付加価値を高めながら、利益を上げられる組み合わせとは?

一言で「住宅」といっても、様々な要素から組み合わせれているわけですから、コスト面を考えるにしても、それぞれの要素について分解して考えていくと、最適な答えが出てきやすいです。

例えば今回は、「付加価値を高めながら、利益を上げられる組み合わせ」を見ていきましょう。あまり細かくしすぎるときりがないので、ざっくりと分解してみます。

建材の性能

値付けの基本から言っても、性能が良ければ価格も上がります。仕入れの掛率は同じで、定価で販売したとすると仮定すると・・・

高性能

  • 仕入原価:コストアップ
  • 利益額:金額アップ
  • 販売価格:金額アップ
  • 付加価値:アップ

低性能

  • 仕入原価:コストダウン
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額ダウン
  • 付加価値:ダウン

仕入れている卸業者などに、数で交渉できれば、原価は下げられるでしょうが、相手次第なので、年間棟数が少ないと、そういうことも厳しくなります。

同じ掛率なら、高額な方が利益は多くなります。7掛けの場合、

  • 定価30万円✕0.7=仕入価格21万円(定価販売なら9万円の利益)
  • 定価60万円✕0.7=仕入価格42万円(定価販売なら18万円の利益)

付加価値は、アップダウンと付けていますが、あくまで「競合他社と比べて高性能(低性能)」ならということです。競合と同じであれば、付加価値は得られません。

建材の仕入

住宅は建材の組み合わせで構成されています。全てを大量販売品で賄うことはありますが、受注生産などの少量販売品の場合は、ピンポイントで使用することがほとんどです。

大量販売(大手メーカー等)

  • 仕入原価:コストダウン
  • 経費:ほぼ変わらない
  • 利益額:金額アップ
  • 販売価格:金額ダウン
  • 付加価値:なし

少量販売(受注生産等)

  • 仕入原価:コストアップ
  • 経費:ややアップ
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額アップ
  • 付加価値:アップ

大手メーカーの建材は、大量生産されているため原価も低いですし、それを仕入れるための手間も少ないです。ただし、どの工務店でも使用できる分、付加価値はないに等しいです。

逆に、受注生産などの少量販売で仕入れる場合、掛率も高く、原価は高くなることがほとんどです。さらに、発注の手間や仕入れるまでの時間も掛かってしまいます。ですが、適した商品を使えば、付加価値を高めやすいです。

建材の仕入(ECの場合)

また、EC販売からの購入も増えてきています。建材メーカーの中には、一般客も仕入業者も関係なく、EC上で価格をオープンにして販売しているところもあります。

EC販売(施主支給)

  • 仕入原価:-
  • 経費:(ややアップ)
  • 利益額:-
  • 販売価格:-
  • 付加価値:アップ

EC販売(施工店手配)

  • 仕入原価:コストアップ
  • 経費:ややアップ
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額ダウン

施主支給をされてしまうと、その分ごっそり売上がなくなります。ですが、その支給品を施主自身が設置するわけではないので、しっかりと手間賃はいただく必要があります。ただし、その手間賃も(建材+経費)の額には劣るので、利益という点においては、減ってしまう。

EC上で価格がオープンになっている商品を、施工店側で手配する場合、その建材に利益を乗せて販売するのが難しくなります。(本来は、仕入れた側の値決めは自由なので問題ないのですが、何故か文句を言う人が多い。「転売を許さない」心情と同じでしょう。)お金に対するメンタルが弱いと、建材に利益を乗せられず、そのまま販売してしまいがちです。

建材の仕入(共同購入)

今はあまり聞かなくなりましたが、複数の事業者が大量仕入の利点を享受するために共同して仕入れる方法です。運営元がFC本部で、その加盟店のみに行っていたり、運営元がFCとは別の団体もあります。

運営元がFC本部で加盟店のみ

  • 仕入原価:コストダウン
  • 利益額:金額アップ?
  • 付加価値:?

運営元がFC以外

  • 仕入原価:コストダウン
  • 利益額:金額アップ
  • 付加価値:なし

この仕組みは、時代遅れ感は否めません・・・まず、商品数が少ないですし、仕入原価がダウンしたところでたかがしれています。ある人によると、年間5棟以下の工務店が利用する仕組みとまで言われています。

FC本部が加盟店に向けた建材も、本来そのFCに加盟するのにお金を払っているわけですから、総額でみたらどうなんだろう?と疑問になるところです。他にないオリジナルの建材で付加価値があるならいいのですが・・・

FC以外ですと、前金制のところもありますからね。キャッシュフロー考えたら、使わないほうがいいってことになります。

住宅の大きさ

例えば、仕様も粗利率も一定と仮定し、4人家族向けで25~40坪ほどで分解してみると・・・

住宅を大きくする(35~40坪)

  • 変動費:コストアップ
  • 固定費:ほぼ変わらない
  • 利益額:金額アップ
  • 販売価格:金額アップ

住宅を小さくする(25~30坪)

  • 変動費:コストダウン
  • 固定費:ほぼ変わらない
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額ダウン

サイズを大きくしてしまうと、原価を下げようと思っても、安物を使うなど「悪かろう」に行き着きやすいことが考えられます。

サイズで粗利益率を変えなかってとしても、小さくしてしまえば、粗利益額は減ってしまいます。なので、小さいながらも利益をとっていくためには、他の部分の品質を高めて、カバーしていくことが求められます。

プラン・間取り

細かく言えば、屋根形状や間仕切り壁なども入ってきますが、ここでは全体含めて考えてみます。仕様も粗利率も一定と仮定します。

複雑にする

  • 変動費:コストアップ
  • 固定費:ほぼ変わらない
  • 利益額:金額アップ
  • 販売価格:金額アップ

シンプルにする

  • 変動費:コストダウン
  • 固定費:ほぼ変わらない
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額ダウン

複雑にした方が、その分材料代も増えていくため、利益額・販売価格ともに金額アップしていきます。

ですが、デザインや壁にも、そこにあることで「余計」と感じる部分は存在します。これらの無駄を省き、原価を下げた上で、利益率を上げれば、同じサイズでも利益額の大きい提案が可能になります。

規格・企画・自由

プランニングの仕方にも様々あります。それぞれに一長一短ありますが、利益という視点で紐解いてみましょう。

仮定として、仕様や利益率は一定とします。また、

  • 規格住宅は建売と同じ(売建になっているだけ)
  • 企画住宅は、ベースとなるプランはあるが、それを元に変更。
  • 自由設計は、ディテール含め、一から設計。

とします。

規格住宅

  • 変動費:コストダウン
  • 固定費:コストダウン
  • 利益額:金額ダウン
  • 販売価格:金額ダウン
  • 付加価値:安さ

企画住宅

  • 変動費:変わらない
  • 固定費:変わらない
  • 利益額:変わらない
  • 販売価格:変わらない
  • 付加価値:コンセプト

自由設計

  • 変動費:コストアップ
  • 固定費:コストアップ
  • 利益額:金額アップ
  • 販売価格:金額アップ
  • 付加価値:オリジナリティ

規格住宅は、打ち合わせの時間も省け、同じ材料同じ施工で固めてしまえば、掛かる費用は減るでしょう。ですが、付加価値としては「安さ」しか残らないので、利益という点においては苦しいです。

企画住宅は、やり方自体は多くの工務店がすでに行っている方法と変わらないでしょう。企画住宅の要は、方法論ではなく、「企画=コンセプト」です。コンセプトの魅力があるから、ベースとなるプランも活きてきますし、仕様の方向性も定まります。そして、販売価格を上げても「欲しい」と思わせることができるのです。

自由設計は、建築家の領域なので、手を出さないほうが無難です。オリジナリティの付加価値は得られますが、その分時間と手間が掛かり、コストアップは否めません。設計事務所の場合は、設計料という形でその対価を得ます。ですが、それでも少ないため、結局は長時間労働や従業員の給料が低いなどブラック労働にて支えられている背景があります。これを、無料で工務店がやってしまえば、利益が残らない構造になってしまいます。

まとめ

上記で取り上げた項目は大枠なので、練っていく必要はありますが、付加価値を高めながら、利益を上げていくことを考えていくと、

  • 高性能
  • 大量販売品をベースに、ポイントで少量販売品。
  • 住宅サイズを小さくする。
  • プランはシンプルにする。
  • 企画住宅

という組み合わせが落ち着きやすいのでしょう。

 

 

追伸:工務店経営者の方にお知らせです。

参加した工務店経営者の声
今ではたくさんのコンサル会社がいろいろなセミナーをやっている時代、どれを聞いても同じようなセミナーで、言っていることはだいたい同じ、特に共感できるところもなく金儲けでセミナーをやっているとしか思えないようなセミナーばかりでした。そしてある程度規模の大きい工務店、地場ビルダーを対象にしたセミナーが多いことでした。でも以前より何回か井内さん、出口さんのセミナーを受けていますが、とても分かりやすく中小工務店(年間棟数20棟程度まで)を対象にした問題点を取り上げてくれています。

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ABOUTこの記事をかいた人

井内智哉

設計事務所勤務時に、建築家ネットワーク会社・アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)とのコラボしたブランド住宅「AROS」の全国展開に宣伝・広告として携わる。ミサワホーム創業者の三澤千代治氏の新事業・200年住宅「HABITA」の立ち上げから携わり、宣伝・技術・営業・企画などの経験を積む。後に全国の地域工務店200社以上を束ねる住宅のフランチャイズ事業にまで成長。その後、デザイン住宅を軸にした注文住宅の事業「ソラマド」の全国展開に携わる。WEB集客やコミュニティの構築、関東・東海地域の市場開発、提携工務店への研修など、年間150棟ほどの住宅設計のマーケティングサポートを行う。また2013年1月、同社にて新規事業のDIY・リノベーションを提案するお店を立ち上げる。2013年6月より、住宅業界専門のネットマーケティングコーチとして独立。工務店フランチャイズ本部や同業他社とも連携し、地域工務店のサポートや研修などを経て、年間棟数20棟未満の小規模工務店の経営者向けにノウハウやコンテンツを提供している。2014年10月~2015年3月まで日本住宅新聞にて、歴代最年少執筆者として連載。