工務店が『こだわりの家』で差別化できない理由

「こだわりの家」というような言葉は、今では、設計事務所はもとより工務店にとどまらず、パワービルダーやハウスメーカーも使う時代です。

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『こだわりの家』は標準と化す

『こだわりの家』をつくり手側がどこも使っている以上、それは、差別化された強みではなくて、当たり前という標準なわけです。

ただ、皆が使うことで、その「こだわり」は多様化してきており、安易に「こだわりの家」でひとくくりにできなくなってきています。皆が皆、同じ内容ではなく、そのレベルにも様々あるってことです。

例えば、「自然素材が使いたい」と一言で言っても、とりあえずなんでもいいという人もいれば、国産材で産地レベルまでこだわる人だっています。とりあえずカタログから選べればいいという人もいれば、施主支給レベルまでこだわる人だっています。

と言っても、一部のマニアックな人を除けば、大半の一般の方の「こだわり」は、程度がしれたものです。そんな「こだわり」に振り回され、全てを飲み込み、カタチにしてしまうのは、恐いですよ・・・特に、間取りなんて、一時の感情で考えてることがほとんどですからね。

自分のライフスタイルを見つめ直せば、すぐに気付くことですが、5年、10年、20年と、いつも同じ暮らし方をしているわけではありません。絶対に変わっていきます。家族という複数人での暮らしなわけですから、より変化はありますよね。

例えば、子どもはいつか家を出るので、子ども部屋なんてそのうち使わなくなる可能性は高いですし、インテリアの好みだって、いつの間にか変わってしまうかもしれません。

でも、このような変化の予測は様々あり、誰にもわからないのです。

「同じ家を住み替える感覚」を持てるかどうか

だから、今の「こだわり」だけで、つくり込み過ぎてしまうと、ライフスタイルが大きく変化した時、居心地の悪い家になってしまう可能性は高くなります。まぁ、「住めば都」という言葉があるように、人には慣れると不便も気にしなくなるという順応性もありますが・・・

でも、変化があることがわかっているのだから、家そのものをシンプルにしておき、状況に応じて、簡単に空間の構成を変えられるぐらい自由度の高いつくりにしておけば、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できるわけです。

つまり、つくり手側も住まい手側も「同じ家を住み替える感覚」を持てるかどうかで、ライフスタイルの変化にも左右されない、快適な暮らしが続きやすくなるのです。

でも、注文住宅と言えば、

  • 延べ床面積が広い方が良い。
  • 部屋数が多いほうが良い。
  • 家族それぞれの個室がある方が良い。

どこぞの住宅会社の影響で、大体こんなイメージがついています。「メーカー主導の家づくり」ってやつです。

だから、これから家を建てようとする大半の方は、「何帖の広さが欲しくて、リビングがあって、子ども部屋があって、こんな風に仕切られていて・・・」といったイメージを持っていることがほとんどです。

こういったメーカー主導の家づくりを好む人は大多数います。その上での「こだわり」ですからね。どこぞの住宅会社の影響で、頭の中が染まりきってたりして、何言っても変わらない人や、メーカー主導の家づくりの方が適している人は、つくり手側も住まい手側も大勢います。

・・・そんな、その他大勢の中に入りたいですか?

「施主が求める家=こだわりの家」はレベルの低い話

そんな要望や概念はぶち壊したほうが良いんですよ。もちろん、そんなことをすれば、誰にでも共感されるものではなくなってきますので、大勢には受け止められません。

ですが、たとえ相手が描いているイメージとは大きく違っても、施主側が想っていることに向き合い、その提案を裏付ける哲学がしっかりしていれば、共感者は増えていきますよ。(この辺は、どうカタチにしたらいいかという建築的センスが求められます。)

施主が求める家をつくることが、「こだわりの家」としているのなら、もうそれはレベルの低い話です。求められたものをそのままつくるのではなくて、「どうつくれば、より豊かに暮らせるのか」を考え、それを家というカタチにしていき、どう暮せばいいのかを提案するところまで繋げていかないといけません。

言われたことをただ建築物として建ててるだけなのか、建築物に加え、暮らし方の提案までするのか、これからの家づくりの分かれ道だと思いますよ。

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