経営の意思決定をするには、判断材料が必要です。
判断材料には色々とありますが、判断そのものが間違っていなかったとしても、インプットされる情報が偏っていたら、正しい結果には結びつかないでしょう。住宅に例えるなら、家を建てる作業は間違っていなくても、使う材料が悪ければ、悪い家が建つということです。
つまり、曲がった柱で家を建てても、曲がった家しかできないように、偏った情報で判断しても、偏った判断にしかなりません。
税理士の意見を鵜呑みにしてはいけない!?
判断材料の一つに、「税理士の意見」があります。ですが、これには注意が必要です。
税理士も、クライアントである経営者から、経営や事業運営について聞かれれば、らしいことを言わざるを得ません。税理士ですから、決算書の数字に関して、一通りは話をすることはできるでしょう。
ただ、工務店経営者とは置かれている立場が全く異なります。経営のことや業界のことに関する知識が十分に備わっているとはいえません。経営指標の数字を見た上での机上で述べることはできても、事業についての深い話まで的確な意見を述べられないでしょう。
また、税理士によっても、話の方向性が変わってきます。家族経営思考の税理士なら、事業を拡大するというよりは、節税の話が多くなります。税理士を選ぶ際もその辺りのズレがない方がいいでしょう。
税理士による経営意見は、あくまでも材料として参考程度にとどめておきましょう。判断するのは税理士ではなく、経営者自身です。
決算書そのままでは経営判断が難しい!?
「決算書は重要」という言葉は、経営者であれば必ず言われてきます。
会計はうまく使えば間違いなく利益に貢献します。だからといって、経営者自らが会計のスキルを身につける必要はありません。会計作業や決算書の作成は、経理や税理士に任せればよいことです。
経営者に求められるのは、決算書を作成する能力ではなく、決算書から経営にとって必要な情報を正しく読み解いて、経営に役立てることが求められます。
読み取り役立てる知識がないと、会計も単なる決算申告のためだけの事務作業となってしまい、せっかくの資料や業務データも、経営改善に活かされないままとなってしまいます。
決算書は、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュフロー計算書
で構成されていますが、「正しく読み解いて、経営に役立てる」と言われても、決算書そのままのフォーマットから、読み取り役立てていくには、難しいんですよね・・・
決算書を管理の視点で構成し直す。
通常の決算書がわかりにくいのは、貸借対照表も損益計算書もキャッシュフロー計算書も、「制度会計」に基づいて作成されているからです。
会計の方法には、
- 制度会計
- 管理会計
の2種類あります。
【制度会計】
制度会計は、税務署や銀行など外部へ経営状況を報告することが目的となります。いわゆる義務です。
通常、決算書をつくる際もここがベースになって作られていきます。そのため、単なる報告書になってしまいます。つまり、「どのようにすれば会社が儲かるのか?」という視点は含まれていないため、そこからは「儲かること」に必要な情報を得ることは困難なのです。
経営初心者に多いのが、制度会計で作られた決算書を見てしまい、わからなくなってしまうパターンです。私も最初に決算書を見た時、数字の羅列にしか感じられなくて、訳が分からなかったです。
【管理会計】
管理会計は、経営陣や社内部署など企業内部における意思決定の判断材料を得ることが目的となります。
経営に「管理会計」を活用すると、儲けにつながりやすいと言われています。なぜなら、
- 毎月の利益を出すためにどれくらいの売上が必要か?
- 新規出店や投資をするときにいくらまでなら使っても大丈夫か?
- なぜ、お金が残らないのか?
など、より事業運営に沿った判断材料を得ることができるからです。
管理会計によって得る必要な情報とは?
制度会計では、どの会社も一律で同じものとして扱います。ですが、業種や企業規模、置かれている状況によっても、経営者が求める情報は異なります。そういった中で、経営判断に最適な情報を集めるには、自由にカスタマイズできる「管理会計」が必要なのです。
管理会計は自由にカスタマイズできる分、得られる情報はいくつもあります。全てを得る必要はありませんが、安定した黒字化を図るなら、木造建築工事業(工務店)の黒字企業の経営指標を指標とする科目は最低限必要でしょう。
安定した黒字化を目指していきたいなら、管理会計で決算書を構成し直すことは必須ですよ。これまで制度会計で決算書を作成してきたのであれば、なおさらです。