毒から薬へ。デザインを捨てた男

僕自身、建築学科の出身でもないし、資格もありません。また、設計の実務に深く携わってきたわけでもありません。住宅業界へ足を踏み入れる前は、グラフィックや映像、CGなどのデザインを学んでいました。

でも、ある時、気付くんです。クリエティブなことへ踏み出していくと、毒に侵されていく自分がいることに。感覚的なセンスとか、絶対的な正解のない世界ですから、突き詰めれば突き詰めるほど、自分一人で閉じこもっていき、そして自分のチカラのなさを痛感したりして、どんどん心が病んでいくのです。

そういう状態をよく思っていなかったので、縁があり住宅業界へ関わることになった時、「デザインを捨てよう」と決断するのです。正確には、「デザインをすることを捨てる」です。なので、見たり学んだりして、吸収することは捨ててないということです。もちろん、業務上、多少しなければいけないこともありましたが、できる限り、「自分はデザインを捨てた男だ」と言い聞かせてました。

最初の基準が高かった。

最初に住宅のプランをしっかりと目にしたのは、建築家である父のプランです。付き人みたいなカタチで1年近くいましたから、プランニングやプレゼン、トークなど、施主に対して「家」というものをどう表現するか、伝えるかみたいなことを目にしていきました。

僕自身はCADが使えず、図面は書けませんでしたが、CGで建物をつくり、ノートパソコンをそのCGを見せ、その場で変更があれば、その変わっていく様をお客さんにも見てもらっていました。これが結構反応が良いいんです。紙に印刷されたCGよりも、お客さん側からすると、CGとはいえ、打ち合わせした内容が、その場でカタチとして見えるわけですからね。今で言うところのライブ感を味わっているわけです。

何もが始めてですから、こういうものだとそれが基準になっていますし、年間で150棟近くやってましたから、いい勉強にもなりました。まぁ、そのおかげで私生活は犠牲になりましたが(笑)後になって、色々な工務店や設計事務所を目にして気付くことですが、ハイレベルなことをしてたのは間違いなく、住宅のプランもかなりレベルが高いです。

そして1年経った頃、縁があって、ミサワホームの創業者である三澤千代治さんの元で、働くことになるのです。

だけど、その頃までは、まだ自分の中でデザインを捨てきれずにいて、ベテランの大工や一級建築士に生意気な口をきき、直接的にも間接的にも怒られてきました。父のプランニングが基準になっているのと、三澤さんのバックボーンも影響して、虎の威を借る狐みたいなことですね(笑)

また、建て替えなきゃいけないぐらいの大きな失敗もしてきています。大きかれ小さかれ、ミスがあると、「建築出身じゃないから」「建築を勉強したほうがいい」など皮肉を言われるわけです(笑)

そんな失敗も経てきているので、住宅設計をしていない自分は、プロに対して、家の設計にまで口を出すことに、ちょっとためらいがあったんです。建築出身でない分、設計に対して、どこか遠慮してきてました。

ですが、、、この考えは間違いでした。

遅すぎる変化

衣食住は、生活をしていく上で必要なことではあるけども、もう全てが余ってるんですよね。服は売れないほど余ってるし、食も飲食店が3年以内につぶれる割合は90%のようです。住もわざわざ注文住宅を建てなければいけないなんてことはなく、家余りと呼ばれる時代です。

たらたら変化していたら、どんどん衰退していきます。この変化とは、プロ視点の技術のことを言っているのではありません、お金を払う顧客側が感じる変化です。だから、どんなに突き抜けた変化であろうが、顧客に受け止められるわかりやすい変化である必要があります。

お客さん側は普段、いろいろな分野や業界と接してきているわけですから、つくり手側が住宅業界のカラパゴスなスピードで変化していても、それは遅過ぎていて、他から見たら退化レベルです。

でもこの10年、注文住宅の中でもお客さんが最もわかりやすい形、意匠設計において、全体的な大きな変化と言えば、「オープンな間取り」ぐらいでしょう。あと、ようやくDIYが少しづつ増えてきたところです。

なぜ、そこまで遅いのか?

きっと、プランを考える設計者側が、自分一人だけで考えようとするから、変化が遅くなるんだと思っています。まさに、僕自身がデザインに足を踏みれた時、閉じこもってしまったことと同じ方向性なんです。自分だけで解決しようとする余計な賢さってやつです。

自分自身から発信するものは、自分だけから生み出されたものではありません。これまで経験したことや、取り入れた情報などを、吸収し編集し、そして答えとして発信していきます。

そう考えると、元なるアイデア(素材)は、コンセプトなどの大まかな方向性が共有できる複数の人達で生み出していったほうが、より早く、より良いものが出来上がるのではないでしょうか?三人寄れば文殊の知恵的な。

設計する人を「建築家」「建築士」などと総称して呼びますが、皆が同じスキルなわけではありません。間取りの意匠設計の中でも、得意不得意はあるわけです。だったら、相互補完できた方がいいわけです。

また、お客さんと一緒につくる家づくりにしても同じことが言えます。自社だけ(自分一人)で成し遂げようとするから、DIYなども取り入れたくない考えになるんでしょう。いっしょにつくる途中というのは、その瞬間しか体験できない価値あることなのに、自社だけで(自分一人)で成し遂げようとするから、小さな扱いにしかならないんです。

だから、今度の講座の内容を「設計」をメインにしました。

メルマガではすでに軽く告知していますが、この9月5~6日に名古屋で設計講座を行います。(詳細は、6月22日に公開します。募集期間は7月1日~を予定しています。)

実は最初の企画は、設計ではなくて、ブランディングに関した内容のものでした。でも、自分一人だけで考えようとするその余計な賢さに一石を投じようと思ったのです。なので、今回一緒に講座をする講師にも無理を聞いてもらいました。

これまでの流れを踏まえた上で書くなら、今回の設計講座は、「一緒に設計しませんか?」という招待状でもあります。

クリエティブな方面へ行くと、バカとかクソとか平気で思ってしまう自分がいるんですが、あの頃よりは成長しているので、その毒を薬にしていきます(笑)

 

 

追伸:工務店経営者の方にお知らせです。

参加した工務店経営者の声
今ではたくさんのコンサル会社がいろいろなセミナーをやっている時代、どれを聞いても同じようなセミナーで、言っていることはだいたい同じ、特に共感できるところもなく金儲けでセミナーをやっているとしか思えないようなセミナーばかりでした。そしてある程度規模の大きい工務店、地場ビルダーを対象にしたセミナーが多いことでした。でも以前より何回か井内さん、出口さんのセミナーを受けていますが、とても分かりやすく中小工務店(年間棟数20棟程度まで)を対象にした問題点を取り上げてくれています。

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ABOUTこの記事をかいた人

井内智哉

設計事務所勤務時に、建築家ネットワーク会社・アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)とのコラボしたブランド住宅「AROS」の全国展開に宣伝・広告として携わる。ミサワホーム創業者の三澤千代治氏の新事業・200年住宅「HABITA」の立ち上げから携わり、宣伝・技術・営業・企画などの経験を積む。後に全国の地域工務店200社以上を束ねる住宅のフランチャイズ事業にまで成長。その後、デザイン住宅を軸にした注文住宅の事業「ソラマド」の全国展開に携わる。WEB集客やコミュニティの構築、関東・東海地域の市場開発、提携工務店への研修など、年間150棟ほどの住宅設計のマーケティングサポートを行う。また2013年1月、同社にて新規事業のDIY・リノベーションを提案するお店を立ち上げる。2013年6月より、住宅業界専門のネットマーケティングコーチとして独立。工務店フランチャイズ本部や同業他社とも連携し、地域工務店のサポートや研修などを経て、年間棟数20棟未満の小規模工務店の経営者向けにノウハウやコンテンツを提供している。2014年10月~2015年3月まで日本住宅新聞にて、歴代最年少執筆者として連載。