モデルハウスの建設は経費ではなく投資と考えてみる

今までモデルハウスを建てたことがない小規模の工務店から、「モデルハウスを建てた方がいいかどうか?」という話を受けることがあります。

(ひとまず、できるできないは置いといて)この答えは、「建てる」「建てない」で言ったら、建てた方がいいと思っています。

事務所兼ショールームより、モデルハウスの方がお金を生み出す

注文住宅は完成品を見せて購入させることができないので、実物を体験できるモデルハウスはかなり強力です。

「経費を掛けたくないので・・・」という謳い文句から、モデルハウスの建設を拒む工務店経営者は多いですが、モデルハウスの建設を経費ではなく投資と考えると、その経営判断も変わってくるのではないでしょうか?

モデルハウスに距離を置く工務店は、小規模の工務店でも事務所兼ショールームという形にしているところは多いです。ですが、ショールームという形は、建材や設備という単体のイメージを掴む感じで、空間を伝えるものではありません。

注文住宅の場合、独自性や差別化、付加価値を高めるなら、ショールームよりもモデルハウスの方が効果的です。実際、チラシで集客するにしても、「ショールームで相談会」より、「モデルハウス見学会」の方が効果的ですよね?

経費と考えると、事務所兼ショールームに行き着いてしまいますが、投資と考えると、事務所兼ショールームより、モデルハウスの方がお金を生み出すことに気付くはずです。

常設型モデルハウスには手を出してはいけない

ただ、いくら実物を体験できるモデルハウスとはいえ、常設の住宅展示場は、小規模の工務店にとっては手を出さないほうがいい戦略です。

最近、常設の住宅展示場が頑張っているのか、関連したニュースを目にします。ここ数年、常設の住宅展示場の展示に疑問を持つ方も増えてきたので停滞していましたが、その営業モデルから逃れられない人は、盛り上げようと必死です。

展示場運営者もビジネスですからね。いろいろなところで費用が掛かるんですよ。

例えば、、、

  • 契約期間が◯年という縛りがある。
  • 保証金や敷金が掛かる。(例:12ヶ月)
  • 出展料として月額賃料が掛かる。
  • 事務所ではなくショールームとして使う場合、出展料とは別にテナント料が掛かることも。
  • 建設費用はもちろん出展する工務店が負担。
  • 周りの建物が立派な建物にするので、見栄えを気にして、通常よりも予算を掛けて立派にせざるをえない。(販売価格で5000万円~1億円クラス)
  • スタッフが常駐する場合、人件費・光熱費・広告費・通信費等、経費が掛かる。
  • 定期賃貸借契約なので、撤退する時は更地にして返却。もちろん、解体費用は出展した工務店持ち。

など、モデルハウスの建設費用以外にもあれこれ費用が掛かります。

例えば、月100万円の賃料が掛かる常設の住宅展示場で、原価3500万円のモデルハウスを建設し、営業マン2人を配置したとしたら・・・

  • モデルハウス 3500万円
  • 賃料 月100万円✕12=1200万円
  • 敷金 12ヶ月分=1200万円
  • 人件費や経費等 600万円✕2=1200万円
  • 広告費 600万円

さくっと安く見積もっても、7700万円です。3年で計算すると、1億3700万円。5年で計算すると、1億9700万円。建てたモデルハウスは売れないわけですから、それ以外で利益を得る必要があるわけです。どう考えても、小規模の工務店が、これらの費用を稼ぐことは大変です。

また、ここ数年の住宅業界の流れを見ればわかると思いますが、性能も3年前5年前のものになれば古くなります。会計上、展示用モデルハウスは7年で償却なのですが、建て替えまでに7年も待ってたら、時代遅れもいいところです。サイクルを考えたら、1年くらいで建て替えられるのがベストだと思っています。

モデルハウスは常設型ではなく売却型

常設展示場の状況や、モデルハウスのサイクル(1年での建て替え)を考えると、小規模の工務店が取るべきモデルハウス戦略は「売却型」です。いわゆる建売です。

分譲地を購入し、そこにモデルハウスを建築します。そして、1年ほどモデルハウスとして使用し、その後売却するというものです。単独の土地でも良いのですが、分譲地の方が、その場で土地を紹介しやすいという利点はあります。

この方法であれば、周りに見栄を張ることなく、その土地に合った自社のコンセプトを形にしたモデルハウスを建設することが可能です。

例えば、、、

  • モデルハウス 原価2000万円(販売価格2500万円)
  • 土地代 1500万円
  • 広告費 600万円

ざっくり高く見積もっても、4100万円です。人も常駐させるのではなく、予約制にしてその都度対応すればいいわけです。1年後に販売したとして、土地代は大きく下がることはないでしょうから、モデルハウスを原価で販売したとしても、広告費程度で済みます。

もちろん成功させるためには、売却する時の価額を前提に、土地の選定やプランの検討をする必要があります。また、このモデルハウスで見学会を何回開催し、どのくらいの見込み客を集客し、何件の契約を取るか、という費用対効果も検討しておく必要があります。

どの地域にも建売を求める層がいる。

この戦略において、さらに前向きな情報を挙げるなら、「どの地域にも建売を求める層がいる。」ということです。つまり、売れ残る可能性は低いということです。

そうなると、建売業者がライバルになるわけですが、価格重視で作る会社の安かろう悪かろう建売住宅と、注文住宅の品質で建てる工務店の建売住宅、どちらの方が品質が良いかといえば、間違いなく後者の方でしょう。

建売を求める層は、必ずしも価格が最優先という方ばかりではありません。実物を見ないと決めれない、注文住宅を建てるほど時間を掛けたくない、こだわりがあるわけでもない層もいます。手に届く価格帯であれば、品質の良い方を選ぶのは自然な流れです。

実際この手法に切り替えている工務店はいくつもいます。冒頭でも申し上げました通り、経費と考えると、事務所兼ショールームに行き着いてしまいますが、投資と考えると、事務所兼ショールームより、モデルハウスの方がお金を生み出すことに気付くはずです。

 

 

追伸:工務店経営者の方にお知らせです。

参加した工務店経営者の声
今ではたくさんのコンサル会社がいろいろなセミナーをやっている時代、どれを聞いても同じようなセミナーで、言っていることはだいたい同じ、特に共感できるところもなく金儲けでセミナーをやっているとしか思えないようなセミナーばかりでした。そしてある程度規模の大きい工務店、地場ビルダーを対象にしたセミナーが多いことでした。でも以前より何回か井内さん、出口さんのセミナーを受けていますが、とても分かりやすく中小工務店(年間棟数20棟程度まで)を対象にした問題点を取り上げてくれています。

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ABOUTこの記事をかいた人

井内智哉

設計事務所勤務時に、建築家ネットワーク会社・アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)とのコラボしたブランド住宅「AROS」の全国展開に宣伝・広告として携わる。ミサワホーム創業者の三澤千代治氏の新事業・200年住宅「HABITA」の立ち上げから携わり、宣伝・技術・営業・企画などの経験を積む。後に全国の地域工務店200社以上を束ねる住宅のフランチャイズ事業にまで成長。その後、デザイン住宅を軸にした注文住宅の事業「ソラマド」の全国展開に携わる。WEB集客やコミュニティの構築、関東・東海地域の市場開発、提携工務店への研修など、年間150棟ほどの住宅設計のマーケティングサポートを行う。また2013年1月、同社にて新規事業のDIY・リノベーションを提案するお店を立ち上げる。2013年6月より、住宅業界専門のネットマーケティングコーチとして独立。工務店フランチャイズ本部や同業他社とも連携し、地域工務店のサポートや研修などを経て、年間棟数20棟未満の小規模工務店の経営者向けにノウハウやコンテンツを提供している。2014年10月~2015年3月まで日本住宅新聞にて、歴代最年少執筆者として連載。