工務店による時代遅れの家づくりは働き方から変える必要がある理由

ここでいう時代遅れとは住宅性能が足りないとか、そういう話ではなく、仕事に対する考え方の話です。

まず、紹介したいのは、日経アーキテクチュアで特集されていた『「設計事務所と工務店」の新しい関係』。

目次

「設計事務所と工務店」の新しい関係

記事の内容は、古民家再生が増える中で、

  • 案件によって連携すべき相手が変わるため、多様な専門家の連携が必要になることから、個人同士の方が臨機応変に対応しやすい。
  • 雇用の関係ではなく、各々が個人事業主となり、業務に応じて連携する。
  • 施工者についても、親方と弟子という組織ではない新しい姿が求められている。

など、組織ではなく、個人がフラットな関係で連携しながら仕事を進めていくことへの変化を取り上げています。

古民家再生をDIYレベルではなく、きちんとおこなおうとすると、スキルも知識も経験も求められますからね。50歳過ぎた設計事務所の所長レベルでも、おさまりがわからず四苦八苦するなんてことも・・・

記事内では、古民家再生においての関係性のことが中心に書かれていますが、この動きは、通常の注文住宅でも起きてきますよ。

「設計事務所がお客さんから報酬をもらって計画を立て、その後に工務店が工事をするという仕事の進め方は、もう時代遅れだと思う。」

「設計事務所と工務店」の新しい関係

という記事の冒頭文の通り、設計事務所が工務店に代わって集客をするなんて話は、ちょっと前の話で、今ではやっていて普通ですからね。

会社は不調を生じさせやすい組織

組織ではなく、個人がフラットな関係で連携しながら仕事を進めていくことへの変化については、働き方にも通ずる話ですが、会社という組織は、とても不調を生じさせやすい塊だと思っています。

これから述べることに、社員・従業員の方はムッとするかもしれませんが、誰が悪いというわけではなく、ピラミッド構造的な環境が不調を生じさせているのです。

不調その1:方向性

売上のことで悩み、必死になるのは経営者だけです。

申し訳ないけど置かれている立場が違います。社員・従業員は、自分がお金を出してるわけでもないし、たとえ会社が潰れても責任を背負うことはありません。失業保険はあるし、転職すればいいので、経営者の苦労を理解し汲み取ることには無理があるわけです。

そんなバラバラな状況をまとめるのが、『企業理念』だったりするのですが、最近では時代の変化も早いため、時代に左右されない不変性や、時代の流れに対応できる可変性を含んでいないと、結局のところ浸透しません。

不調その2:決定権

決定権のない人が絡んでくると、仕事になりません。

決められたことを行う作業なら構いませんが、新たな仕事を生み出すことに、決定権のない人が絡んでくると、無駄が多くなります。

会社という組織は、ピラミッド構造であるがゆえ、決断を下していい人が会社内で決まっています。なので、決定権を持たない人と仕事をしても「社長に相談」「上司に相談」という二度手間三度手間になります。

結局のところ、決定権なんて、構造や役職関係なく、覚悟でしかないんだから、覚悟を持たない人と仕事しても無駄が多いだけです。

例えば、家づくりでも、旦那さんに決定権があるのに、奥さんだけ舞い上がって、一人で好き勝手進んで打ち合わせして、最後に旦那が出てきてNO(建てない)が出るケースとかありますからね。

不調その3:時間

社員・従業員は、時間がお金を産まない働き方なので、時間を無駄遣いします。相手の時間も巻き込んで・・・

決定権の話にも関連しますが、社長や上司にお伺いたてるための二度手間三度手間の打ち合わせなんて、時間の無駄遣いです。社員・従業員は、それを作業ではなく、仕事と定義していますからね。

また、雇用されている以上、時間の自由度が低いです。決められた時間に出社し退社し、休日は連絡つかず、メールも見ないという方は多いです。給料に含まれてないわけですから、それが当然です。

・・・

決して、社員・従業員という存在をdisってるわけではなく、従来の会社という組織である以上、社員・従業員はこのようにならざるをえないわけです。社員・従業員という立場でありながら、上記3つの逆を行うと、ブラック社員となり、確実に居心地が悪くなります。

これらの逆を備えた在り方が武器になる

不調になる要因として、3つ挙げましたが、

  • 方向性
  • 決定権
  • 時間

この3つを自分でコントロールできやすい個人事業主という在り方は、逆に強みになります。もちろん、スキルや知識、経験などがあることは大前提ですけど、

  • 軸となるビジョンがあって、
  • 決定権(覚悟)を持っていて、
  • 時間を使いこなす。

という方は、やはり魅力的です。

日経アーキテクチュアの記事の中に、

才本氏の事務所では、本人を含めて5人が働いているが、人によって得意分野が異なる。ゆくゆくは雇用の関係ではなく、各々が個人事業主となり、業務に応じて連携する形に変えていけないか、と才本氏は目論んでいる。「働き方も、常に集まって一緒に働く必要はない。それぞれが働きたい場所で、働きたい時間に働けばよいのではないか」

<中略>

設計者である才本氏は自ら、若い職人を集めた任意団体を設立し、技術を教え始めているという。現在、大工3人、左官1人、塗装工1人の合計5人が所属している。「親方が人手が必要になった時、個人事業主である若手を探しに来てもらえるような組織になっていけばいいと思う

「設計事務所と工務店」の新しい関係

という文があるように、雇用の関係ではなく、各々が個人事業主となり、業務に応じて連携する形は、最適だと思っています。

雇用や下請け的なピラミッド構造になると、特に下請けは元請けしか見ず、施主を見ないんですよね。お金の出処ではなく、誰から支払われるかしか見えなくなりますからね。

注文住宅3.0から4.0へ

そして冒頭のような動きって、提唱している『注文住宅3.0』に続く、『注文住宅4.0』に近い動きです。つまり、これからは1棟を1社だけが建てる動きが出てくると捉えています。

皆が雇用されていてない下請けでない立場(個人事業主)で関わることで、自分事になりますから、1棟を複数の事業主が建てることになります。自分の事業として捉えた時、自ずと集客したいと思いませんか?

例えば、1棟の住宅を、雇用関係なく、二人で設計すれば、その二人は見学会の歳、頑張って集客しようとしますよね?だけど、自分の事業として感じてないと、告知すらしません。ITリテラシーの課題もあるでしょうが、元請けから雇われた外部の大工や職人って、自分が関わった住宅が見学会する時とか、告知しませんよね?

もちろん、関わる人が増えれば、取り分は減るでしょう。単純に3人で設計すれば、設計料の取り分は従来の3分の1です。ですが、ひとつの事例として共有できますし、写真の費用だって割り勘できます。そして、単純に作業が3分の1になる分、時間に余裕ができます。その時間は、複業するなり、勉強するなり、有意義に使えばいいのです。つまり、働き方にも繋がっているのです。

ただ、自分さえ良ければいいという考えだと成り立ちません。ギブやシェアする気持ちが必要です。なので、『注文住宅3.0』を実践できる人でないと、『注文住宅4.0』は無理でしょうね・・・

ここに来て感じるのは、工務店や設計事務所という組織の在り方を、再構築した方がいいということです。その方が、本物が残りやすくなると思っています。

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