与信管理支援サービスを提供しているリスクモンスターが発表した調査結果が興味深いので、シェアします。
色々な指標による倒産分析データが掲載されていますが、その中から
- 現預金月商比
- 借入依存度
- 自己資本比率
- 売上高純利益率
の4つを取り上げていきます。
月商1ヶ月分以上の現金を持っていなければ、倒産の確率は上がる。
まずは、現金です。
「売上より利益、利益より現金」ですから、手持ちの現金が少なければ、当然、倒産する確率も上がります。
データでは、「現預金月商比」として、手持ちの現金が月商の何ヶ月分あるか?という指標を掲載しており、1ヶ月未満になると、ぐんと倒産確率が上がっています。

■現預金月商比
企業は、資金繰りが行き詰まらないように、一定の現金や普通預金を手元資金として保有しておく必要がある。月商に対する現金や預金の保有割合を「現預金月商比」といい、短期的な安全性を図る指標として、一般的には1か月以上あることが望ましい水準といえる。
現預金月商比においては、コロナ関連倒産企業、2019 年度倒産企業ともに約7割が「1か月未満」の水準にあったことが明らかとなった。コロナ関連倒産企業と 2019 年度倒産企業との間に大きな差がなく、コロナ禍においては現金保有が事業維持に大きく関わることも踏まえれば、従来の見方と同様に倒産判別に有効な指標と捉えることができよう。
ちなみに、現預金月商比は、私もよく使う「手元流動性比率」と同じものです。短期の支払能力を分析できる経営指標です。
現預金月商比(手元流動性比率)(月)=現金預金÷(売上高÷12)
会社の短期安全性を分析する経営指標としては、流動比率や当座比率、自己資本比率などよりも、より厳密に短期の支払能力を分析できるためよく使われる。銀行も企業の安定性を計る指標としてかなり重視しており、倒産危険度をいちばんよく表す指標と言っても過言ではありません。
この数字が、中小企業で1.5ヶ月分程度を確保できていれば、安全性があると判断されています。逆に1ヶ月を切っていたら危険であり、0.5ヶ月を切っていたら倒産危険水域とされています。
いくつかの工務店の倒産事例を検証しても、この現預金月商比(手元流動性比率)が1ヶ月未満のパターンがほとんどです。
1ヶ月未満だと資金繰りも苦しい状況でしょう。しかも、その手持ち資金が短期借入金で賄われてたりしたら、確実にアウトですね・・・
借り過ぎもダメだが借りなさすぎも倒産の確率は上がる。
続いては、借入金の割合です。
データでは、「借入依存度」として、総資本の何%を借入によって賄っているか?という指標を掲載しており、70%以上になると、ぐんと倒産確率が上がっています。また、30%未満でも、倒産確率が少し上がっています。
借入依存度(%)=総借入÷総資産×100

■借入依存度
企業が調達している資金のうち、何割を有利子負債で賄っているのかを示す指標を「借入依存度」という。企業の資金調達余力を計る指標の一つとして、一般的には 50%未満にあることが望ましく、50%以上は要注意水準、70%以上は要警戒水準といわれている。
借入依存度においては、2019 年度倒産企業では、全体の8割以上が「50%以上」の水準であったのに対して、コロナ関連倒産企業では「50%以上」の割合は約7割となっており、特に「30%未満」においては、倒産割合が 5.9 ポイント上昇し、2019 年度倒産の 1.5 倍となっている。借入依存度が高いとはいえない水準においても、新型コロナウイルスの影響による需要低下や営業自粛によって資金不足状態に陥った際に、平常時に比べて資金調達の猶予が短いために、資金ショートが生じやすくなっている可能性がうかがえる。
普段から借りすぎてたために、不測の事態時に借りれないというパターンと、普段付き合いがなくて、不測の事態時に借りようにも借りれなくアウトというパターンに分かれています。
金融機関との付き合いをバランス良く考えていかないといけません。理想は、実質無借金経営ですね。
(当たり前だが)債務超過だと倒産確率が上がる。
債務超過だと、現時点の手持ちの現金が少なかったり、借入も厳しくなりますからね。倒産の確率が高くなるのは当然です。
自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

■自己資本比率
企業が事業活動によって得た利益は、純資産として内部に蓄積される。企業が調達している資金のうち、何割を純資産で賄っているのかを示す指標が「自己資本比率」という。企業の長期的な安全性を計る指標として、一般的には 30%以上であることが望ましく、10%未満は要注意水準、0%未満は要警戒水準といわれている。
自己資本比率においては、2019 年度倒産企業では、全体の8割近くが「10%未満」の水準であったのに対して、コロナ関連倒産企業では「10%未満」の割合は約6割となっている。新型コロナウイルスの影響を受ける前の決算情報で一定の自己資本を有していたとしても、業績の急激な悪化によって純資産が毀損し、倒産に繋がることも想定されるため、従来よりも厳しい基準で評価する必要があるといえる。
ちなみに、私は自己資本比率はほとんど見ません。というのも、自己資本比率は中期的な安全性をみるための指標だからです。小規模な会社の場合、中期的な安全なんてあってないようなものなので、参考程度にしかならないからです。
なので、より現金に焦点を当てていて、短期的な安全性の指標になる「現預金月商比(手元流動性比率)」を優先しています。
利益が出でなければ、倒産の確率は上がる。
続いては、利益です。当然ながら、利益が出ていかなければ、倒産の確率は高くなります。
データでは、「売上高純利益率」として、売上高の何%が純利益なのかを示す指標を掲載しています。2%を割ると、一気に倒産の確率が高くなっています。
売上高純利益率(%)=純利益÷売上高×100

■売上高純利益率
売上高純利益率においては、2019 年度倒産企業では、利益率が低下するにつれて倒産割合も高くなっており、赤字の企業が最も倒産割合が高くなっていたのに対して、コロナ関連倒産企業では「0%以上2%未満」の割合が 44.0%と赤字企業を上回る水準となっており、「2%以上」と比較すると2倍以上の水準となっている。コロナ関連倒産においては、既述のとおり急激な業績悪化によって資金繰りが破綻するケースが多いため、直近の決算情報が黒字であっても決して拠り所にはならない様子が表れている。
しかし、その一方で売上高純利益率が「2%以上」の企業においては、倒産割合が高まっていない点を考慮すると、一定の利益水準を有していることが純資産の蓄積に繋がり、生き延びていられる要因になっているとも考えられる。(図表E)
売上高純利益率2%ということは、売上高100万円当たり、2万円以上の純利益が残る利益構造でないと、経営は厳しくなっていくということです。
例えば、売上高別で挙げるなら、こんな感じです。
- 売上高1億5000万円:純利益300万円以上
- 売上高2億円:純利益400万円以上
- 売上高2億5000万円:純利益500万円以上
- 売上高3億円:純利益600万円以上
もちろん、掛けている固定費や、借入金の返済額などが多ければ、その分、売上高もより多く必要となります。
ただ、粗利率が高い低いとか関係なく、得た粗利益から、掛けた固定費引いて、返済して、税金払って、残ったお金なので、最終的な経営の結果でもあります。