工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由

リクルートが、「2017年のトレンド予測」の住まいのトレンドキーワードとして、「リビ充家族」をキーワードに挙げています。

目次

「リビ充」とは?

「リビ充」とは、リビングを最大に広げて多用途に使い、空間は共有しながらも各々が充実した時間を過ごす、ということを表す言葉のようです。

リビングを最大に広げて多用途に使い、空間は共有しながらも各々が充実した時間を過ごす「リビ充家族」が増えてきている。
今年の調査によると、「リビングの広さ」を「妥協したくない・確保したい」と思っている家族は7割近く存在する。それに対して、「主寝室の広さ」にこだわる家族はわずか2割と、間取りにおいては「リビングMAX化、個室min化」が進んでいる。
また、夫婦は1日の約8割の時間をリビングで過ごし、その過ごし方も「子どもの宿題の手伝い」「仕事」「ボディケア」など多岐にわたる。子どものリビング滞在時間も長く、年齢と共に減るものの、高校生でも1日のほぼ半分の時間をリビングで過ごし、「スマホを使う」「電話をかける」といったプライベート性の高い行動をとっており、家族が各々好きに充実した時間を過ごす傾向がある。

2017年のトレンド予測を発表 住まい領域:「リビ充家族」
https://www.recruit.co.jp/newsroom/recruit-sumai/press/upload/trend2017_sumai_1.pdf
工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由
住宅領域における2017年予測
工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由
リビ充家族

「家族」が付くと、ちょっとダサいですね。「リビ充」でいいんでないでしょうか。

リビ充の背景には、リビングの役割が「テレビ中心のくつろぐ場」から、仕事・勉強・遊びなど「家族それぞれの時間を過ごす多機能空間」へ変化していることが挙げられています。「個室min化」とあるように、予算内で余分に個室をつくれないため、空間を共有する傾向が段々と強くなってきているんですよね。

さらに、元々「個室はあるものだ」という先入観から、「なくても、こうすればいい」という建築家などの専門家の提案で、空間を共有して使うことに気付いたりして、空間の多機能化が少しづつ浸透してきた結果でしょうか。

ただ、下記のような後付パーツは、まだまだ一般的ではないですよね・・・こういうの好きなんですけど、個人的な予測だと、大勢には受け入れられず、流行らないと思っています。DIY以下の流行り具合かなと・・・面倒くさいし、なくても困らないですからね。

工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由
リビ充を支援する後付パーツ

キッチン・ダイニング・リビングにとらわれすぎる住宅業界

初めて住宅業界に足を踏み入れた時、不思議だったのが、

  • キッチンは料理するところ
  • ダイニングは食べるところ
  • リビングは団らんの場所

という固定概念でした。役割で考えたら、食べるところが団らんの場所でもいいわけですし、料理するところで食べてもいいわけです。空間の共有、つまり、脱LDKの発想ですね。

間取りをLDKで考えると、「何帖なければいけない」と思い込んでしまうため、家は大きくなりやすいんですよね。そして、見積もりの構造上、大きさが予算に比例します。でも、予算的な問題から、家を大きくすることって厳しいんですよね。

だからこそ、35坪の広さが必要だと思い込んでいる人に、30坪でも暮らせる提案力って必要だと思いますよ。それには、設計力の他に、多機能化も求められますよ。1つのモノで複数の機能がまかなえると、コンパクトな空間になりやすいですからね。

工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由

家族のライフスタイルの多様性への適応不足

「リビ充」というコンセプトは、家族がリビングで様々な活動を楽しむという素晴らしいアイデアに基づいています。しかし、このアイデアが失敗に終わる一つの大きな理由は、家族のライフスタイルの多様性への適応不足です。家族のニーズは子どもの成長、仕事の変化、趣味の変遷など、時間と共に変わります。多くの工務店は、現在の家族のニーズには応えることができても、将来の変化に対応できる柔軟性を持たせた設計を怠りがちです。結果として、家族が成長しニーズが変化した際に、その空間が新しい生活様式に適応できなくなるリスクが生じます。たとえば、子どもが小さいうちは遊び場としてのリビングが重要ですが、成長すると勉強や趣味のスペースが必要になります。このような変化に柔軟に対応できる設計が必要です。

過度なカスタマイズの落とし穴

注文住宅のカスタマイズは顧客の要望に応えるために重要ですが、過度なカスタマイズは将来の変更や再配置を困難にします。多くの工務店が「リビ充」のために一つの空間に多くの機能を詰め込むことで、特定の機能に縛られた固定的な空間を作り出してしまいます。たとえば、リビングに勉強スペース、仕事スペース、リラックススペースを設けることは、その時点でのニーズには応えるかもしれませんが、家族のライフスタイルが変わったときにその空間が適応できなくなる可能性があります。このような設計は、家族のライフスタイルの変化に柔軟に対応できず、結果的に失敗につながることがあります。

シンプルさの欠如

多機能化の本質は、空間を柔軟に、効率的に使用できるようにすることです。しかし、多くの工務店はこの点を見落とし、複雑な構造やデザインを採用しています。シンプルな設計は、家族のニーズの変化に合わせて容易に再配置や再利用が可能であり、長期的な持続可能な住環境を提供します。シンプルさの欠如は、メンテナンスの手間やコストを増加させ、家族にとっての快適さを損なう原因となります。例えば、複雑な内装や特殊な建材を使用した住宅は、将来的な改修やメンテナンスが困難で高額になることがあります。また、特定の機能に特化した設計は、家族のニーズが変わった際にその機能が不要になる可能性があります。

注文住宅を作り込まないことが一番の多機能化なのでは?

現代の住宅設計におけるシンプルさの重要性

現代の住宅市場は、個々の家族のライフスタイルやニーズに合わせたカスタマイズを重視しています。このトレンドは、家族の具体的な要望に応える形での住宅設計を促進していますが、同時に一つの問題を引き起こしています。それは、家族のニーズや好みに合わせて住宅を過度に作り込むことで、将来的なライフスタイルの変化や未来のニーズに対応できなくなるリスクです。注文住宅を細部にわたってカスタマイズすることは、一見顧客の要望に応えているように見えますが、実際にはその家族の将来の変化に対応できない固定的な空間を作り出してしまう可能性があります。

多機能化への誤解

多機能化に関して、工務店経営者や設計者の間でよく見られる誤解は、「一つの空間に多くの機能を詰め込むこと」が多機能化であるという考え方です。しかし、本当の多機能化とは、空間を柔軟に、そして効率的に使用できるようにすることを意味します。過度に作り込まれた空間は、特定の機能に縛られ、将来的な変更や再配置が困難になります。例えば、リビングに勉強スペース、仕事スペース、リラックススペースを設けるのではなく、リビング自体を多目的に使えるような設計が求められています。これにより、家族のライフスタイルの変化に合わせて、空間の使い方を柔軟に変更できるようになります。

シンプルな設計のメリット

シンプルな設計は、住宅の多機能化において多くのメリットを提供します。まず、シンプルな空間は、家族のライフスタイルやニーズの変化に合わせて、容易に再配置や再利用が可能です。これにより、家族が成長し、ニーズが変化しても、住宅はその変化に柔軟に対応できます。また、シンプルな設計は、メンテナンスの容易さやコスト削減にも繋がります。複雑な構造やデザインは、長期的に見てメンテナンスの手間やコストを増加させる可能性があります。シンプルな設計は、これらの問題を最小限に抑え、家族にとって長期的に持続可能な住環境を提供します。


結局のところ、注文住宅の多機能化は、空間などのハードで補うよりも、アイテムなどのソフトや住まい手の使い方で対応した方が良いので、ハードである空間を過度に作り込むのではなく、シンプルで柔軟な設計にしておいた方がいいでしょう。削いだシンプルで柔軟な設計は、家族の多様なライフスタイルの変化に対応し、長期的な快適さと機能性を提供する鍵となるわけです。

おまけ:AIで画像生成した「リビ充」

AIで「リビ充」を生成したら、空間が広すぎて高すぎた(笑)

工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由
工務店が考える「リビ充」が失敗しやすい理由

“現代的な広々としたリビングルームの内部、午後の日差しが大きな窓から差し込むシーン。部屋はミニマリストスタイルで、白とベージュの色調が支配的。リビングの一角には、明るい色の木製の床に座布団が散らばり、子供たちがVRゲームを楽しんでいる様子。別の角には、スタイリッシュなホームオフィスセットアップがあり、大人がノートパソコンでリモートワークをしている。キッチンエリアはリビングと一体化しており、モダンなキッチンカウンターで家族が健康的な夕食を準備しながら会話を楽しんでいる。リビングの中心には、大きなL字型のソファがあり、その上には色とりどりのクッションが置かれている。壁には抽象的なアートワークと家族の写真が飾られ、全体的に暖かく、活気に満ちた雰囲気が漂っている。画像全体は、多機能で充実した家族の生活を表現し、リビングスペースの柔軟性と家族の幸福を強調している。”

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