小さな工務店ほど小手先なマーケティング手法より、魅力あるコンセプトを磨いた方がいい理由

先日とある工務店のWEBサイトの改善のため訪問。

もちろん、WEBサイトだけをちょこっといじっただけで、なんとかなる時代ではないので、中身であるコンセプトが大事です。

新たに取り組みたいという、すでに社長と社員の方で考えたコンセプト案があったため、それを元に話を進めていきます。ただ、コンセプトといっても、まだ案の段階であり、未完な部分が多いため、「その方向性はどうだろうか?」というところから始まっていきます。

この「自社で新たに取り組む」という考え方は、大賛成です。

住宅業界はフランチャイズなどが流行ってしまったため、他社のノウハウに依存した形、つまり、価値が外部に存在してしまっているところが多いのは否めません。

業界全体が高成長な時はそれでもいいでしょうが、下り坂なわけですから、加盟先が全社上手くいっているわけではないし、加盟した本部の戦略におんぶに抱っこしているようだと、危険過ぎるわけです。

目次

一から構築?それとも、深める?

話を戻しますと、社長と社員の方で考えたコンセプト案に関して、選択肢が分かれます。

  • リセットして、一から考え直していくか?
  • 考えられた案の深みを増していくか?

あくまで僕のケースですが、その案が一人で考えたものでない場合、そして、他社のパクリや受け売りではない場合、よほど外しているとか、明らかにおかしいものでない限り、後者を選択します。

なぜなら、一人よがりな10点満点中8点の中身より、たとえ4点でも共有できている方が、皆の意識が行動につながりやすく、最初の一歩を踏み出しやすいためだからです。つまり、最小公倍数ってことですね。ましてや他社のパクリや受け売りではなく、自分たちの中から生まれたのであれば、その部分を優先したほうがいいですよ。

なんだかんだいって、コンセプトを考えたその人自身も消費者の一人であるわけですから、そのことを考えたら、まずは自分自身の気持ちが動くことが大切なのです。

ただ、自分中心の興味だけだと、独断と偏見が強くなってしまうので、独りよがりになりやすくもなります。だから、自分以外の協力者と共有できる最小公倍数を意識しないと、自分だけしか理解できない頑固な考えができあがります(笑)住宅事業は一人でする仕事でないので、「共創」はとても大事です。

だからといって、周りの意見を聞きすぎてしまうと、幕の内弁当の様に特色のないものになってしまいます。コンセプトは、何でもかんでも要望を聞いてできるものではなく、「傾聴と主張」を兼ね備えた深みが必要だと思っています。それが世界観ってことにも繋がるんですけどね。

この辺は、一番汗をかかなければならない部分でもあります。でも、小利口な人ほど周りを巻き込まず、そこをラクしてつくろうとするんですよね。ノウハウ買ったりとか(笑)すると、本質的な中身もなく、協力者とも共有もできなくなるので、だから上手くいかない・・・というパターンに陥ります。

最初から完璧なものなんてできやしない

案ででてきたものを深めるにしても、たった数時間の打ち合わせで、最初から完璧なものなんてできやしません。というより、住宅事業は一人でする仕事ではないので、完璧さを求めたら失敗するでしょうね。

でも、外せない部分があります。なのでまずは、枠や軸を共有することから始まります。「この枠をはみ出さない」とか「この◯◯を軸に考える」ってことです。

キャッチな言葉で枠や軸を共有する

枠や軸を共有する時に、よくやるのは、キャッチな言葉をひとつつくり、その言葉を中心として枠や軸を共有していくわけです。

キャッチな言葉のつかみはすごく重要で、どこかで耳にはしてても、事の重要さ以上に、言葉から得るイメージがつまらないと、人はなかなか認知してくれません。

今回は、その工務店の社長から生まれた言葉がすごく合っていたので、その言葉を中心に深めていきました。

そして、その工務店がご贔屓にしている設計事務所(建築家)の方も加わり、その言葉から生まれるイメージなどを、どんどん掘り下げていきました。その中で、細かい手段や手法の話も出てきたりしますが、大事なのは大枠のフレームを共有することです。

細かなマーケティング手法より、魅力あるコンセプト

最近、痛烈に感じているのは、細かなマーケティング手法をどうこうするより、魅力あるコンセプト=商品をつくることの大事さです。

商品というとすぐ建材や性能目線にいきやすいですが、そうではなくて、これは、モノやコトの話に通ずることです。最近では「トキ」「イミ」なんて捉え方もでてきますよ。

3. トキ消費

コト消費がすっかり定着してきた2010年代には、単に「体験的価値に対価を払う」というだけでは説明がつかない潮流が見られるようになってきました。それを博報堂生活総合研究所は「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しむ消費」を指す「トキ消費」という概念で提唱しています。

トキ消費には、「非再現性」(時間や場所が限定されていて同じ体験が二度とできない)、「参加性」(不特定多数の人と体験や感動を分かち合う)、「貢献性」(盛り上がりに貢献していると実感できる)という3つの要件があります。つまりトキ消費における価値とは「参加の価値」であり、「人と一緒に生み出すトキに参加したい」というニーズが根底にあるのです。

<中略>

4. イミ消費

「イミ消費」はホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が提唱した概念であり、「ある商品を消費することで生まれる、社会貢献的側面を重視する消費行動」を指します。
例えば「環境保全」「地域貢献」「フェアネス(正義)」「歴史・文化伝承」「健康維持」などがキーワードであり、「自分がどうありたいか?」あるいは「どうあるべきか?」を指標として経済活動を行うという特徴があります。

トキ消費はその盛り上がりをSNSで伝播させて「いいね!」をもらいたいという、マズローの欲求5段階説の「承認欲求」を満たすことも大きな比率を占めているのに対し、イミ消費は自らの「社会正義的消費観」に照らし合わせて「あるべき自分になりたい」という「自己実現欲求」にもとづいており、より高次の消費であるとも言えるでしょう。

トキ消費・イミ消費とは?

ただ、コト重要さに気付かない人は、モノ目線ばかりになるし、勉強してコトを知った小利口さんは、モノに目を向けなくなる人が多い気がします。

モノがあってコトが成り立つと思うし、コトがあってトキやイミが成り立つと思っているので、モノも、コトも、トキも、イミも、全部つながっていますからね。それを繋げるのがコンセプトだし、そういう意識の元、モノも選択していかなければならないと思っています。

魅力的なコンセプトより小手先なマーケティングを追い求めた工務店の倒産例

ある工務店が、時代の流れに合わせて急いでマーケティングのやり方を変えました。彼らは最新のSNSキャンペーンや目立つ広告に力を入れ、一見うまくいっているように見えました。でも、これは表面だけの成功で、本質的な問題は「しっかりしたコンセプトがないこと」でした。

この工務店は、すぐに利益を出そうとして、顧客が求めている「快適な家」を提供するという基本を忘れてしまいました。彼らは流行りのデザインや見た目だけに飛びつきました。結果、顧客との信頼関係が築けず、顧客に見放されてしまいました。

最初は売り上げが伸びて成功しているように見えましたが、実はこれは長続きしないものでした。長い目で見たビジョンやコンセプトがなかったのです。本当に顧客に価値を提供できず、市場での競争力を失いました。

結局、この工務店は市場から取り残されて倒産しました。失敗の原因は、「深く考え抜かれたコンセプトがないこと」だったというわけです。

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