以前、経営者の思考と行動について、「行動が止まったり、できないのは、思考が停止しているから」ということで取り上げました。
では、なぜ思考が停止するのでしょうか?
これまでに、工務店・設計事務所・建材メーカー・商社など、住宅業界の中で様々な業種の相談を受けてきてわかったのが、
答えに「集客」を求めている人ほど、思考が停止している傾向が強い。つまり、手段を求める人ほど、思考が停止しやすい。
ということです。
何も「集客をするな」ということ言ってるわけではありませんが、集客不振の原因がわからぬまま、集客を求めるのはおかしいということです。
様々な業種の相談を受けてきてわかりましたが、集客不振の多くの場合、商品やサービスに問題があることが多いです。つまり、集客以前にすることがあるのです。(一昔前は、認知不足の問題だったのが、変わってきている気がします。)
ですが、従業員からの相談の場合、その相談内容は、必ずと言っていいほど、販促か集客のことです。
販促の場合は、社長から言われた販促方法の中で、最適解を探しています。WEBサイト制作ならどこがいいか?ニュースレター制作ならどこがいいか?・・・という感じです。
集客の場合は、何か画期的な集客方法はないのか?少しでも安く(できるなら無料で)できる方法はないのか?・・・という感じです。
従業員の場合、経営の舵を取る権限はないですし、社長から与えられた役割を全うしていくことが仕事なので、その方向性を外れることができません。してしまうと居場所がなくなります(笑)思考したとしても、その方向性や枠の中にとどまるので、ブレーキがあり「できない」と判断してしまうことも多く、行動もしれています。
つまり、
- やることが前提で物事を進めてしまっている。
- 数学のように決まった答えのない場所で、決まりきった答えを探している。(永遠に見つからない・・・)
ということで、本質を捉えて思考してない状態になりやすいのです。(まぁ、当人は「考えてやってます」と言い張るでしょうが(笑))
このパターンを、経営者がやってしまうと、非常にマズイです。
実際、業績が悪化してくると、あれもこれもやらなければいけないと、やることが前提で物事を進めてしまっている経営者は意外と多いです。そして、表面的なことに振り回され、空回りすることが多々あります。何より、そんな器用にあれこれできません。
だからこそ大事なのは、「やらないことを決めること」です。
そして、その判断をする時、センス(感覚)で判断しますか?ロジカル(論理)に判断しますか?
まずは、原則に従ってロジカルに考える
企業経営は、「人」「モノ」「金」「情報」「時間」など、様々な要素の組み合わせによって成立しています。とはいえ、それら全てをセンスという感覚で進められるほど、僕らは天才ではありません。
でも、経営である以上、数字で表すことができます。それらをわかりやすくしたものが「財務諸表(決算書)」になるわけです。なのでまずは、その数字を元に原則に従ってロジカルに考えていくことが最優先でしょう。
もちろん、資産の中には、財務諸表(決算書)には載ってこない、社会性や創造性など数字に表せられない価値もあります。
この辺は、センス(感覚)にかなり依存してきますので、それらはひとまず置いておいて、まずは、数字を元に原則に従ってロジカルに考えましょう。
財務諸表(決算書)は、経営者が経営的な意思決定をするための判断材料
そもそも、何のために財務諸表(決算書)をつくるのか?というと、
- 法で定められているから?
- 税金対策のため?
- 銀行や金融機関からの融資のため?
ではなく、経営者が経営的な意思決定をするための判断材料だからです。
ちなみに、財務諸表(決算書)は、仕訳の精度によって、中身が変わってくるので注意した方がいいです。ここの精度が高くないと、適切な対策も打てなくなってきます。
適した経営判断を下すためには、元になる経営判断材料(財務諸表などの財務資料)が正しくなければなりません。そして、正しい経営判断材料を作るためには、正しいデータが必要になってくるのです。
もちろん、短期で手を打って行かなければならないこともあるため、月次の試算表も経営判断の材料としては必要です。また、現金の流れを見る資料としてキャッシュフロー表も必要です。
思考と行動しやすい状況をつくるには?
以前、「思考と行動を止めないためには?」ということで、
- 答えを「周りから与えられる」と、思考停止しやすい。
- 「手段」にこだわって進めてしまえば、与えられた答えなので、多くの経営者の思考と行動が止まってしまう。
という内容を取り上げました。
思考と行動しやすい状況を作り出すには、集客などの手段に目を向ける前に、経営判断材料を元に、原則に沿ってロジカルに判断し、目的地を定めることが大事です。(経営には、不変の原理原則があるので、材料があれば判断しやすいです。)
商品やサービスの問題が、ネットなどの書き込みなどで、すでに表面化された問題なら、改善のしようもあります。(改善しない経営者もいますが・・・)
表面化されていない場合は、数字に注目をしてみるのがシンプルです。例えば、特に悪評判もないし、数字も悪くない、だけど売上が下がっている(棟数が減っている)ということは、「商品に魅力がない、ターゲット層に響いていない」ってことになるわけです。
こうやって、経営判断材料からロジカルに判断していくと、手段ではなく目的にフォーカスすることになるため、思考と行動しやすい状況を作り出すことができます。
また、やらないことを決めて、できるだけ無駄な動きや時間を削り、本来やるべきことに集中するためにも、そして、小さな組織が武器にできる「スピード感」を損なわないためにも、自社で経営診断できる力を備えることも必要です。