「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

ニッセイ基礎研究所がレポートしている「昨今の住宅取得事情」シリーズが、興味深いデータをまとめてくれています。

  1. 昨今の住宅取得事情(その1)‐最近住まいを取得した人の傾向
  2. 初めて持ち家を取得した層と2回目以上の違い‐昨今の住宅取得事情(その2)
  3. 住宅取得資金の状況‐昨今の住宅取得事情(その3)
  4. 地域により異なる住宅取得事情‐昨今の住宅取得事情(その4)
  5. 中古住宅を取得した理由‐昨今の住宅取得事情(その5)
  6. 持ち家に住み替えて、良くなったこと、わるくなったこと‐昨今の住宅取得事情(その6)
  7. 今後の住み替え希望‐昨今の住宅取得事情(その7)
  8. 子育て世帯の住宅取得事情‐昨今の住宅取得事情(その8)

上記のデータの中で、注文住宅関連を中心に気になる点を取り上げていきます。

目次

持ち家取得の主流層は30~40歳代で、全体の約60%を占める。

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

やはり、20代では所得の問題も絡み、持ち家の取得は厳しいものがありますね。

初めて持ち家を取得する層の持ち家への住み替え目的は子育て

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

借家から持ち家に住み替えた世帯の目的は、「子育て・教育の環境を整える」で、24.6%と最も割合が高くなっています。その次に、「住宅を広くする、部屋を増やす」で16.8%。やはり「子」関連の訴求は外せないですね。

30~40歳代の持ち家の取得費は2,000~4,000万円台

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

持ち家取得の主流層でもある30~40歳代の住み替えに要した費用は、2,000万円台から4,000万円台の割合に集中しています。元記載にも書いていないのでわかりませんが、多分土地や諸経費込みのグロスの費用かと思われます。2000万円を切ると、一気に数が減りますね・・・

多くが変動金利型を利用

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

固定の金利はすごく低くなっていますが、多くの人が「変動金利型」を利用しているようですね。昔、勝間和代さんが、「住宅ローンは自身の仕事とが景気に左右されるなら変動金利を、景気に左右されないなら固定金利を」とおっしゃてた記憶があります。

中古住宅にした理由、しなかった理由

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

中古住宅にしなかった理由で、「新築の方が気持ちいいから」は、中古具合や気持ちの問題もあるかと思いますが、隠れた不具合や品質、老朽化の点においては、第3者のホームインスペクターなどが浸透すれば、懸念することも減りそうです。「保証やアフターがない」という点は、その内、中古住宅専門の保証やアフターサービスが出てきそうですね。場所にこだわるか、建物にこだわるかで選択も変わりますよね。

子育てのために重要な要素は、家族の集いや交流を促す間取り

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

子育て世帯の住宅・居住環境における、子育てのために重要な要素は、「家族の集いや交流を促す間取り」、「住宅と住宅まわりの防犯性」、「幼稚園、小学校などの利便」の割合が高くなっています。コミュニティ(コミュニケーション)と安心&安全というわかりやすい動機ですね。

子どもが小さい世帯の住み替え目的は子育て環境の整備

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

子どもがある程度大きくなると、「住宅を広くする、部屋を増やす」という意識が芽生えるようですが、子どもが5歳以下の子育て世帯は、「子育て・教育の環境を整える」ことをすごく意識しているようです。36.8%と圧倒的に高くなっていますよ。

知人の30代前半のある子育て夫婦の旦那側が言っていたのが、「結婚して子どもができると、RPGからシムシティに変わる。」と、自分の価値観やライフスタイルの変化を説明していました。

「昨今の住宅取得事情」から考察される工務店の戦略

以下、上記のデータを元に考察した工務店の戦略です。

ターゲット層の理解とアプローチ

持ち家取得の主流層が30~40歳代であることは、工務店のマーケティング戦略において非常に重要です。この年代は家族の成長や子育てなど、ライフステージの変化に伴い、新しい住宅へのニーズが高まります。工務店は、このターゲット層に合わせた住宅プランを提案することが重要です。例えば、子育てに適した間取りや、教育環境に近い立地の提案が効果的です。また、この年代の顧客は、住宅の購入にあたり、長期的な視点での安定性や将来の価値を重視する傾向にあります。したがって、耐久性や将来の再販価値を強調したプランの提案も有効です。

価格設定の重要性

持ち家取得の費用が2,000万円から4,000万円台に集中していることから、工務店はこの価格帯に合わせた住宅プランを考案する必要があります。この価格帯で高品質かつコストパフォーマンスに優れた住宅を提供することが、顧客の獲得につながります。また、変動金利型ローンの利用が多いことを踏まえ、資金計画の相談サポートも提供すると良いでしょう。金融知識に精通したスタッフを配置することで、顧客の不安を解消し、信頼関係を築くことができます。さらに、住宅購入における補助金や税制優遇に関する情報提供も、顧客にとって有益なサービスとなります。

中古住宅市場への対応

中古住宅を選ばない理由として「新築の方が気持ちいい」という意見があることから、新築住宅の魅力を高める工夫が必要です。新築住宅の清潔感やカスタマイズの自由度、最新の設備や技術を強調することが効果的です。一方で、中古住宅市場への対応も考慮する必要があります。例えば、リノベーションサービスの提供や、中古住宅の品質保証などが考えられます。中古住宅のリノベーションにおいては、顧客のニーズに合わせたカスタマイズや、エコロジーに配慮した素材の使用など、新築住宅とは異なる価値提案が可能です。また、中古住宅の購入者に対して、アフターサービスや保証の提供を行うことで、信頼性を高めることができます。

子育て世帯への配慮

子育て世帯が住宅選びで重視するのは、「家族の集いや交流を促す間取り」や「住宅と住宅まわりの防犯性」です。工務店は、これらのニーズに応える住宅デザインを提案することが重要です。例えば、リビングやダイニングを中心にした開放的な間取りや、子どもの遊び場が見えるキッチンデザインなどが考えられます。また、防犯カメラの設置や、子どもが安全に遊べる庭の設計など、安全性に配慮した提案も重要です。さらに、近隣の教育施設や公園などの情報も提供し、子育てに適した環境をアピールすることが効果的です。

ライフスタイルの変化への対応

「結婚して子どもができると、RPGからシムシティに変わる」という表現は、ライフスタイルの大きな変化を示しています。工務店は、顧客のライフステージに合わせた柔軟な住宅プランを提供することが重要です。例えば、子どもの成長に合わせて間取りを変更できるような設計を提案することが考えられます。また、ホームオフィスや趣味のスペースなど、多様なライフスタイルに対応できる柔軟な設計も求められます。顧客の現在だけでなく、将来のライフステージを見据えた提案を行うことで、長期的な顧客満足を実現することができます。

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