工務店が建てる「当たり障りなく誰にでも好まれる家」が売れない理由

新築を無理して建てる必要はないと思っているので、注文住宅に対しても時折厳しい意見を投げかけます。でも、注文住宅に対しての否定的な意見の中で、「いや、それは違うだろ」ってことには、自分の考えを発信しています。

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本当にそう?「注文住宅の場合、あまり個性的な間取りにしてはいけない」

例えば、こんな記事・・・

「注文住宅の場合、あまり個性的な間取りにしてしまうと、他人には非常に住みにくい間取りになってしまい、売れにくくなります。必要がないのに2階にリビングを設けるなど使い勝手が悪い家は中古市場では敬遠されてしまいますね」

住宅特集 | 資産価値を保ち続ける住宅へ変革する日本の住まい事情 – 日経ビジネスオンラインSpecial

やっぱり、不動産屋側の目線だと、売るためにどうしておくべきかで考えるんですね。

「注文住宅の個性的な間取りは売れにくい」というのはよく聞きますが、注文住宅は売るために建ててるわけではないし、個性を出せない注文住宅は建てる必要はないと思っています。また、個性と可変性は違う話ですよね。

それに、必要がないのに2階にリビングを設けるなど使い勝手が悪い家なんて、はなから建ててはいけないでしょう。どんだけ設計が下手なんだよって話しです(笑)

将来売るための家として、先のことばかり考えすぎても、「老後の蓄えにいくらいる?」みたいな、老後のために今を我慢して生きる人みたいなイメージが浮かんでしまいます。はて、そんなので楽しい家づくりになるのでしょうか?

絶対的な価値を高めるために、住宅の評価基準が上がることは良いことです。でも、注文住宅の場合、売買は1対1です。どんなに大勢いても、その内の一組が気に入れば売れるという、相対的な価値が存在することを忘れてはいけないと思いますよ。その上で、他人から共感される個性なら、より価値が上がるってことでしょう。

  • 当たり障りなく誰にでも好まれる家
  • 施主のこだわりを活かした個性ある家

家のつくり手として、新築で建てるとしたら、どちらの家を建てたいですか?

工務店の「当たり障りなく誰にでも好まれる家」はそもそも売れない理由

家は単なる商品ではなく、人生を共にするパートナーです。注文住宅だからこそ、その家が持つべきは、汎用性に加え、個性も必要です。

個性の欠如が生む「感情的なつながり」

家を購入する際、多くの人は単に屋根と壁がある空間を求めているわけではありません。彼らが求めているのは、自分たちのライフスタイルや価値観を反映した、感情的にも結びつけることができる「家」です。当たり障りのない設計は、一見すると多くの人に受け入れられやすいように思えますが、実際には誰の心にも響かない「無色透明」な存在に過ぎません。家に求められるのは、施主の心を動かす「物語」です。

施主が自分の家に求めるのは、ただの住居ではなく、自分たちの個性やストーリーが反映された、生活の舞台です。家族の成長、趣味、仕事、そして日々の営みが織りなす物語が、その家には息づいているべきです。当たり障りのない家では、このような深い感情的なつながりを築くことはできません。施主が自分たちの家に誇りを持ち、愛着を感じるためには、その家が彼らの個性を映し出す鏡である必要があります。

競争の激化と「差別化」の失敗

市場には類似した家が数多く存在し、それぞれが「良質」であることを謳っています。しかし、このような環境下では、差別化が重要な成功の鍵となります。当たり障りのない家は、他の家との差別化が図れず、結果として見過ごされがちです。工務店としては、施主の個性を活かした家づくりを通じて、他とは一線を画す独自性を打ち出すことが求められます。

この差別化の失敗は、市場での見えない競争において、工務店が後塵を拝する結果につながります。施主にとっても、自分たちの家が他とは違う独自の魅力を持っていることは大きな価値です。この独自性は、設計のオリジナリティ、使用される素材の質、あるいは家の機能性において、明確に示されるべきです。工務店が市場で成功を収めるためには、施主の夢を形にすることで、他にはない価値を創造することが不可欠です。

「安全な選択」の罠

多くの工務店が陥りがちなのが、「安全な選択」をすることです。つまり、リスクを避けるために、施主の要望をあまり反映させず、一般的な間取りやデザインに留めてしまうことです。しかし、この「安全」は長期的に見ると、施主の満足度の低下や、市場での競争力の喪失につながります。施主の夢や希望を形にすることで、真の意味での満足を提供することが、結果的には工務店のブランド価値を高めることになります。

「安全な選択」は、一見するとリスクが少ないように見えますが、実際には施主の深い満足という点で大きな機会損失を生むことになります。施主が本当に望むのは、自分たちのライフスタイルに合わせたカスタマイズされた空間です。工務店が提供する家が、施主の個性や夢を反映していなければ、施主はその家に対して深い愛着を持つことはなく、結果としてその家に長く留まることはありません。工務店は、施主の要望を深く理解し、それを家づくりに反映させることで、施主の心に残る家を建てることが求められています。


以上の点を踏まえると、工務店が建てる「当たり障りなく誰にでも好まれる家」がそもそも売れない理由は明らかです。将来売るための「当たり障りなく誰にでも好まれる家」は、不動産会社や量産型の住宅メーカーに任せておけば良いのです。

工務店は将来売るための注文住宅よりも施主のこだわりを活かした個性ある家を提案した方が良い理由

注文住宅を建てる際には、施主のライフスタイルや価値観が大きく反映されるべきです。それは、単に一時的な住まいを提供するのではなく、施主の人生に深く寄り添う空間を創出するという工務店の責務に他なりません。ここでは、施主のこだわりを活かした個性ある家を提案することの重要性を、さまざまな角度から詳細に説明します。

個性が生む「唯一無二」の価値の深堀り

個性ある家は、その家族だけの特別な物語を持っています。市場には同じような家が溢れている中で、唯一無二の家は、施主だけでなく、その家を訪れる人々にも強い印象を残します。それは、家そのものが持つ独自のデザインや機能性だけでなく、施主の生活に寄り添った細やかな配慮が反映されているからです。このような家は、住む人の満足度を格段に高めると同時に、工務店のポートフォリオにおいても際立った存在となり、新たな顧客を引きつける「生きた広告」となり得ます。

長期的な信頼関係の構築とその具体例

施主の夢を実現することで築かれる信頼関係は、一過性のものではありません。施主が家に対して持つ愛着は、工務店に対する信頼と直結し、これがリフォームやメンテナンスの際に再び工務店を選ぶ大きな理由となります。また、施主の満足は強力な口コミとなり、新規顧客獲得の最良の手段です。地域で「夢を叶える工務店」としての評判を確立することは、長期的なビジネスの発展に不可欠です。

柔軟性と将来性の両立の詳細

個性的な間取りが将来の売却に不利という懸念は、設計段階での工夫によって克服できます。例えば、可動式の壁を用いることで、将来的に間取りを変更しやすくするなど、柔軟性を持たせることが可能です。このような設計は、施主の現在のニーズを満たしつつ、将来の市場の変化にも対応できる家づくりを実現します。工務店の提案力と技術力を駆使することで、他社との差別化を図り、市場における競争力を高めることができます。

地域性との調和の重要性

地域性を考慮した家づくりは、その地域の気候や文化、歴史に対する深い理解を必要とします。地域の特色を活かした設計は、住む人の快適性を高めるだけでなく、地域の伝統や風土を反映した家づくりによって、地域コミュニティへの貢献にもつながります。工務店が地域に貢献する姿勢を示すことは、企業イメージの向上に寄与し、地域住民からの信頼獲得にも繋がります。

経済的な観点からのメリットの具体化

個性ある家は、施主にとっての満足度が高いため、長期間住み続ける傾向にあります。これは、家に対する投資の総額を抑えることに繋がり、経済的なメリットをもたらします。また、家が施主のライフステージに合わせて進化することで、常に最適な住環境を維持することができ、これは経済的な観点だけでなく、精神的な満足感にも寄与します。工務店が提案する家づくりは、単に一時的な住まいを提供するのではなく、施主の人生に寄り添うパートナーとしての役割を果たすことが求められています。


これらの理由から、工務店は施主のこだわりを最大限に活かした個性ある家づくりを提案することが、施主にとっても、工務店にとっても、そして地域社会にとっても、多大な価値をもたらすと言えるでしょう。将来の売却のみに目を向けるのではなく、施主一人ひとりの夢や希望を形にすることで、真の意味での「価値ある家づくり」を実現することが、今日の工務店には求められているのです。

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