工務店は、家づくりの「正しさ」を教える以上に、暮らすことの「楽しさ」を伝えた方が良い理由

ミレニアル世代の影響もあってか、「居住」という定義が少しづつ変わってきています。

ミレニアル世代とは、米国で、2000年代に成人あるいは社会人になる世代。1980年代から2000年代初頭までに生まれた人をいうことが多く、ベビーブーマーの子世代にあたるY世代やデジタルネイティブと呼ばれる世代と重なる。インターネットが普及した環境で育った最初の世代で、情報リテラシーに優れ、自己中心的であるが、他者の多様な価値観を受け入れ、仲間とのつながりを大切にする傾向があるとされる。

ミレニアル世代と一言で言っても、その世代の中にも、それぞれの価値観があるので、健康的な食生活やアウトドアをがっつり好む人もいれば、たしなむ程度の方もいます。0か1かという分け方ではなく、0.3や0.7もいるってことですね。自分にとってのメリットを手軽に調節したいわけです。

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自己表現としての◯◯◯◯=ファッション感覚

アメリカでは、“ブティック型スタジオ”という、新しいフィットネス文化が注目を集めているようです。

“ブティック型スタジオ”とは、ブティックというおしゃれな空間でヨガやピラティスといった定番エクササイズからバイクなどの筋トレと有酸素運動を組み合わせたものまで、幅広いクラスを提供しているスタジオのこと。

記事を読むと、興味深いのですが、

ブティック型スタジオは、19~37歳のミレニアル世代から人気を集めているようです。ミレニアル世代とは、倹約家だが、自分の好きなものにはお金を惜しまないという世代を指します。

その支持されている理由には、

  • ユニークな体験
  • カスタマイズされたトレーニング
  • 仲間との交流

が挙げられています。

フィットネスが当たり前に普及している中、もはや運動するためだけではなく、充実した時間を同じ趣向を持つ仲間と共有する、カフェと同じような意味を持ち始めていて、いまやフィットネスはライフスタイルや価値観を表現するものとしてファッションを超える勢いで流行しているとのこと。

自分の個性や好みを表す”自己表現”を求める人たち

フィットネスだって、性能の良いマシンがあるとか、スキルの高いトレーナーがいるとかあるでしょうが、そんな微妙な違いに惹かれているわけではないってことです。

何をするにしても、自分の個性や好みを表す”自己表現”を求める人たちが増えてきています。

ワクワクできて、自分なりのカスタマイズができて、一緒に価値観を共有できる仲間がいる・・・これって、家づくりにも必要な要素だと思いませんか?

住宅業界も、ローコスト住宅の勢いがあった10年くらい前から、ファッション感覚を持つ人が増えてきた気がします。

そして、ようやくアパレル企業も住宅事業に参入し始めました。アパレルと住宅、お互い苦しんでる業界なので、アパレルのセンスで、住宅業界のダサさをカバーしてほしいものです。

同じ客層をターゲットにしている企業間で、こういう流れは、どんどん増えていくと思いますよ。一人の見込み客を、複数の企業で顧客にしていく「共創」ですね。

ファッション感覚には、どんな発信が必要になるか?

ファッション感覚の相手に届けるためには、どんな発信が必要になるか?を考えてみましょう。

通常、よくある発信ですと、失敗しない系の家づくりのノウハウなどを発信していきます。機能や性能、現場の進捗などや、「こんな仕上げにしよう」的なデザイン的なこともあるでしょう。これらは、一昔前に流行った、「教える側」と「教わる側」という上下をつくり、導いていくというマーケティング手法なのです。

ですが、100の家づくりノウハウがあったとして、施主はその100全てを知らないと、良い家が完成しないというわけではないですよね?しかも、根本的な部分は同じなわけですから、ありふれた情報になり、その発信にたいした差は出てきません。

もはや、「B to C」において、かつ個人レベルで捉えた時、「教える側」と「教わる側」という上下をつくる関係性づくりは、もう時代遅れになりつつあると感じています。

大きな会社なら、質より量を求めなければいけないですし、大した個性も出せませんから、上下をつくる関係性づくりは必要かもしれません。ですが、量より質を求める場合、個性を出せる小さな会社では、上下よりもフラットで対等な関係性づくりが必要です。

正解がないから、対等な関係性が必要!?

なぜなら、「ファッション」で考えてみると、その理由が見えてきます。

ファッションを楽しんでいる人は、お気に入りの服を着たり、上手くコーディネートができたりすることに、楽しみを感じていたりします。でも、どんなファッションに価値を感じるかは、人によって評価が分かれます。自分には似合わないけど、他の人には似合うなんてこともあります。そして、読者モデルやショップ店員など、プロでなくても、ファッションを楽しんでいる人が、たくさんいます。

つまり、「ファッション」には正解がないのです。実際、ファッションって、他人に強要するものでも、されるものでもないですからね。

住宅業界は、モノを中心に回っている世界ですから、ファッション感覚の「正解がないこと」を理解しがたい人たちは多く、無理にでも自分達だけで正解をつくろうとします。(だから売れなくなるんです・・・)

正解のない中で、不特定多数の人に向けて「これが正解だ!」「こうするべきだ!」という発信は、発信者の経験や知識の範囲内でしか答えられない回答なのです。ですが、家のことを隅から隅まで知っていて、色々なジャンルに精通している様なオールマイティーな方はいませんよね。なので、その答えにはどうしても偏りが出てきてしまいます。つくり手であるあなたの理論が間違っているとは言いませんが、たとえそれを知らなくても、良い家が建てられることも事実。

これらを踏まえた上で、住宅における「ファッション感覚」を攻略していくには、「わかりやすさ」「楽しさ」が必要になってきます。

いつの時代も「面倒くさい」ことは避けたいもの。だから、ぱっと見て、他とどう違うか?みたいに、「わかりやすさ」というのは、すごく必要になってきますし、正解がない中での「楽しさ」というのは、「これが正解だ!」「こうするべきだ!」と教える教わる関係性よりも、「こう思う」「これは良いよね」「こっちも良いよ」などの、共感や意見交換できる関係性が求められるのです。だから、上下よりもフラットで対等な関係性が必要なのです。

もちろん、クソ会社の小手先マーケティングによって、上辺だけの楽しさに騙され、後々後悔している住み手の方もいます。でも、真面目につくっているところが、ファッション感覚を理解し、訴求できるようになれば、騙される人も減ると思いますよ。

暮らすことの楽しさを伝える方が結果的に良い家になる!?

ファッション感覚においては、家づくりの「正しさ」を教えるよりも、暮らすことの「楽しさ」を伝える方が、精神的な満足につながり、結果的に施主にとっては良い家になると思っています。

なので、集客を考えていくと、「楽しさを感じさせるために何ができるか?」ってことを考えていく必要があります。

暮らすことの楽しさが分からない中で、家づくりのことをあれこれと知識だけ教えられるよりも、暮らす楽しさを知ってもらった上で、家づくりのことを知ってもらった方が意識も違ってきます。

その方法論には、デザイン性を高める、写真などのビジュアルで伝えるなどもありますが、そういった手段の前に、根本的な部分がないと、上辺だけになり続きません。

根本的な部分=自分自身が楽しんでいるかどうか?

一番は、自分自身が家づくりに携わっていて楽しいかどうか?でしょう。さらには、自身が「暮らし」を楽しんでいるかどうかです。

家のことに詳しくない人に「こういう家に住んだら楽しそう」「こういう家づくりができたら楽しそう」などと思ってもらえるには、つくり手自身が楽しんでいることが必要です。

ただ、「家づくり」を楽しんでいる人は少しづつ増えていますが、「暮らし」を楽しんでいるか?と問われると、自信を持って応えられる人は少ないでしょう。暮らしを楽しむって、耐震性や断熱性などの話ではないですからね。自宅の暮らしぶりを他人に見せられないつくり手側は多いですよ。

だからこそ、そこが差になります。仕事としてただ家を建ててるだけとか、技術オタクで素人を楽しませようという気がない人には無理な話ですから。

「普通」が不幸になる時代

こういう流れになってくると、「普通」を求める人が、どんどん不幸になっていく気がしてならないんですよね。不幸って言うと言いすぎかもしれませんが、きっと、幸福感が満たされない状態に陥ることでしょう。

「普通」とはその時代の平均値みたいなものです。なので、必ずしも右肩上がりの時代でもなく、価値観も多様化している今は、「普通」って一番損をしてしまう気がします。通勤ラッシュや昼食難民など、何も考えずに皆と同じ行動してる「普通」は、ストレスを得やすいし、心が満たされないんですよ。

「普通」が不幸に繋がる原因は、個々人のニーズや夢が「普通」の枠に収まらなくなっていることにあるので、工務店としては、顧客一人ひとりの独自性を理解し、それに応じた提案を行う必要があります。これには、従来の家づくりの枠組みを超えた発想と、柔軟な対応が求められます。

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