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普通の小さな工務店がお客さんを選ばないとどうなるか?
山形県米沢市にある「時の宿すみれ」という2人連れ専用の温泉宿が非常に面白いです。
「おふたりさま仕様」に特化して腕を磨いた温泉旅館
1泊2食8000円だった温泉宿を2005年に改装。料金は1人2万円台になり、稼働率も大幅に向上した。キーワードは「おふたりさま限定の宿」。ニーズはあるのか。いかがわしく思われないか……。親族の心配や反対をよそに、女将(おかみ)は自らの思いを貫く。今では遠方からもリピーターが訪れる宿になった。
<中略>
2人連れのみで年齢も中学生以上に限定した結果、提供すべきサービスが絞られ、質も向上したという。子供向けの料理や接客の用意が不要になった。団体客が入ると決まればアルバイトを確保して、といった準備も要らない。
ある一定の客層に向け、特化して腕を磨く。顔や名前も覚えることができ、愛着を持って繰り返し訪れてくれる人も増えた。今は利用者の4割がリピーターだ。
日経新聞:2人連れ専用の温泉宿 客を絞り斜陽の旅館を再生
普通の格安温泉旅館を、「おふたりさま仕様」に特化して、施設やサービスも切り替えたことで、傾いていた経営が稼働率7割弱まで回復したとのこと。
「おふたりさま」といえば、夫婦や恋人。他には、友人、親子、祖父(祖母)と孫も入ってきます。
このようにターゲットを2人組に絞り込むことで、シチュエーションを把握しやすくなり、来客者のニーズにも応えやすくなり、提供できるサービスにも厚みが増しやすいのです。
しかも、10組しか泊まれないため、ガヤガヤとなることもなく、ゆったりした気分で2人の時間を楽しむことができます。
普通で勝負できないなら、絞り込んで質を上げる!
住宅業界もいっしょです。普通で勝負できなくなってきているなら、ひとつに絞り込み、特化して、その質を上げてみてください。そうすることで、上記のように、目立ちやすくなり、口コミも起きやすくなります。
絞り込んでいくためには
- 誰にどんなニーズがあるかを知る。
- 競合他社がやっていないことを探す。
- 自社の魅力や強みが何なのか見出す。
という過程が必要になり、
ターゲットを絞り込むと、
- ターゲット客の状況を把握しやすくなり、要望に応えやすくなる。
- お客さんに「これは自分のためのものだ」と思って選んでもらいやすい。
- 広告・宣伝活動も内容を決めやすい。
- ターゲット客以外の要望に応えるための準備をしなくていい。
ということが生まれます。
普通の小さな工務店が客を選ばないとどうなるか?
1. サービスの質の低下
お客さんを選ばないと、多岐にわたる要望に応えようとするため、サービスの質が低下する可能性があります。特化したサービスを提供する代わりに、一般的で平均的なサービスになりがちです。例えば、家の設計や建築材料において、特定のスタイルや質を追求することなく、一般的な選択肢を提供すると、結果として個別の顧客ニーズに応える力が弱まります。この結果、顧客の期待を超えるサービスを提供する機会が失われるかもしれません。
2. ブランドの希薄化
特定のニーズに焦点を当てず、すべての客に対応しようとすると、ブランドの特徴や個性が希薄になります。これにより、競合他社との差別化が困難になることも。例えば、あらゆるスタイルに対応しようとすると、その工務店が何に特化しているのか、何を得意としているのかがわかりにくくなります。この結果、顧客がその工務店を選ぶ理由が減少する可能性があります。
3. 効率の悪化
お客さんのあらゆる要望に応えようとすると、労力とコストがかかります。特に小さな工務店では、リソースが限られているため、効率が悪化する可能性が高いです。例えば、ある顧客は伝統的な日本家屋を希望し、別の顧客は最新のスマートホームを希望する場合、それぞれの専門知識と技術が必要になります。これにより、労力とコストが分散され、一つ一つのプロジェクトに集中することが困難になるかもしれません。
4. 顧客満足度の低下
全てのお客さんに合うサービスを提供するのは困難です。結果として、顧客満足度が低下し、リピート顧客の減少や口コミの悪化が起こるかもしれません。例えば、特定のニーズに特化せずに広くサービスを提供すると、その結果として、顧客の期待を満たすことができない場合が増えるかもしれません。これにより、顧客の信頼を失い、リピートビジネスや良い口コミを得る機会が減少する可能性があります。
お客さんを選ばければ、お客さんから選ばれることはない
「絞り込み」を簡単に表すなら、「お客さんを選ぶ」ってことです。
「時の宿すみれ」のように、ターゲットを絞り込み、特化したサービスを提供する勇気が必要です。それによって、サービスの質を向上させ、ブランドを強化し、効率的な経営を実現することができます。お客さんを選ぶことは、お客さんから選ばれるための第一歩です。自社の強みを見つけ、特定のニーズに応えるサービスを提供することで、小さな工務店でも成功への道を切り開くことができるでしょう。
この戦略は、単にお客さんを選ぶだけではなく、自社のアイデンティティを明確にし、それに基づいて最適なお客さんを見つけるプロセスです。それは、単なるビジネス戦略ではなく、お客さんとの真のつながりを築くための哲学でもあります。この考え方を取り入れることで、工務店経営が新しい次元に進化するかもしれません。
絞り込みは、「好み、予算、家族構成、ライフスタイル」など、いろいろな視点で絞ることができます。今回の宿「時の宿すみれ」の場合は、子供づれは相手にしない、団体は相手にしない、という戦略を決め、その戦略に従って、どういうやり方がふさわしいかという戦術を決めています。
誰を相手しないか、したくないかと決めることはとても大事で、お客さんを選ばければ、お客さんから選ばれることはないですよね。