持ち家比率の低下で家を建てることは当たり前ではない時代だからこそ、工務店は顧客の感情を動かす必要がある理由

注文住宅の仕事をする上で、気になるのが「持ち家比率」の数字です。

近年、持ち家比率はどの年代でも低下していて、特に、住宅購入のメイン層になる30代・40代の持ち家比率はここ25年で大きく低下しているというデータが、ダイワハウスのコラムの中で取り上げられています。(2015年7月公開)

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持ち家志向80%切りの衝撃!若年層の持ち家志向が減っているのはなぜか?

空き家が大きな社会問題となり、「家が余っている」との声もよく聞きます。確かに空き家数は増えていますが、その事実は、賃貸住宅需要の先細りという事ではないようです。ここでは、「持ち家比率」という視点から賃貸住宅需要について考えてみたいと思います。

持ち家比率がどの年代でも低下しています。特に、住宅の一次取得のメイン層である30代・40代の持ち家比率はここ25年で大きく低下しています。

持ち家志向80%切りの衝撃!若年層の持ち家志向が減っているのはなぜか?
持ち家比率の低下で家を建てることは当たり前ではない時代だからこそ、工務店は顧客の感情を動かす必要がある理由
持ち家世帯率の推移
持ち家比率の低下で家を建てることは当たり前ではない時代だからこそ、工務店は顧客の感情を動かす必要がある理由
世代別 住宅の所有に関する意識(H25年)

家を建てることは当たり前ではない時代!

これらのデータを見て、持ち家志向はまだ8割近くもいると思うか?8割しかいないの?と思うかで、施策も変わってくる気がします。

  • 給与の低下
  • コミュニケーションの面倒臭さ
  • 賃貸住宅の充実さ
  • 晩婚化
  • 独身比率の上昇

などの、その辺りの理由から、20代・30代・40代の「賃貸住宅で構わない」「持ち家である必要性がない」という考えになるのは、自然ですよね。

また、若い世代に「一戸建てを所有して一人前」という、しょうもない見栄は持っていない気もします。そして、誇大広告に対して免疫ができ、騙される人が少なくなったのもあるかもしれません。

余裕なお金と理想的な土地があれば、自分たちだけの家を建てたいと思う人は多いんでしょうけど、現実は、お金も土地もないわけですからね・・・家を建てる(買う)より、まずはライフスタイルにお金を掛けたいでしょ。

さらに、論理的に考えたら、「給料の何倍もの多額の金を借りてまで家を持つ」って、結構異常な考えだと思っています(笑)手放したい時に手放せない、手放したところでローンがチャラになるとは限らないわけですから・・・

そんな状況下で、どうやって注文住宅の集客を行うか?

私自身、工務店などの集客をお手伝いしてはいますが、飽きっぽい性格から賃貸派ですし、「論理的に考えるなら建てないほうがいい」とよく言っています。

とはいえ、人は論理だけで物を購入するわけではありません。「こんな家、建てたい」「こんなキッチンいいな」など、まずは、感情が先に動くわけです。また、論理的に考えて多少の損があるとしても、感情によって行動に移したりします。

「感情を動かす訴求」

これが絶対的に最初に必要です。

まずお客さんに接している訴求は、感情を動かすほどの内容でしょうか?製品情報だけが並べられたカタログなど、つまらなさすぎて論外ですよ。

賃貸アパートの運命は、あなたの手の中にはありませんから。家を買いましょう。

例えば、ロシア・モスクワの不動産会社のシリーズプリント広告で、間取りがプリントされた”テーブルクロスを人の手が引くと、その家に住んでいる住人のCGキャラクター達は、一瞬にして屋外に出されてしまうという表現の広告があります。

題名は「テーブルクロス」。

持ち家比率の低下で家を建てることは当たり前ではない時代だからこそ、工務店は顧客の感情を動かす必要がある理由
持ち家比率の低下で家を建てることは当たり前ではない時代だからこそ、工務店は顧客の感情を動かす必要がある理由
Ads Of The World

コピーである、“The fate of a rented apartment is never in your hands. Buy your own apartment.(賃貸アパートの運命は、あなたの手の中にはありませんから。家を買いましょう。)”は、「賃貸は、いつ何が起きるかわからない。突然家を失う事もあるかもしれません。だから、Mortonで家を探して買いましょう」という内容を訴求しています。

「賃貸はあなたのものではない。」ってことを面白く表現しており、価格や性能だけのアプローチではなく、自分のもの(家)ではないことのデメリットもアプローチとして使えますね。海外ではこういった住宅系のユニークな広告もあるんですね。

日本では賃貸契約の際に、賃借人が有利で大家側が不利な立場になることも多い契約が大半ですが、アメリカの賃貸契約では大家側の立場を守る条件が盛り込まれる契約になるので、ロシアでもそうなのかもしれません。

工務店は顧客の感情を動かすためにどんな訴求方法をすればいいのか?

持ち家比率の低下と賃貸志向の高まりは、注文住宅のビジネスにおいて無視できない現実です。しかし、人々が家を購入する際には、論理的な判断だけでなく、感情も大いに関与します。では、工務店としては、どのように感情を動かす訴求を行えばよいのでしょうか?

ストーリーテリングを活用する

人々は物語に引き込まれます。工務店が提供する家そのものも、一つの物語として捉えることができます。例えば、「この家で過ごす未来の家族の日常」や「自分だけの空間で趣味を楽しむ時間」など、具体的なシナリオを描き出すことで、お客様の感情に訴えかけることができます。物語を紡ぐことで、お客様自身が主人公となり、その家での未来をリアルに感じることができます。

ライフスタイルの提案をする

家を購入するという行為は、その人のライフスタイルに直結しています。ですから、単に「良い家」を提供するだけでなく、その家での「良い生活」を提案することが重要です。例えば、キッチンが広い家を見せる際には、そのキッチンでの料理や家族とのコミュニケーションの楽しさを強調することが有効です。さらに、そのキッチンで作る料理や、家族と過ごす時間のクオリティが向上するといった具体的なメリットを提示することで、感情的な訴求がより深まります。

感情に訴えるビジュアルと音楽を使う

広告やプロモーションビデオにおいては、ビジュアルや音楽も非常に重要な要素です。美しい写真や心に残るメロディは、人々の感情を高め、製品に対する興味や期待を引き出します。ただし、「賃貸はあなたの家ではない」というような直接的すぎるメッセージは避け、より繊細な感情に訴える表現を選ぶことが重要です。

限定性や独自性を強調する

人は何かが「限られている」と感じると、その価値を高く評価します。例えば、特定の地域でしか手に入らないような素材を使った家や、一定期間限定での特典などを提供することで、お客様の購買意欲を刺激することができます。このような限定性や独自性は、お客様が「今しか手に入らない」と感じ、購入に踏み切る可能性を高めます。

信頼と安心感を築く

当然ながら、どれだけ感情に訴えかけても、それが信頼されなければ意味がありません。工務店自体の信頼性や、過去の施工例、お客様の声などをしっかりとアピールすることで、お客様に安心感を与え、購買に至る道を作り出します。特に、過去の成功事例やお客様からの評価を具体的に示すことで、新たなお客様に対してもその信頼性を高めることができます。


感情に訴えかけるマーケティングは、賃貸志向の強まる現代においても非常に有効です。論理的な要素も大切ですが、人々が「欲しい」と思う瞬間は、しばしば感情が先行するもの。その感情をうまく引き出し、高めることが、成功への鍵となるでしょう。

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