経営者は、良い/悪い、やる/やらない、続ける/やめる・・・など、多くの判断と決断を日々行っています。そして、その過去の判断と決断の、結果の積み重ねが現時点の経営状況になっていきます。
つまり、過去の判断と決断が正しければ、現状で良い結果が出ているはずですし、上手く行っていなければ、それは過去の判断と決断が正しくなかったということなのです。社会情勢や周りの環境のせいではありません。
ということは、経営改善を推進する上でも、経営者の判断力と決断力の質は、とても重要なものになってきます。少しでも精度を向上させ、一つ一つの判断と決断に磨きをかけていきましょう。
判断と決断の参考指針
20棟未満の工務店の規模の場合、大企業の様な判断指針ではなく、地に足を付けた様な判断指針になっていきます。いわゆる「弱者の戦略」です。たくさんあると思いますが、5つほど挙げてみました。
1.ニッチ・イン・リッチを狙う。
「ニッチ(狭い分野)に絞り込むほど、売上げは大きく(リッチ)になる」という意味合いです。大きな分野を狙うよりも、小さなマーケットの中で高いシェアをとったほうが収益があがりやすいのです。
注文住宅は、高単価・高利益の商品だからこそ、高価格帯の高付加価値ゾーンの小さな市場でも十分狙うことが可能です。その反対の低価格帯の低付加価値ゾーンの大市場だと、自社の強みを活かせられないでしょう。
2.完璧を求めない「ベストよりベター」
常にベストな経営判断をできる人なんて、まずいません。
「経営はベターの集合体である」と言われるように、すぐに成果を出したければ、ベストよりベターを心掛け、行動に移すことが重要です。
逆に、完璧にベストにこだわり過ぎると前に進めません。うまくいっていないにもかかわらず、完璧主義者ほど、「いや、、、でも、、、」と言い訳も多く、行動に移しません。これでは、ワースの集合体になってしまい、どんどん衰退していくでしょう。
施工などの技術面で完璧を求めるのは構わないですが、経営では切り離して考えましょう。
3.ゼロイチ思考で考えない。
マニュアルなど安易に答えを求める人に多いのが「ゼロイチ思考」です。ゼロイチ思考とは、白黒をハッキリさせる考え方です。
ですが経営判断は、白黒をハッキリさせるだけではありません。
ゼロかイチか、白か黒か、YESかNOか、両極にある答えだけではなく、もっとしよう、よりしよう、もう少し抑えよう、などのように、0.3の時もあれば0.7の時もあります。白でも黒でもなくグレーやオフホワイトの時もあります。
つまり、程度の加減を決めることが多いのです。
マニュアルなど安易に答えを求め、自身の判断でどこまでやるのかの程度を決められないということは、経営判断ができていない証拠なのです。
4.やらないことを決める。(えこひいきをする。)
小さな会社の場合、経営資源も限られていますから、平等に分散して投下してしまうと、成績オールDの様な低レベルのオールラウンダーになってしまいます。
なので、やらないことを決め、長所にフォーカスし、そこに経営資源を集中して投下することで、より伸びていきます。長所をえこひいきしてください。
施主においても、引き渡し後も関わりがあり、味方となって応援してくれる施主は、えこひいきした方がいいでしょう。
5.最後はワンマンで背負う。
従業員などの周りの意見を聞くことは大事ですが、経営に関わることなら、最後は社長一人が全責任を負った上で決断しましょう。その覚悟は必要です。
経営に関わることを、従業員と協議して多数決で決めるのは、経営ではありません。従業員がすべきことは、経営者の判断に沿って実行することですから。
管理会計で判断力と決断力の質を高める
判断力と決断力の質を高めることを挙げたら、たくさんあるとは思いますが、管理会計を通じで、判断力と決断力の質を高めることが基本になるのではないでしょうか。
「管理会計」とは、企業内部の経営管理者が見る会計情報のことを指します。
主には、
- 原価計算(製品別・部門別・顧客別・個人別減価・損益計算など)
- 変動損益計算書(損益分岐点分析)
- キャッシュフロー分析・経常収支計算
- 経営分析(安全性・収益性・生産性・成長性)
- 予算管理・予実算管理
などが挙げられます。
管理会計は、経営者が判断・決断した事業の結果を、客観的に表すものですので、管理会計を通じて、
- 会社の数字を把握する。
- 経営指標等の目標を定める。
- 会社の数字の変化に気付く。
ということが、決断の質にも大きく影響していきます。内容が悪いなら、その判断と決断は、ズレているわけですから、見直さなければなりません。
ズレていたとしても直せばいいのです。ベストよりベターですから。
