nDK間取りの生みの親・西山夘三。「食寝分離」理論は工務店の住宅設計の基本

食寝分離を提唱し、nDK間取りの生みの親と呼ばれている、建築学者・西山夘三(うぞう)氏の展示が、大阪LIXILギャラリーで開催されています。大阪は8月22日までで、9月から東京でも展示されるようですね。

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超絶記録!西山夘三のすまい採集帖

https://newsrelease.lixil.co.jp/news/2017/100_culture_0523_01.html

nDK間取りの生みの親・西山夘三。「食寝分離」理論は工務店の住宅設計の基本
図版1:「舟ずまい」 甲板に設けられた船室の様子。提供:NPO法人 西山夘三記念すまい・まちづくり文庫

勉強不足でなんとなくでしか、存じ上げなかったのですが、今では当たり前になったリビングやダイニング、寝室といった間取りを提唱した人になるわけです。

今でこそ否定されつつある「nDK間取り」ですが、生まれた経緯が興味深くて、戦後間もないころに、庶民の生活実態を詳細に調査し、庶民が意図的・慣習的に住宅内で食事の場所と寝る場所を区分している生活実態を明らかにして、「食寝分離」の住み方の法則を、後の住宅計画に応用していったとのこと。

1947年には『これからのすまい』を出版。庶民の生活実態を詳細に調査し、庶民が意図的・慣習的に住宅内で食事の場所と寝る場所を区分している生活実態を明らかにした。西山はこれを「食寝分離」とし、この住み方の法則を後の住宅計画において応用していった。第二次世界大戦後、東京大学の吉武泰水や鈴木成文等によって食寝分離論に基づく間取りが公営住宅の標準設計「51C型」に採用され、またその後の日本住宅公団に影響を与え、今日まで引き継がれているnDKの間取り(いわゆる「nDKモデル」)を産んだといわれる。公団が開発した大阪府の香里団地の基本計画(そのすべては実現されなかったが)は西山の研究室で作成されたものであった。

<中略>

戦後の住宅について提案を述べた『これからのすまい-住様式の話』で1948年に毎日出版文化賞受賞。自らの住まいの変遷を描いた『住み方の記』で1966年に日本エッセイストクラブ賞を受賞。同書は、翌1967-68年にNHKから放映されたドラマ「ケンチとすみれ」の原作となった。また新建築住宅設計競技など審査員を歴任。

「庶民住宅の研究」で1969年度日本建築学会賞受賞。1986年、「住居学・建築計画学・地域計画学の発展に対する貢献」で昭和61年度日本建築学会大賞を受賞。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%B1%B1%E5%A4%98%E4%B8%89

当時は今みたいに簡単に情報が手に入る時代ではないですから、住み手側が本能的に、食寝分離してたということですよね。「nDK間取り」が生まれたのが戦後1947年頃のようなので、70年も前のシステムを考えもせず使ってたら、そりゃ不具合起きますよ(笑)

また、露骨に否定する人がいるのもわかります。でも、ベースが、住み手の本能的な暮らしから得たものだとしたら、見方はすごく変わってくる気がします。

西山夘三氏の書籍のほとんどが高値を付けられています。

日本のあらゆる住宅を取材、調査してまとめ全3巻・1200ページの『日本のすまい』という本は、Amazon価格はとんでもなく跳ね上がってます。

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軍艦島の生活研究もしていたようです。

2015/6/23 NPO西山夘三記念すまい・まちづくり文庫 (編集), 松本 滋 (編集)
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西山夘三は、注文住宅を手掛ける工務店にどのような影響を与えたか?

冒頭で紹介したように、西山夘三の理論と実践は、特に「食寝分離」の概念とnDK間取りを通じて、現代の住宅設計に大きな影響を与えています。

「食寝分離」理論

西山夘三が提唱した「食寝分離」理論は、家族の日常活動を考慮した住宅設計の新しいアプローチを示しました。この理論は、家庭内での食事の時間と睡眠の時間を物理的に分離することで、家族の健康と生活の質を向上させることを目的としています。西山は、家族が共有するリビングダイニングスペースと、個々のプライバシーを確保する寝室を分けることの重要性を強調しました。この理論により生まれたnDK間取りは、リビング(L)、ダイニング(D)、キッチン(K)を一つの流れとして設計し、それとは別に個室を配置するというものです。これにより、家族が集う場所とプライベートな空間が共存する住宅設計が可能になりました。

現代の注文住宅への影響の考察

西山夘三が提唱した「食寝分離」理論は、家族の日常生活を豊かにするための住宅設計の考え方です。この理論は、食事をする場所と睡眠を取る場所を物理的に分けることで、家族のプライバシーを守り、生活の質を向上させることを目指しています。この理論は、現代の注文住宅を手掛ける工務店にとって自然と、顧客の多様なニーズに応えるための重要な指針となっているのではないでしょうか?

変化する家族構成への対応をしている

現代の家族は、昔に比べて構成が複雑になっています。単身者、核家族、多世代同居など、さまざまな形態があります。例えば、子どもが独立した後も使いやすいような間取りや、親世代が同居する際のプライバシーを確保するための設計など、顧客のライフステージに合わせた住宅を提供することが求められています。これにより、家族の成長や変化に合わせて住宅を柔軟に変えられるような設計が可能になります。

家事効率とコミュニケーションを促進している

「食寝分離」理論は、家事をする上での動線をスムーズにする設計にも影響を与えています。キッチン、ダイニング、リビングの配置を工夫することで、家事の効率を上げると同時に、家族が自然と顔を合わせる機会を増やすことができます。家族が集まるリビングダイニングを中心に、家事をする人が孤立しないような開放的なキッチンの設計を提案することで、家族の絆を深める住宅を創り出しています。

長期的な視点を持った住宅設計をしている

注文住宅は、一生に一度の大きな買い物です。そのため、将来を見据えた住宅設計が求められます。例えば、子ども部屋を趣味の部屋や在宅勤務のオフィスに変えられるような設計や、将来的に必要になるかもしれないバリアフリー設計を提案します。これにより、顧客は住宅を長く愛用することができ、生涯にわたってその価値を享受することが可能になります。

「食寝分離」理論に基づく住宅設計は多くの工務店の基本になっている

「食寝分離」という住宅設計の理論は、意識していないくとも、今や多くの工務店で採用されている基本的な設計原則です。この理論は、家の中で食事をする場所と睡眠を取る場所を分けることで、家族の生活がより快適になるという考え方に基づいています。しかし、この理論が広く普及した結果、多くの家が似たような間取りを持つようになり、工務店同士の間での設計の差別化が難しくなっているのが現状です。

標準化された設計の中での創造性が必要

工務店が顧客から選ばれるためには、「食寝分離」理論をただ採用するだけでは不十分です。それぞれの工務店は、この理論をどのように独自の設計に取り入れ、顧客の特別な要望に応えるかが重要になります。たとえば、家族の趣味や生活スタイルに合わせた特別なデザインの提案、最新のテクノロジーを取り入れた省エネルギー設計、地元の気候や文化に合わせた建材の選択など、細かい部分にまでこだわりを持つことが求められます。

個々の顧客へのカスタマイズが必要

また、工務店は顧客一人ひとりの生活に合わせたカスタマイズを行うことで、他社との差別化を図ることができます。例えば、子どもが安全に遊べるような工夫を凝らした家、高齢者が生活しやすいバリアフリーの家、若者が好むモダンなデザインの家など、顧客のライフステージや好みに合わせた提案が可能です。これにより、顧客は自分たちだけの特別な家を手に入れることができ、工務店は顧客の心を掴むことができます。

長期的な視点での価値提供が必要

さらに、工務店は顧客の将来の変化にも対応できるような設計を心がけることが大切です。たとえば、子どもの成長に合わせて間取りを変更できる家や、将来的に家族が増えたときに拡張しやすい家など、長期的な視点を持った提案が顧客には魅力的に映ります。


「食寝分離」理論は、現代の住宅設計における基本的な考え方でありながら、それをどのように応用し、顧客に合わせた独自の価値を提供するかが、現代における工務店の成功の鍵です。

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