工務店が建てる普通の注文住宅でも満足できてしまう理由

満足度を高める上で大事な要素、それは「伸びしろ」です。つまり、今いるところからの「伸びしろ」をどう感じさせるか?ということです。

例えば、こんな例があります。

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目に見えない価値を感じさせるに、「伸びしろ」が大事という話

ボロボロのアパートからだと、普通の住宅でも満足

以前、住み始めてから1年ほどの、とあるお宅を取材させてもらった時のことです。

なんでも、以前は、ボロボロのアパートに住んでいたようで、隙間風の寒さに悩まされていた模様。取材した声の中で、印象深かったのは、「冬も暖かくて満足」という言葉でした。

そのお宅は、耐震性も、断熱性も、ごく普通の住宅です。スペックだけでみたら、建築基準法レベルです。でも、以前のボロボロのアパートに比べたら、十分すぎるほどで、そこからの伸びしろがある分、満足の声も大きいようです。

つまり、価値を感じさせるには、「伸びしろ」を出すことがかなり重要になるのです。でも、それには必ずしも、ハイスペックである必要はありません。田舎のおばあちゃんの家に行って、ポットン便所やゴエモン風呂の不憫さを感じた後に、自宅の温水トイレや、ユニットバスにホッとする感覚です。

目に見えない価値を感じさせるには、スペックよりも「伸びしろ」の方が大事なんです。

もちろん、断熱のクオリティも大事ですけど、一昔前までは、新省エネ基準だったのが、ちょっと前に、次世代省エネ基準になり、そして今では、改正省エネ基準が目安になっています。2020年には義務化のようですが、きっとまた新たな基準がでてくるでしょう。

こういう流れを見ても、スペック志向になると、しんどいですよね。次世代省エネ基準時代は、それでいいとされていたのに、今はダメみたいな、、、さらには、新商品出たけど、買い換えれないもどかしさもあり・・・

このような話は、耐震性でも似たような話があって・・・

このような話は、耐震性でも似たような話があるのですが、結論から述べると、「地震に対する技術は必要だけれども、それで、幸せを感じさせることはできない。」と思っています。

2011年の震災から1年後、関東のある地域で、完成見学会をした時のことです。

30代後半~40歳前後のご夫婦が見学に来られたのですが、奥さん側は、震災当時、家にいて、家がかなり揺れたため、「耐震」のことで頭がいっぱいな感じでした。旦那さんの方は、割りと楽観的で、地震のことよりも、ガレージがほしいなど、今の家では実現できないことを望んでいました。

予算的に厳しいのと、すぐ建てようという方ではなく、地震により、今住んでいる古い家(借家)に不安を感じ、新たな家を検討し始めたという方です。旦那さんとはその後も、何回かお話しましたが、当面は今の家に住むことを決断されてました。多分、夫婦で話がまとまらなかったのでは?

対照的な夫婦でしたが、地震のことで頭がいっぱいな奥さんと話をしていて、感じたのは、「新たに家を建てても、この人が、家を建てたことで幸せを感じるイメージがわかない。」ということです。

地震に対する技術は大事だけれども、その技術に対するありがたみを感じるには、大きな地震が起きた時ぐらいでしょう。でももし、大地震あった時、たとえ自分の家だけ助かっても、周りの状況を考えたら、とても幸福とは言えないですよね。もちろん、助かるに越したことはないですよ。

極論を言えば、「シェルターに暮らしても、安全ではあるが、幸せは感じない。」ということです。自分だけ助かって幸せを感じる人もいるので、それぞれではありますけど。


これらは、注文住宅における大事なポイントです。伸びしろを感じさせるための土台として、性能や技術やデザインは必要ですが、それらはあくまで手段にしかすぎないのです。

工務店が施主に伸びしろを感じさせるためにできることとは?

工務店が、施主に「伸びしろ」を感じさせることは、ただ単に高品質な材料を使ったり、最新技術を導入することではありません。それ以上に、施主の心に響く満足感を提供することが重要です。施主が自宅での未来をどう感じ、どう生活したいかを深く理解し、それを実現する手段を提供することにたどり着きます。

施主の現状を理解する

まず大切なのは、施主が現在どのような生活をしているのかを理解することです。彼らがどんな家に住んでいるか、どのような問題に直面しているかを知ることで、どのような改善が必要かが見えてきます。例えば、冬の寒さに悩まされている施主には、断熱材の重要性を強調することができます。このように、現在の状況を理解することが、改善策を提案するための基盤となります。

「伸びしろ」ある提示をする

次に、施主にどのように現状から改善できるかを具体的に示します。たとえば、断熱材や耐震構造に関する技術を提案する際には、それがどのように彼らの生活を改善するかを詳しく説明することが重要です。単に技術的な側面だけでなく、その技術がもたらす快適さや安全性を強調し、施主がその改善点を具体的にイメージできるようにするのです。

未来への展望を伝える

さらに、新しい家が施主の未来にどのような変化をもたらすのかを強調します。家族が集まるリビングの快適さ、子供たちが安心して遊べる庭、または省エネ設計による光熱費の削減など、具体的な生活の改善点を示すことで、施主に新しい家への期待を持たせることができます。このように、目に見えない価値を提供することで、施主に感動を与えることが可能です。

現実的な期待の構築

施主に現実的な期待を抱かせることも重要です。過大な期待を与えず、実際に提供できるサービスや性能について正直に伝えます。施主が実現可能な目標を理解し、それを基にした満足感を感じることが、長期的な信頼関係の構築につながります。

継続的なコミュニケーション

家の引き渡し後も施主との関係は続きます。定期的なフォローアップやメンテナンスサービスを提供し、施主が新しい住宅での生活を継続的に楽しむことができるようサポートします。このような継続的な関心とサポートが、施主の満足度を高める鍵となります。


これらの取り組みを通じて、「伸びしろ」を感じさせることで、施主の満足度を高めることができます。技術やデザインはあくまで手段であり、最終的な目標は施主が新しい住宅での生活に満足し、幸せを感じることです。工務店としての価値は、ただの建築だけでなく、施主の生活を豊かにすることにあるということです。

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