先日、「注文住宅は機能・性能・意匠で差別化できるの?」という記事を書きましたが、もはや「機能・性能・意匠」ではなかなか差別化しにくいのが現実です。
そんな中で、わかりやすい切り口なのが、ファッション感覚です。ライフスタイルにも通じてくるので、非常に重要なポイントなのですが、住宅業界では意外と理解できない人が多いのも事実・・・なんとなくわかっていても、「自分らしい暮らし」みたいな抽象的な言葉で留まっていたりします。
「自分らしい暮らし」という言葉は、ライフスタイルで訴求しようとしてるつくり手に本当に多いです。けっして悪い言葉ではないし、伝えたいことはわかります。「自分らしく暮らしたくない人」なんていないでしょう。
ただ、人は、「悩み」や「願望」や「ジレンマ」や「欲求」など、いろいろな感情を複合的に合わせ持っています。そして、それらが同じレベルで並んでいるわけでもなく、解決したい・叶えたい「順序」というのがあります。
「自分らしく暮らしたい」とは、誰もが持っている願望かもしれませんが、その人それぞれに、
- キッチンは・・・
- リビングは・・・
- 寝室は・・・
- 子ども部屋は・・・
など、優先したいわかりやすい願望があります。つまり、「自分らしく暮らしたい」という漠然としたものより、身近なニーズの方が心を掴まれやすいわけです。
結局、「自分らしい暮らし」という訴求は、本質的に相手の視点に立ったものではなくて、「主観」なんですよね。相手の立場になり、その相手の気持ちを理解する共感性は、あるようでないわけです。
そもそも、「自分らしい暮らし」という言葉が新鮮だったのも5年位前の話。誰でも使える言葉なので、もう響かないんですよね。「カフェ風」と同じで、マンネリ化した言葉に成り下がってる気がします。
だからこそ、あなたが提案する「自分らしい暮らし」って何なのか?そこを深掘りしていかない限り、「自分らしい暮らし」なんて、意味のない言葉となってしまうでしょう。
「コレ使ってます」「こんなデザインです」「この性能です」・・・そんなことじゃなくて、キッチンやリビングなど、わかりやすいニーズとなるスペースを、より具体的にイメージさせることも必要ですし、その家をどう使えばいいのか?その家でどのように暮せばいいのか?という提案も必要です。さらには、その方向性を神格化させるために、家以外のカテゴリーを具体的にしていき、世界観を築く必要もあります。
シンプルに言えば、写真を見て「どこの誰が建てた家」かが、わかるような「わかりやすさ」が必要ってことです。
「Aを売るためにBを作る」ことで、世界観を築き、価値を深めるということです。https://t.co/UDlsy8rok7 https://t.co/eDadWr3BX6
— イエコトバ (@designattract) December 20, 2017
ただ、ファッション的な切り口は、表面的にはわかりやすいのですが、こういった切り口は10年位前からあるわけで、今や当然、中身がしっかりしていなければ、大した武器にはなりませんよ。