工務店は赤字経営のまま売上拡大をしてはいけない理由

赤字経営は、倒産へと続く道筋です。資本力に乏しい小さな会社ならなおさら。

経営とは、営みを続けるということですから、会社経営を継続させるために必要なことは 、黒字経営を続けることです。つまり、経営者であれば赤字経営を決して容認してはいけないでしょう。黒字経営は事業を経営する上で基本原則です。

ですが、TKC経営指標によると、木造建築工事業の黒字企業割合は、42.2%ということですから、6割近くは赤字です。(2023.12.1現在)

でも、赤字経営では、日常が不安になり、報酬や給与も増やせない、未来への投資もできやしません。また、資本力に乏しい小さな会社の場合、小回りがきくけど、体力がありません。なので、黒字化への取り組みが遅れれば遅れるほど、赤字経営からの脱却が難しくなります。

会社経営の原則は儲けること、即ち、黒字経営が第一と考えならば、赤字経営に転落した時点で、黒字化への取り組みはすぐに始めなければなりません。

目次

赤字経営で売上拡大しようとしてドツボにはまる

赤字経営でよくあるパターンが、「とにかく集客だ」「とにかく売り込め」と、売上拡大に躍起になる経営者がいます。1棟当たりの粗利益はそれなりにありますから、そうしたい気持ちもわかります。

ですが、この選択は間違っています。

なぜならそういう場合、赤字経営に浸かる前から、「とにかく集客だ」「とにかく売り込め」という安易な売上拡大戦略をしていたりします。なので、その戦略そのものが、赤字経営の元凶になっている可能性が高いのです。(そう簡単に集客できて売れるなら、はじめから赤字経営になんてなっていないでしょう。)

赤字経営にも関わらず、集客したいから広告宣伝費を掛けまくっていたり、営業マンを雇ったりして、余計に固定費が掛かり、自転車操業の末、倒産するケースなんて、工務店にはよくあります。

赤字経営を黒字化するための最初の一歩とは?

赤字経営を黒字化するための最初の一歩は、「無駄やロスをなくし、収支をマイナスからゼロに持っていくこと」です。売上拡大は、黒字経営に転換した後からでも遅くありません。

赤字経営の原因になっている無駄やロスは、会社の現金が流出しているのと同じことですから、まずは、無駄やロスをなくし、優先して収支をマイナスからゼロに持っていきましょう。

収支をマイナスからゼロに持っていくと、会社の現金が流出するのが止まります。すると、運転資金にゆとりができ、会社の財務状況が良くなります。すると、経営者の心にも余裕が生まれ、冷静な判断や決断もしやすくなります。

事業の中にある無駄やロスは色々とありますが、大きく分けると

  • 売上
  • 売上原価
  • 販売管理費

の3つに分けられます。

1.売上を見直す

売上の中にある無駄やロスとは、赤字になる商品や取引のことを指します。一般的には、売れば売るほど赤字が拡大する商品や取引のことです。赤字経営なら、この赤字商品と赤字取引を解消しようということです。

ただ、木造建築工事業の場合、取引回数も少ないため、完全な赤字で取引することはないと思います。ですが、1棟当たりの粗利益額が大きいので、本来得るべきはずの利益を見失っていることはよくあります。例えば、値引きや、価格競争に巻き込まれ利益を載せられていないなど。

TKC経営指標(2023.12.1現在)によると、木造建築工事業の黒字企業の

  • 限界利益率(売上高のうち粗利益から変動費を引いた利益が占める割合)の平均は、26.5%
  • 売上高経常利益率の平均は、3.7%
  • 従業員一人当たりの売上高平均は、約3765万円

です。黒字経営に転換させていくなら、この平均を目指すことが必要でしょう。

また、木造建築工事業の黒字企業の損益分岐点比率の平均が86.2%なので、従業員一人当たりの売上高が約3200万円を切っているようだと、赤字経営の可能性が高くなります。

2.売上原価を見直す

売上原価、つまり、建てる住宅の中にある無駄やロスには、

  • 仕入れ
  • 製造原価

が挙げられます。

例えば、建材や設備などの仕入先や調達方法、職人の数や手間賃などの見直しでしょう。

ただ、売上原価を見直す際に難しいのが、「品質を低下させないこと」です。

資本力の乏しい小さな会社の場合、下手に原価を下げると「安かろう悪かろう」になってしまい、どんどん衰退していきます。

3.販売管理費を見直す

販売管理費の中ある無駄やロスの原因は、

  • 経費の無駄遣い
  • 労働生産性の低下

です。

経費の無駄遣いは、

  • 収益に貢献していない経費はないだろうか?
  • 消耗品の調達方法の変更で経費削減できるだろうか?
  • 印刷物の調達方法の変更で経費削減できるだろうか?
  • 光熱費の節約

など、細かい金額が多いと思いますが、塵も積もれば山となるです。

労働生産性の低下については、

  • 業務改善で無駄な仕事を削減する
  • IT技術の活用する
  • 労働時間を短縮させる
  • 従業員の満足度を向上させる

などが挙げられますが、経営者だけでなく、管理者も効率を重視していかないと、なかなか改善されません。

TKC経営指標(2023.12.1現在)によると、木造建築工事業の黒字企業の労働生産性は、

  • 1人当り売上高:3765万円
  • 1人当り限界利益:996万円(粗利益から変動費を引いた利益)
  • 1人当り人件費:529万円

です。

まとめ

  • 集客やセールス
    → 急激に良くなるものではない。そもそもの原因だったりもする。
  • 無駄やロスをなくし、収支をマイナスからゼロに持っていく
    → 「売上(粗利益)」「売上原価」「販売管理費」の見直し。

結論としては、赤字経営のまま売上拡大を目指すのではなく、まずは経営の基盤を固め、無駄を省き、収支を改善することが、工務店経営者としての賢明な選択です。売上拡大は、黒字経営が確立された後に、慎重に進めるべきです。

赤字経営を続けながら売上を拡大しようとする試みは、実は非常に危険な道を歩むことに他なりません。赤字経営は、事業継続の基本である黒字経営とは真逆の状況であり、特に資本力の小さい企業にとっては、倒産への道を拓くことになりかねません。

集客や売上拡大に力を入れることは一見魅力的に思えますが、実際には、これが赤字経営の元凶となることも少なくありません。多くの工務店がこの罠に陥っており、結果的に固定費の増加や自転車操業の状態に陥り、倒産へと追い込まれることがあります。

では、赤字経営を黒字化するためには、どのようなステップを踏むべきでしょうか?

  1. 粗利益の見直し: 赤字商品や取引を解消することが重要です。特に、木造建築工事業では、1棟当たりの粗利益が大きいため、適切な利益を確保することが肝心です。
  2. 売上原価の見直し: 仕入れや製造原価を見直すことで、無駄を削減します。しかし、品質を損なわない範囲でのコスト削減が求められます。
  3. 販売管理費の見直し: 経費の無駄遣いを見つけ出し、労働生産性を向上させることが重要です。

これらのステップによって、収支をマイナスからゼロに持っていくことが可能になり、経営の安定化を図ることができます。まずは、TKC経営指標などを参考にしながら、業界平均の数値を目指していくことが望ましいでしょう。

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