わせた設計が求められます。黄金比や白銀比は一般的な美の基準であっても、すべての人にとって最適なわけではありません。利用者の具体的な要望に応じた柔軟な設計が、より価値あるサービスを提供することにつながります。例えば、家族構成や趣味、仕事などによっては、標準的な比率ではなく、より個別化された空間設計が必要になることがあります。

機能性との整合性

住宅設計においては、機能性がデザインに優先します。黄金比や白銀比を取り入れたデザインが、必ずしも機能的な空間を生み出すとは限らないのです。例えば、キッチンやバスルームなどの水回りの配置は、使用の便利さを考慮して最適化されるべきであり、単に比率が美しいからといって妥協するべきではありません。また、家具の配置や収納スペースの設計においても、実際の使用シーンを想定し、利便性を最優先に考えるべきです。

総合的なデザインの調和

黄金比や白銀比は、あくまでデザインの一要素に過ぎません。全体のデザインコンセプトや他の要素との調和を考慮することなく、これらの比率だけに固執することは、総合的なデザインの観点からは避けるべきです。建物の機能や外観、内装との調和を考慮した上で、比率を適用するかどうかを判断することが重要です。また、建築物全体のバランスや周囲の環境との調和も重要な要素です。デザインの各要素が互いに補完し合い、統一感のある美しい住宅を創出することが、最終的な目標です。


黄金比や白銀比などの比率デザインも大事ですが、住宅設計に取り入れる際は、美しさと実用性のバランスを考え、住む人の幸せと満足を最優先にした設計を心がけることが大切です。住宅は単なる建築物ではなく、人々の生活が織りなす物語の舞台であり、その設計は住む人の豊かな生活を支えるためのものでなければなりませんからね。

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