工務店は、商品開発・広告宣伝・ブランディングなど将来への投資に、どのくらいの費用を掛けたらいいのか?

工務店経営者から「商品開発、広告宣伝、ブランディングなどに、どのくらい費用を掛けたらいいのかわからない。」という質問をいただいたりします。

将来への投資をせずに、ケチって必要以上に溜め込んでいたり、社長の私利私欲のために使っていたのでは、会社の将来性も危くなりますので、価値を高めたり、伝えたりすることに投資していくことは、非常に重要です。

だからといって、利益全部を注ぎ込めばいいのかというと、そうでもありません。

では、適正な投資費用はどのくらいになるのか?その基準を探っていきましょう。

損益分岐点比率で基準を決める

投資といっても、下の図のように固定費の中に入るわけなので、基準になってくるのは、損益分岐点比率でしょう。

  • 損益分岐点比率(%)=固定費 / 粗利益 ✕ 100

損益分岐点比率は低ければ低いほど安定した企業といえますが、一般的な数値の目安としては、

  • 100%以上・・・危険水準
  • 90%以上・・・改善が必要(売上や粗利増加対策、固定費削減対策が必要)
  • 80~90%・・・標準水準(景気によって左右される可能性はある)
  • 80%以下・・・安全水準(景気など外部要因に対しても比較的強い)

と言われています。

ちなみに、『TKC経営指標(BAST)』(平成30年7月決算~平成30年9月決算)によると、木造建築工事業の黒字企業の平均損益分岐点比率は88.3%です。

木造建築工事業(工務店)の黒字企業の経営指標(平成30年7月決算~平成30年9月決算)

2019年1月18日

第一段階目は、88.3%

第一段階としては、木造建築工事業の黒字企業の平均損益分岐点比率でもある「88.3%」を目安にするのが良いでしょう。

『TKC経営指標(BAST)』(平成30年7月決算~平成30年9月決算)の数字を参考にして、わかりやすく例えを挙げてみます。

例えば、2500万円ほどの住宅を年間10棟建てていて、売上が2億5000万円だったとします。

  • 粗利益率が29%なら、粗利益額は2億5000万円✕29%=7250万円
  • 損益分岐点比率が88.3%なら、固定費は7250万円✕88.3%=約6400万円
  • 労働分配率が50%なら、人件費は7250万円✕50%=3625万円
  • 固定費から人件費を引いた金額は、6400-3625=2775万円

つまり、固定費から人件費を除いた費用(経費・金利・投資など)は、2775万円となります。

経費や金利の参考値はないので、「現在掛けている経費+金利」との差額で、余分に投資できる金額を計っていけばいいと思います。

ちなみに、経常利益は、7250万円-約6400万円=約850万円になります。

第二段階目は、90%

もう少し費用を掛けたいという場合は、第二段階として、90%が目安になります。

上記に記載したように、損益分岐点比率が90%以上になると、一般的には改善が必要とされるランクに属しますので、90%を限界値と考えておいた方がいいでしょう。

同じ様に、2500万円ほどの住宅を年間10棟建てていて、売上が2億5000万円で、シュミレーションしてみると、

  • 粗利益率が29%なら、粗利益額は2億5000万円✕29%=7250万円
  • 損益分岐点比率が90%なら、固定費は7250万円✕90%=6525万円
  • 労働分配率が50%なら、人件費は7250万円✕50%=3625万円
  • 固定費から人件費を引いた金額は、6525-3625=2900万円

つまり、固定費から人件費を除いた費用(経費・金利・投資など)は、2900万円となります。

そして、経常利益は、7250万円-6525万円=725万円になります。

比較してみると、125万円ぐらい変化がありますね。

おまけ:年間5棟、粗利益率20%の場合

2000万円ほどの住宅を年間5棟建てていて、売上が1億円で、シュミレーションしてみると、

  • 粗利益率が20%なら、粗利益額は1億円✕20%=2000万円
  • 損益分岐点比率が90%なら、固定費は2000万円✕90%=1800万円
  • 労働分配率が50%なら、人件費は2000万円✕50%=1000万円
  • 固定費から人件費を引いた金額は、1800-1000=800万円

つまり、固定費から人件費を除いた費用(経費・金利・投資など)は、800万円となります。

そして、経常利益は、2000万円-1800万円=200万円になります。

まずは、損益分岐点比率は90%を切ること

上限が90%なので、まずは、節税対策をしてない状態で、損益分岐点比率が90%を切ることが必要です。

すでに90%を切っている場合は、商品開発・広告宣伝・ブランディングなどの必要な投資(経費)を掛けた上で、損益分岐点が90%を切っているかを計っていきましょう。

投資する費用を増やすためには、「粗利益額を増やすこと」になりますが、その粗利益額を、人件費やその他の経費などに、適正に分配することも求められてきますね。

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なぜ、財務に強い経営でお金が回る仕組みが必要なのか?

工務店経営者に「一番の悩みは何ですか?」と問うと、上手くいってる会社も上手くいってない会社も、「集客」と答えてしまいます。いち早く改善すべき問題や課題は、本当に「集客」なのでしょうか?

例えば、「顧客を得るたびに利益を失っている」とか、「顧客を得るためのコストが非常に高い」など、こういった状況で、広告宣伝費に投入し集客したとしても、無駄使いとなってしまいます。

つまり、経営が健全でない状態のまま投資をするということは、成長や利益を得ることに対して投資効率が悪いということなのです。だからこそ、事業に大きく投資する前に、たとえ今赤字であっても、お金が回る健全な経営にしておく必要があるのです。


 

ABOUTこの記事をかいた人

井内智哉

設計事務所勤務時に、建築家ネットワーク会社・アーキテクツ・スタジオ・ジャパン(ASJ)とのコラボしたブランド住宅「AROS」の全国展開に宣伝・広告として携わる。ミサワホーム創業者の三澤千代治氏の新事業・200年住宅「HABITA」の立ち上げから携わり、宣伝・技術・営業・企画などの経験を積む。後に全国の地域工務店200社以上を束ねる住宅のフランチャイズ事業にまで成長。その後、デザイン住宅を軸にした注文住宅の事業「ソラマド」の全国展開に携わる。WEB集客やコミュニティの構築、関東・東海地域の市場開発、提携工務店への研修など、年間150棟ほどの住宅設計のマーケティングサポートを行う。また2013年1月、同社にて新規事業のDIY・リノベーションを提案するお店を立ち上げる。2013年6月より、住宅業界専門のネットマーケティングコーチとして独立。工務店フランチャイズ本部や同業他社とも連携し、地域工務店のサポートや研修などを経て、年間棟数20棟未満の小規模工務店の経営者向けにノウハウやコンテンツを提供している。2014年10月~2015年3月まで日本住宅新聞にて、歴代最年少執筆者として連載。