『近代建築の五原則』は80年以上も前の話

著名な建築家『ル・コルビュジエ』により提唱された、新しい建築の5つの要点があるのですが、改めて読み解いてみたいなと思ってます。

『近代建築の五原則』として、まとめられているその5つとは、

  1. ピロティ
  2. 屋上庭園
  3. 自由な平面
  4. 水平連続窓
  5. 自由な立面

からなります。

近代建築の五原則(きんだいけんちくのごげんそく)は、ル・コルビュジエにより提唱された近代建築の原則とされているが、 “Les 5 points d’une architecture nouvelle”からの誤訳であり、正確には「新しい建築の5つの要点」である。wikipedia

その要素が、より完成度の高いものとして実現された「サヴォア邸」が竣工したのは、1931年です。木造よりも自由度の高い鉄筋コンクリート造です。

近代建築という言葉が使われてますが、もう80年以上も前の話です。原則の言葉をそのままで受け取ると、デザイン先行でデメリットと捉えられがちです。

なので、耐震や断熱などの技術志向が優先される、日本の戸建て住宅に当てはめて考えようとする方は、ほとんどんいないでしょう。・・・いや、世代的に50代以上の設計事務所なら多少の意識はしてるかもしれません(笑)

というか、80年以上も前の話ですよ。そのままで今の時代に合うわけがないでしょ(笑)

「サヴォア邸」をものすごく良い家とも思ってませんが、でも、この

  1. ピロティ
  2. 屋上庭園(テラス)
  3. 自由な平面
  4. 水平連続窓
  5. 自由な立面(ファサード)

は、コンセプトを構成する強烈な要素であることは間違いありません。

なので改めて、これらの考え方をひとつひとつ見つめ直し、本質を捉えた方が良さそうですね。

その本質を上手く取り入れられた時、日本の木造住宅にはデメリットと捉えられがちだったこの原則が、魅力へと変わるかもしれません。また、日本のガラパゴス住宅を打破する魅力的な設計ヒントが隠されているかもしれませんよ。

1.ピロティ

ピロティとは、2階以上の建物において、地上部分が柱(構造体)を残して外部空間とした建築形式、またはその構造体を指すことです。

ピロティが戸建て住宅にもたらすメリットは、そのピロティ部分に車を停めたり、外を感じながらも建物が屋根になり、扱いやすい空間として使えるなどが挙げられるでしょう。

引用:Casa BRUTUS特別編集 最新版 建築家ル・コルビュジエの教科書。

フランス語で「杭」という意味の通り、柱だけで壁がない分、構造上弱いのは間違いありません。阪神大震災でも熊本地震でも、倒壊しやすい建物として取り上げられています。

でも、面積が少ない分、風や津波には強いようです。東日本大震災では、津波で多くの建物が流されましたが、津波の高さが4メートル未満だった地区では、ピロティ式住宅の多くが、比較的軽微な被害で済んでいたことが確認されているとのこと。

私自身も被災地に行ったことがありますが、津波の被害を受けた普通の住宅でも、壁はもがれても柱は残っていたりしていました。

とある被災地の写真

ある一面では弱く、ある一面では強い。

これは単に、現在の技術力では足りてないだけのことなので、柱の強度や揺れた時のチカラの逃し方が整えば、十分活用できると思います。ですが、木の柱では実現は難しいでしょうね。

なぜ、ピロティを設けたかったのか?

木造では構造上、難しいとしても、ピロティがあることで得られるメリットを突き詰めていくと、「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」ということではないでしょうか?

建物部分が屋根になり、雨と日差しが遮られながら外を感じ、建物の境界内なので、どことなくプライベートな空間でもあります。つまり、ピロティ構造でなくとも、「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」があることが、この部分の本質なのではと思っています。

日本の住宅で「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」と言えば、「縁側」「中庭」がこの部分に当たる気がしますね。「土間」も近い感覚ですね。

縁側

2.屋上庭園(屋上テラス)

屋上庭園とは、屋上やベランダなどといった、建築物の上層部に造られた庭園を指します。

形状的に陸屋根になるため、水が溜まりやすいことで防水面を不安視する方もいらっしゃいます。ちゃんと設計する人は水が溜まらないよう流れる勾配をつけていますけどね。

たしかに一昔前は、防水シートやコーキングに頼った防水だったので、施工不良や経年劣化などによる雨漏りの心配が懸念されていました。ただ、最近では防水策として、軽量かつ強靭で耐水性・耐食性・耐候性に優れている金属防水も取り入れやすくなったため、屋上緑化や屋上リビングも増えています。

技術が進歩していても、シート防水と金属防水を一緒のものだと思い、頑なに否定する人もいたりしますが、防水レベルは全然違いますからね。とはいえ、雨漏りは屋根だけでなく、壁側も影響しますので、壁もちゃんと施工しないと意味がないです。

施工レベルが低い工務店は、陸屋根を諦めて、軒やケラバをしっかり出した屋根にするしかないですね(笑)

なぜ庭園(テラス)が屋上でなければならないのか?

本来、庭園やテラスは1階部分に有するものです。なのに、屋上に持っていくのはなぜなのでしょうか?

  • 通常の家の広さでは足りず、屋根を平らにすることで、面積を増やしたかったから?
  • 敷地いっぱいに建てることが良しとされていたから、1階部分に庭を設けられない?
  • 1階だと人の目が気になったり、いたずらに侵されるリスクがあるから?

などが理由として考えられそうですね。

一応、緑化の省エネ効果もあるでしょうが、住宅という小さな規模にそこまでの効果はないでしょうし、1930年代当時に、省エネについてそこまで意識していたとは考えにくいですしね。

個人的には、ピロティと同じ本質を感じていて、「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」として有効利用したいのだと捉えています。

「屋上を使う」という一見、有効的な方法に思いがちですが、勢いで作って最初は使ってたけど、周りの景色が良くはないし、屋上まで上がるのがだんだん面倒くさくなって使わなくなった。・・・なんてこともあるでしょう。屋上に上がるなんて、元々、体験してきていない動線なんですから、ずっと使い続けられる人はごく僅かな気がします。

それならば、屋上でなく、2階の動線として、ベランダ部分を充実させたほうが、「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」として、充実しやすいですよ。これだと、片流れや切妻屋根でも実現可能ですからね。また、緑化でなくデッキでも十分です。

ピロティと屋上庭園を再構築するなら、1階にも2階にも「外を感じながらも、プライベートな感覚を得られる空間」を設けるということなのではないでしょうか。

そして、これは次項の「3.自由な平面」に繋がることですが、屋上がなければ狭いと感じる家のつくりにしないことも求められる気がします。

3.自由な平面

自由な平面とは、部屋の形や配置が構造から解放されることです。間仕切り壁などで自由に空間をつくれるようにすることですね。

外壁だけで構造を成り立たせ、内部の空間をオープンにすることは、木造の場合、かなり小さめの家でないと難しいです。梁成のバランスやそのたわみも考慮すると、支えるための柱も必要だったりします。

積み上げ式ではなく、逆算式で考える。

予算ありきの木造注文住宅の場合、自由な平面を成立させるためには、全体のボリューム(スケルトン)を決めた上で、その中をどのように使うかを、考えていくことです。逆算式ってことです。

なので、そのボリュームは出来る限り矩形である方がいいですし、どの壁は動かせてどの壁は動かせないのかなど、最低限構造を理解しておかないと、始まらないでしょう。構造を理解してない人が間取りを考える時って、「この部屋は何帖」という広さの積み上げ式で考えますからね(笑)

また、自由な平面を一言で言えば、「脱LDK」ですが、今は単なるオープンな間取りにするだけでは、 もうほとんど意味を成しません。なぜなら、住み手が上手く使いこなせないからです。その辺りの内容は下記記事に書いていますので、参考ください。

4.水平連続窓

水平連続窓とは、横長の窓や連窓を設け、建物内部を一様に明るくするということです。

引用:Casa BRUTUS特別編集 最新版 建築家ル・コルビュジエの教科書。

もちろん、窓は耐力壁にはなりませんので、構造とのバランスも必要になります。ですが、先に構造ばかりを意識して、壁ばかりになれば、それはそれで暗い上に狭さも感じる空間になりかねません。

窓と構造を併用するには、「FIX窓+鉄筋ブレス」という組み合わせが、割りと使えます。でも、できれば、窓そのものが耐力壁になればいいので、サッシメーカーの今後の技術に期待したいところです。

窓の役割として求められていたこととは?

1930年代当時、窓の役割として求められていたことは、光と風をどのように取り入れるか?そして、開放感だと思われます。暗い家はそれだけで家の魅力が半減してしまいますし、開放感の有無は同じ床面積でも大きく印象が異なります。

ですが、明るさや開放感のために、外部に大きな窓を設ければ、人の視線も気になり、結局、カーテンやブラインドで隠すことになります。せっかくの南側に面した大きな窓なのに、カーテン閉めっぱなし状態の残念な窓は、この世にたくさん存在しています。これでは窓の意味がありませんよね?

安易にただ窓を設けるだけなら、誰にでもできます。「周りの環境も踏まえ、どのように取り入れるか?」最低限そこを考えた上で、窓やその窓に絡む設計を意識しないと、魅力的な家にはならないですね。

5.自由な立面(ファサード)

自由なファサードとも呼ばれ、特に建物の正面を自由にデザインできるようにする。ということです。

引用:Casa BRUTUS特別編集 最新版 建築家ル・コルビュジエの教科書。

もちろん、木造である以上、構造とのバランスで、窓の位置などは制限があるので、完全に自由とはいきません。デザイン住宅に多い傾向では、陸屋根や庇を省いたりという、余計なものを省いてシンプルなカタチにしたいケースが多く見受けられます。これはこれで、雨漏りのリスクもありますが・・・

なぜ、ファサードを自由にしたかったのか?

そもそも、なぜファサードを自由にしたかったのでしょうか?

ファサード、つまり建物の正面は、家の第一印象にも直結する部分なんですよね。なので、デザイン性を高く、見た人の心をつかむキャッチーなものにしたいからこそ、自由度を求めたのかもしれません。たしかに、ファサードがダサい家は、家の中もダサく見えます(笑)

これは、外構まで繋がる話なので、魅力的な家にするには、アプローチを含めたファサード(建物の正面)のデザインレベルを高める必要があります。

とある建築家は、建物の立面パースを描く時、アプローチを含めたファサードが一番良く見えるように描き込んでいたりします。写真も同じことが言えますよ。

 

一般の方が最初に心を動かすのはわかりやすい見た目

コルビュジエは意匠系の建築家なので、提唱した「新しい建築の5つの要点(近代建築の五原則)」は、意匠が優先されるお話です。しかも、80年以上も前の話です。

ですが、本質を捉えることで、今の時代に沿った取り入れ方ができるのではないでしょうか?まとめると、個人的にはこんな感じです。

  • ピロティ→外を感じられるプライベートな空間(1階)
  • 屋上庭園(テラス)→外を感じられるプライベートな空間(2階や屋上)
  • 自由な平面→構造と脱LDK
  • 水平連続窓→明るさと開放感と視界
  • 自由な立面(ファサード)→外構まで含めた外観デザイン

こんな風に捉えると5つの要素を全部、取り入れられますよね?

もちろん、わかっていてもできないという次なる壁が出てくるでしょうけど、私が今コンセプト住宅として提案している内容は、この要素が全部含まれています。

いつだって一般の方が最初に心を動かすのはわかりやすい見た目です。小難しい技術で心が動くのは精通している人だけですからね。

 

Casa BRUTUS特別編集 最新版 建築家ル・コルビュジエの教科書。

上記の記事内でも、本誌の写真を引用させてもらっています。サヴォア邸は4ページしかありませんが、コルビュジエの他の設計も特集されていますよ。

2016年7月に発売された本ですが、Kindleアンリミテッドなら、2017年8月6日現在、0円で読めます。

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ABOUTこの記事をかいた人

井内智哉

あなたにしかできない世界観のある家づくりを始めよう!そして、家を楽しむことを提案しよう!建材メーカー主導のモノの価値を訴求する家づくりではなく、「暮らしをモノで豊かにしようするのではなく、暮らしを精神的に豊かにする。」そんな考え方です。