SNS住宅論・ダイワハウスが評価したアイコン化する住宅の未来

2009年に行われた第5回ダイワハウスコンペティションで優秀賞を受賞している『SNS住宅論 ─ アイコン化する住宅の未来 ─』、かなり前から気にはなっていたので、取り上げてみました。

2009年のSNSといえば、国内ではmixiに勢いがあり、facebookはほとんど使われておらず、スマホもiPhone3GSの時代です。当時、首都大学東京 都市環境学部 建築都市コース4年の浜田晶則さん(現:studio_01主宰)による論文です。

浜田晶則

浜田晶則

 

SNS住宅論─アイコン化する住宅の未来─

はじめに

これからのすまいは、SNS的になるだろう。SNS的なプライバシーの一部公開、SNS的なコミュニケーションのかたち、SNS的な公共性、SNS的なコミュニティ。SNSのアナロジーによって、これからのすまいを描いてみる。

すまいは人々の基本的な環境であるため、すまいに関わる問題は多岐にわたる。本論文では特に子どもの養育、高齢者の介護、ひきこもりという問題を対象にする。このような問題は核家族化に伴い、大家族の特徴であった家庭内の相互扶助が失われることによって発生しているといえる。そのための予防として、各種の福祉サービスがある。

例えば子ども家庭支援センターや保育所、高齢者支援センターやデイケアセンター、不登校児のためのフリースクールなどがある。家庭内において、個人がそれぞれやりたいことをやりたいときにするということは、これまでは難しいことが多く、何かを犠牲にする必要があった。

しかしこれらのサービスを利用することによって、核家族は豊かな生活を維持することができる。というのが近代社会の理想であった。その理想はあくまでも理想でしかなかった。それが先に挙げたすまいの問題として現在も顕われている。

本論文では今後の現代社会において、いかにすればこれらの問題を解決できるのか、その可能性を論じる。

 

SNS

SNS(Social Network Service)とは、社会的なネットワークを情報空間で構築するサービスのことである。情報空間におけるコミュニケーションの特徴であった匿名性を排除した点が画期的であったといえる。

SNSの中では「My space」、日本では「mixi」が代表的なサービスとしてある。Wikipediaによると「My space」の会員数は世界合計で2008年5月10日の時点で2億320万人、ロイターによると「mixi」の2009年6月末の会員数は1,741万人であり、現在も増加している。

WikipediaのSNSの項目には、“ソーシャル・ネットワーキング・サービスの主目的は、人と人とのコミュニケーションにある。友人・知人間のコミュニケーションを促進する手段や場、あるいは趣味や嗜好、居住地域、出身校、「友人の友人」といった自身と直接関係のない他人との繋がりを通じて新たな人間関係を構築する場を提供している。人の繋がりを重視して「既存の参加者からの招待がないと参加できない」というシステムになっているサービスが多いが、最近では誰でも自由に登録できるサービスも増えている”と記載されている。

SNSの利用者が増えていることの理由としては、情報空間でコミュニケーションをとることが容易になったことや、直接的なコミュニケーションをとることが何らかの理由で難しくなり、情報空間でコミュニケーションをとる必要が生じたことが理由として考えられる。利用者は情報空間に自身の名前や居住地、肩書きなどを公開するため、利用に際して社会的責任が生じる。

そのためSNSのサービスでは大きなトラブルを回避することができているという。プロフィールの公開に関しては、利用者が自由に公開度を設定できる。日記を書き、それを友人だけに公開したり、誰もが見られるように公開したり、設定によって情報公開の度合いを変更できる点も利用者数増加の一因になっている。

本論文でSNSを取り上げるにあたり、SNSの重要な機能を二つ挙げる。

一つ目は友人をグループ化し、利用者のトップページの一部に友人のスペース(mixiであればマイミクシィという欄)としてディスプレイ表示するという機能である。利用者は全て自身を示す画像を決め、それがその人を示すアイコンとして利用者のトップページに表示される。友人のスペースには友人のアイコンが表示され、それが利用者の交友関係を示す。友人が日記などを更新するとトップページに情報が示され、友人たちの生活を知ることができる。直接話さなくても、友人の出来事や考えていることをそれとなく知ることができ、コミュニケーションを低負荷でとることができる。直接的なコミュニケーションを常にとるわけではないが、知っているという関係である。

かつては日本のどこにでも見られた近所関係のような、生活が家の外部に漏れ出してきて、何となく近所の状況を把握できている状態や、家族と一緒に居間にいて、それぞれが別々のことをしているような状態とも捉えることができる。悩みがあったり憂鬱になっているときに、自分の日記にそのことについて独り言のように呟けば、友達から心配のメールや電話がかかってきて、そのことで少し悩みが和らぐということもSNS上のコミュニケーションでは頻繁に起きている。パソコンのディスプレイを見るということが、同じ情報空間を共有しているような、新しい共同のかたちがSNSにある。

二つ目はコミュニティの機能である。同じ趣味や所属、居住地ごとにコミュニティというグループをつくることができる。これも友人のスペースのように利用者のトップページにコミュニティのスペースが設けられ、どのコミュニティに参加しているかがアイコンと文字で一目で分かり、これも利用者の属性を示すものになっている。このコミュニティの機能によって、全く知らない人とも知り合うことができる。気が合いそうな人を同じコミュニティで発見し、その人のページで日記や交友関係を見て、直接メールをして知り合いになるというケースは少なくない。このような例として、ギャルママのコミュニティの例を挙げたい。

ギャルママとは、派手な化粧や服装をしたギャルと言われる若年女性が母親になった人のことを指す言葉である。その外見から地域社会で孤立することも少なくないと言われている。しかしギャルは、ギャル同士の絆や連帯が強く、広いネットワークを持っていることが多い。以前、子育てをするときに困難を覚えたあるギャルママが、SNS上でコミュニティをつくった。

日記では自らの子育て記を写真付きで綴り、紹介した。そこには同じ子育て中のギャルママからコメントが多く寄せられるようになり、互いに励まし合う状況が生まれた。その後、オフ会と呼ばれるSNS上のコミュニティのメンバーが実際に会う企画がたてられ、ギャルママたちは地域の体育館に集まってバレーボールをしたり、子育ての悩みを話し合ったりした。

これは一つの例であるが、家族介護をしている人のコミュニティや里親のコミュニティなど、相互扶助を目的としたコミュニティの種類は多岐にわたる。これまでの現実世界における地域コミュニティと異なる点は、地域や家などの場所や所属をこえて、人々の趣味やニーズによって形成される点である。SNSにおけるコミュニティの機能によって、同じ思いや悩みを持った人々との出会いの契機が生まれ、情報空間で集まり、ときどき現実世界の物理空間で会うという新たな共同のかたちが生まれている。以下、これを地域コミュニティと区分してSNSコミュニティと呼ぶ。

 

情報空間と物理空間

生活における情報空間の重要性は、現実世界の物理空間の重要性に近づきつつある。内閣府の調査によると、パソコン普及率は1990年代前半までは10%台にとどまっていたが、2009年には73.2%になった。総務省の調査によると、インターネット利用者数の人口普及率は1997年で9.2%だったが、2008年には75.3%になった。パソコンとインターネットの普及により、人々の生活において情報空間が占める割合は増えているといえる。情報空間の中でも本論文ではSNSの空間に着目しているが、ここでは情報空間としてのSNSコミュニティと物理空間としての地域コミュニティのそれぞれの特徴と、これからのコミュニティが担うべき役割を示し、その姿を描きたい。

地域コミュニティは、住民が生活している場所を中心として、その地域の住民と交流が行われている社会や集団のことをいう。地縁によって信頼関係を結び、地域の公園の清掃会やマンションの自治活動や祭などが行われる。漫画の「サザエさん」にも見られるように、かつては近隣関係も豊かであることが多かった。子育てや介護などを協力するような関係もあっただろう。しかし近年は、単身世帯の増加、昼間に住民が地域にいないこと、住民の頻繁な入れ替わり、モータリゼーションの進展、近隣商店街の衰退などが理由となって、地域コミュニティは衰退してきた。それは、共同して地域に住むことの必要性が失われたことの現れかもしれないし、地縁だけで信頼関係を結ぶことに対するリアリティが失われたことの結果かもしれない。

一方SNSコミュニティは、SNSの項でも触れたが、個人がそれぞれの趣味・趣向によってコミュニティを形成するもので、コミュニケーションをとりたいと思うような人々が自然と集まってくるようなコミュニティである。SNSコミュニティを利用することで、好きな人と、好きな場所で、好きなことをすることができる。このコミュニティでは、家族にしばられることもなく、地域にしばられることもなく、身体にしばられることもなく、より現代的な自由が保障されている。

これからのコミュニティは、地域コミュニティとSNSコミュニティの両方を等価に扱い、利点を活かすことによって、より現代的な感覚に合うものをつくることができると考えられる。地域では近隣に閉じているにもかかわらず、SNSでは自らの個人情報を公開する人は多い。SNSで日記を書くということは、自分のことを他者に知ってほしいということのあらわれである。その潜在的な欲求を、身体性を伴いながら地域に対して開くことはできないだろうか。

SNSコミュニティは、宮台真司が『まぼろしの郊外』で述べた「島宇宙」に近いといえる。それだけでは閉じたコミュニティであり、その社会性は漂白されている。そこで社会性を獲得するために、異なる「島」同士が接点をもつための「橋」をつくらなければならない。これによって地域に点在する島が結ばれ、ソーシャルミックスと多様性をもった新たなコミュニティのかたちがつくられるだろう。その橋となるものを備えるすまいがSNS住宅である。

 

SNS住宅

SNS住宅は、現代のSNSコミュニティを場所性と身体性をもった地域に接続するためのすまいである。孤立化する現代社会において、いかに豊かに、かつ自然に他者と交流して生きていくか。その方法としてのすまいである。以下、SNS住宅の特徴・構造・類型・新たなコミュニティについて描いていく。

SNS住宅の特徴は、個人がアイコン化されたような表層を街路に対してもつことである。SNSの利用者トップページのように、個人の活動・趣味・友人などが街路から見える、透明な表層である。前庭で作業をするときのように、趣味の活動をしたり、SNSで知り合った人々とのオフ会に使ったりすることで、街路に対してパソコンのディスプレイのような様相を呈する。つまり、個人の趣味の物や活動がアイコンとして街に表示されることになる。プライバシーの問題として、街路から住宅の中のどこまで見えるかという視深度は、SNSで個人がそれぞれ公開度を設定するようにインテリアをレイアウトすればよい。人によって、趣味のフィギュアのギャラリー、手芸の工房、ギャルママの活動拠点、ベビーシッターが子育てする場、高齢者の在宅介護サービスの場などに使ったりするだろう。

このような活動が可能な、街に開かれた透明な部屋をもつすまいがSNS住宅である。人は潜在的に自分のことを知ってほしいという欲求があることはSNSの項で述べた。この透明な部屋によって、住宅に公共性と社会性が付与されることになる。

SNS住宅と街の関係は、「道・橋・島」の三つの空間による三層構造になっている。

「道空間」は住宅が面するパブリックな街路であり、このインフラに対していかに接続するかが、住宅に公共性と社会性を付与できるかどうかに関わる。「島空間」は住宅内のプライベートな領域であり、個人や家族のための閉じた空間である。そこでは家族内のコミュニケーションがなされ、個人は情報空間で同じ趣味や目的をもつ人々とつながる。

ここまでは一般的な住宅と同じであるが、町家のミセのような空間をもつ「橋空間」の存在がSNS住宅の特徴である。

ここで町家のミセとのアナロジーを用いたが、この場合のミセは「店」ではなく、「見せ」の空間であるといえる。一人世帯のときは一つの橋空間。二人世帯のときは二つの橋空間。というように、個人はそれぞれ道空間に接続された一つの部屋をもつ。橋空間は、道空間というパブリックなインフラに、島空間というプライベートな個人や家族の空間をつなぐ役割をもつ。できるだけ透明で街に開かれ、構造体などの建築的要素よりも、人・物・出来事が主体となる空間である。

SNS住宅の類型は、戸建住宅と集合住宅に分けられる。戸建住宅タイプにおける道空間は、既存の道路を用いることで偶発的な人々の交流の契機を担保できる。しかし、集合住宅タイプではこの道空間をどう設計するかが重要になる。集合住宅は高層になるにつれて外部に出にくくなったり、オートロックを採用したりするなど、閉じたコミュニティになりがちである。しかしその中で豊かなコミュニティが形成されている事例は多いとはいえない。

そこでSNS住宅の集合住宅では、効率的に高密度化が可能である街区型を採用する。中庭に面する側に道空間を設けることで回遊性と視認性を高め、フロア毎にコミュニティを形成しやすくする。道空間を歩けば中庭を挟んで反対側の橋空間も見え、より居住者の顔が見える集合住宅となる。これまで集合住宅ではその均質なデザインのため、表札が居住者のアイデンティティを示すものになってきた。

しかしSNS住宅では、透明な橋空間が現代の新たなあふれ出しとなり、居住者像を道空間に向けて表示する。外部の街との関係としては、低層部に商業施設や在宅福祉を支える各種福祉拠点施設を複合し、外部との接点をもつことで、街に参加する集合住宅となるだろう。

SNSの情報空間では、自らが関心のある人だけを見るということが多くなるため、閉じたコミュニティの中で人間関係が広がっていくシステムをもつといえる。しかしSNS住宅が街に点在すると、隣り合う家々は異なるSNSコミュニティに属している状況になることが多いと予想される。これは現在の街の構造と同様である。

つまり多様な人々が隣り合って暮らす状況が、それぞれの個人がアイコン化されたような橋空間において並列表示され、多様な街の風景を構成していく。道空間から見える風景は、SNSの利用者トップページがランダムに並んでいるようなものになり、ある家の前を通ればその人のことが少しだけわかるようなものになる。近隣の家の前を通り、その人のことが気になればSNS内の当該地域のコミュニティで、その人の表札や橋空間にあった物などを手がかりにしてその人のページを探せばよい。見つかれば、その人のことが少し分かる。分かればその人と交流したいと思うかどうかが決まる。交流したいと思えばメールなどで連絡をとる。もし気が合えばオフ会がSNS住宅の橋空間で開催されるかもしれない。

同じ地域でも全く知らない他者とコミュニティを形成することは、現代では特に難しいといえる。そこでSNSと地域コミュニティの利点を活用し、SNS住宅をその架け橋に用いることで現代のコミュニティを豊かにする契機をつくろうとするのが、SNS住宅の目的である。

 

おわりに

本論文では、現代社会の特徴である情報空間、その中でもSNSをアナロジーとした住宅像を提案した。すまいに関わる問題は、すまいを変革することによって解決に導くことができるという仮定のもと、「SNS」「情報空間と物理空間」そして「SNS住宅」について論じた。SNS住宅における橋空間において、どのような活動が展開されるかは、居住者のニーズによって多様に変化するだろう。

ファミリー世帯では、父、母、子という代名詞でコミュニティに参加するのではなく、固有な個人として参加する。街の顔となる橋空間に個別の部屋を割り当て、それぞれが道空間に接続する。そのことで家族構成員がもつ固有性は保障され、それぞれが個人として街に参加する。冒頭に挙げたすまいに関わる問題は、まず地域における孤立と家庭における孤立を防ぐことによって改善できるのではないだろうか。場所性と身体性を伴い、より現代的で自由なコミュニケーションが担保されたコミュニティをつくるためのすまい、それがSNS住宅である。

第5回ダイワハウスコンペティション

 

軸になるのはコミュニティ

いろいろと書かれていますが、「mixiやfacebookなどのSNSを使おう」って話ではなくて、文内にある、

”同じ地域でも全く知らない他者とコミュニティを形成することは、現代では特に難しいといえる。
そこでSNSと地域コミュニティの利点を活用し、SNS住宅をその架け橋に用いることで現代のコミュニティを豊かにする契機をつくろうとするのが、SNS住宅の目的である。”

が、全てを物語っているように思います。「同じ地域で他人とコミュニティをどのように形成できるのか?」ですね。

この論文から5年ほど経ち、少しづつではありますが、住宅においても「コミュニティ」を求めている傾向になりつつあります。コミュニティは人がメインとなるため、手間が掛かりますが、できあがると強い武器になります。

ホームページも、ブログも、メルマガも、写真も文章も、お客様の声を集めることも、「コミュニティ」を感じさせることが必要ですね。

 

 

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