工務店が時代を先取ることはないので、ITと建築の融合に振り回されず目の前の家づくりに向き合った方が良い理由

デジタルマーケティングディレクターの小川和也さんと、建築家の隈研吾さんによる、ITと建築の融合についての対談が面白いですね。

テクノロジーによって、家電や自動車などあらゆるモノが進化を続けている中で、建築はどうなのか?その可能性を語り尽くす内容です。

工務店が時代を先取ることはないので、ITと建築の融合に振り回されず目の前の家づくりに向き合った方が良い理由

いくつか興味深かった点を掘り下げると、、、

目次

家が知能を持つ時代が来る

小川:建物そのものが知能を持つ、つまり建築物やまちと人工知能が融合して、「知能を持つ家」みたいなものが現れる可能性もあると思いますか。たとえば家が知能を持つことで、その住人の健康状態を把握して健康管理の一助を果たしたり、住人の快適度を自動的にコントロールしたりと。

隈:それはあり得るでしょうね。住人の出入りに応じて冷暖房がコントロールされたりすることは当たり前になって。人間の血液の流れが体温を調整したりするのと同様に、家もひとつの生き物として使っている人間に寄り添い、人間を守ってくれるような。

この辺は、ハウスメーカーが提案しているスマートハウスがちょっと進化した程度の内容ですが、家の知能が低価格で普及して、快適度のコントロールだけでなく、瑕疵や老朽化なども知らせてくれるようになれば、家に対する将来的な心配もすこしは取り除けそうな気がします。

家が建築家から解放される

小川:なるほど。その体験も、ある種の仮想建築という概念に相当するのかもしれませんね。仮想だから、制約に縛られない自由な建築に挑める点で、クリエイティビティを拡張できるのかもしれません。将来、3Dプリンターで自分の家をつくって、そこに住むということもあり得るんでしょうかね。

隈:ええ、充分あり得ます。3Dプリンターで自分の家をつくって住むなんてことは、あり得ちゃいますよ。

建築家の隈さんも3Dプリンターの可能性を感じていますね。

建築基準法の壁がありますが、3Dプリンターが進化して普及したら、住まい手自身で家をつくることも可能ですから、より建築が、より家づくりが身近になると感じています。材料も自然に還るエコな素材使ってもいいですね。

早くそんな時代が来てほしいです。

追記

2023年、ようやく日本でも3Dプリンター住宅が始動しました。

球体の3Dプリンター住宅「serendix10(スフィアモデル)」が話題になっているセレンディクス社(兵庫県西宮市)が、ついに夫婦向け一般住宅となる3Dプリンター住宅「serendix50」・開発コード「フジツボモデル」を完成させた。2023年8月末から6棟限定で販売を開始している。つい先日、商用日本第一号の完成をお伝えしたばかりだが、いよいよ、3Dプリンターの家に住める時代が現実のものになりつつある。

一般向け3Dプリンター住宅、水回り完備550万円で販売開始! 44時間30分で施工、シニアに大人気の理由は? 50平米1LDK・二人世帯向け「serendix50」

デジタルで壁や膜をつくる

隈:まず、柔らかい素材、膜素材みたいなもので色々なことができるようになってきているので、境界の考え方も大きく変わりつつあります。うちの事務所にも、カーテンや布とか、膜を専門に扱っているスタッフもいます。

この考え方は好きですね。壁で遊ぶ感覚ですね。

間仕切り壁なんて、受け材や間柱うって、下地材貼って、クロスやら塗り壁やらって、コストが掛かる考え方ですし、壁イコールそういう作り方だと定義付けていることが、やはり遅れているなと感じてしまいます。

そういう作り方が必要なところと、そうでないところを使い分けることができるはずなんですよ。なんでもかんでも壁をつくってたら、可変性も低く、コストも上がる一方です。

また住まい手に、そういう価値観や選択肢が与えられてないのは、損をさせているとしか思えないですね。

工務店が時代を先取ることはないので、目の前の家づくりに向き合った方が良い理由

ITと建築の融合はどんどん進んでいってほしいと思いますが、現実問題、工務店はついていけないでしょう。

近年、3DプリンターやAI技術など、建築業界にも革命的な技術が次々と登場しています。これらの技術は、家づくりの未来を大きく変える可能性を秘めています。しかし、工務店として、これらの最先端技術にどれだけ注力すべきなのか、そしてどのように取り入れるべきなのかは、非常に重要な問題です。

お客様のニーズを理解することが最優先

新しい技術は確かに魅力的ですが、それがすべてのお客様のニーズを満たすわけではありません。例えば、高齢の方々は、最新のテクノロジーに対する理解が低いかもしれません。また、家族構成やライフスタイルによっても、求めるものは大きく異なります。そのため、新技術を取り入れることは大切ですが、それだけに固執せず、まずはお客様の声をしっかりと聞き、それに応じた提案をすることが必要です。

伝統的な技術との融合

日本の建築には、長い歴史と伝統があります。その伝統的な技術や素材の良さを活かしつつ、新しい技術と組み合わせることで、より高品質で、しかも日本らしい家を提供することができます。例えば、伝統的な和室と最新のホームオートメーションシステムを組み合わせることで、新旧の融合を実現することができます。

独自性を持つこと

新技術を取り入れることで、他の工務店と差別化することはできますが、それだけでは真の独自性は生まれません。工務店としての哲学や、お客様との関係性を大切にし、それを家づくりに反映させることが、真の独自性を生む鍵です。独自のデザインや、地域に根ざした提案など、他の工務店にはない独自の価値を提供することが求められます。

持続可能な経営

新しい技術や機器は高価です。それを取り入れることで、初期投資が増える可能性があります。しかし、それを上回る収益が見込めるのか、しっかりと計算する必要があります。また、新技術の導入には、スタッフの研修や教育も必要です。盲目的に新技術を追い求めるのではなく、持続可能な経営を目指すことが大切です。


新しい技術や流行に流されるのではなく、お客様のニーズを第一に考え、それを満たすための最適な方法を選択することが、工務店としての成功への道です。時代の流れに乗るのも大切ですが、それだけが全てではありません。今、目の前のお客様のニーズにしっかりと応えることが、最も重要なのです。

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