注文住宅は工務店が施主の最大価値を考えた提案でなければならない理由

BS朝日のFresh Facesで、建てたがらない建築士・いしまるあきこさんのインタビュー動画が公開されています。建築家・黒川紀章さんが設計された、中銀カプセルタワービルに事務所を構えているとのことなので、取り上げてみました。

目次

建てたがらない建築家

■あらすじ
学生時代に同潤会青山アパートに出会い古い建物の魅力に気づき、建てない建築士を志す­。
これから建物が余っていく時代に、今ある建物を活かして快適な空間を作るリノベーショ­ンを広めていこうとしているいしまる。彼女の目指す世の中とは?

■プロフィール
建てたがらない建築士・いしまるあきこ
1978年生まれ 東京理科大学大学院修了
既にある建物の良さを見出し手をかけ有効活用したリノベーションを中心に活動している­建築士。
建築の枠にとらわれず人と人、人と場所を繋ぐきっかけづくりがモットー。
自分ひとりでできるセルフ・リノベーションを広めるために全国各地でワークショップを­開催している。

老朽化しても人気が衰えない中銀カプセルタワー

以前も、「建築家・黒川紀章も挑戦したコンパクトな暮らし」ということで、中銀カプセルタワーを取り上げています。

いしまるあきこさんも事務所を構えている、この「中銀カプセルタワー」、好きな方は多いですが、下記のレポートを見るかぎり、老朽化がひどいですね。

給湯は全館で停止していて、給水もA、Bと2棟あるうちのB棟のみ可動。空調も全館共有のものは使えないようです。また、剥げ落ちた外壁や、建築材にはアスベストが使用されているとのこと。カプセルを購入したにもかかわらず、使用できない所有者もいるようです。

2007年に一度は建て替えが決議されましたが、リーマンショックの影響で頓挫し、現在、建て替え派と保存派で意見が割れています。法律では老朽化マンションの建て替えは、全体の8割の賛成が必要で、現在建て替えに賛成しているのはおよそ7割とのこと。

こういうズルズルさって、お金を生まないんですよね・・・

追記

2018年に中銀グループが建物と敷地を売却し、新型コロナの流行をきっかけに経済的な理由で所有者がカプセルを手放していった。2021年3月22日に管理組合は臨時総会を開き売却を決議し、2022年4月21日に解体が始まった。解体は東京ビルドが担当し、まず内装を解体しカプセル内のアスベストを除去してから、骨組みだけになったカプセルを取り外していった。カプセル間は非常に狭く、解体作業は困難だった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E9%8A%80%E3%82%AB%E3%83%97%E3%82%BB%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%93%E3%83%AB

最大価値を考えるべきなのでは?

なんだか最近の、古いものは何でもかんでも直そう(リノベーションやリフォーム)という傾向に、違和感を感じるんですよね。建て替えかリノベーションかは、その場所での最大価値を考えるべきなのでは?と思っています。

中銀カプセルタワーの場合、デザインやコンセプトとかは好きですけど、場所が東京の汐留付近なので、土地も高いですし、ちまちまと事業するのはいかがなものかと・・・多分、直したところでしれてる気がしますが、その辺りの事業展開を知りたいですね。

個人的にはこういうのは「建て替え派」で、きっとこの場所で生まれるお金って、もっと大きなものだと思っていて、さっさと建て替えて、新たな取組みが必要な気がします。場所が場所なだけに、事業性を追求した方がいいですよ。

最大価値を引き出すために、何をしたらいいのか?

これを注文住宅を手掛ける工務店に置き換えるなら、何が住まい手である家族にとっての最大価値なのかを捉える必要があるわけです。

伊勢神宮は20年で建て替え。リノベーションとは無縁の聖域

注文住宅は工務店が施主の最大価値を考えた提案でなければならない理由
伊勢神宮

伊勢神宮といえば、全ての社殿を20年ごとに造り替える、神宮式年遷宮が有名です。

式年遷宮が20年ごとに行われる理由は、耐久性の問題ではなく、下記のようなことが理由なんだそうです。

  • 式年遷宮を行うのは、萱葺屋根の掘立柱建物で正殿等が造られているためである。塗装していない白木を地面に突き刺した掘立柱は、風雨に晒されると礎石の上にある柱と比べて老朽化し易く、耐用年数が短い。そのため、一定期間後に従前の殿舎と寸分違わぬ弥生建築の殿舎が築かれる。
  • 2013年の式年遷宮広報本部は、式年遷宮を行なう理由として、神の勢いを瑞々しく保つ「常若(とこわか)の思想」があると説明している。『延喜式』にも記された20年という間隔の由来については、式年遷宮記念せんぐう館の小堀邦夫館長が糒(ほしい)の貯蔵年限が20年だったことを挙げているほか、20が聖なる数とされていたという見解、古代の暦法、宮大工や神宝職人の技術伝承など諸説ある。
  • 建物の「清浄さ」を保つ限度が、20年程度であるため。これは、耐用年数という意味ではなく、神道の宗教的な意味における「清浄さ」である。
  • 建替えの技術の伝承を行うためには、当時の寿命や実働年数から考えて、20年間隔が適当とされたため。建築を実際に担う大工は、10歳代から20歳代で見習いと下働き、30歳代から40歳代で中堅から棟梁となり、50歳代以上は後見となる。このため、20年に一度の遷宮であれば、少なくとも2度は遷宮に携わることができ、2度の遷宮を経験すれば技術の伝承を行うことができる。
  • 旧暦の「朔旦冬至(さくたんとうじ)」(11月1日が冬至にあたること)が、19から20年に一度の周期(メトン周期)であるため。
  • 一世代がおよそ20年であるため。
  • 神嘗祭に供される穀物の保存年限が20年であるため。
wikipedia
https://www.nikkei.com/article/DGKDZO48500750W2A111C1BC8000/

神宮の場合、最大価値を考えたら、神聖な清浄さを保つために建て替えを行う方がいいわけです。

注文住宅は工務店が施主の最大価値を考えた提案でなければならない理由

家族の夢と現実のギャップ

注文住宅を求める家族たちは、自分たちの夢や理想を具体的な形にしたいと考えています。それは、子供部屋の配置やリビングの広さ、キッチンのデザインなど、細部にわたる要望が含まれることも少なくありません。しかし、現実の建築過程では、土地の条件や予算、建築法規などの制約が存在します。これらの制約と家族の理想との間に生じるギャップは、家族の失望を生む原因となり得ます。工務店としては、このギャップを最小限に抑える努力が求められます。

工務店の役割と課題

工務店経営者として、顧客の要望を深く理解し、それを形にすることが最大の役割です。しかし、その過程で直面するのは、現場の作業員や設計士とのコミュニケーションの不足、または技術的な制約や予算の問題など、多岐にわたる課題です。これらの課題を乗り越えるためには、経営者自身が現場の状況を把握し、適切な指示やサポートを行うことが不可欠です。また、家族にとっての最大価値を引き出す住宅を提供することが、工務店としての社会的な使命とも言えるでしょう。

解決策の提案

家族にとっての最大価値を引き出すためには、まずは家族の要望や夢をしっかりと聞き取ることが必要です。その上で、それを形にするための具体的なプランを提案することが求められます。予算や技術的な制約も考慮しながら、最適な解決策を見つけ出すことが重要です。例えば、高額な材料を使わずに同じような効果を得る方法や、工夫を凝らした設計で家族の要望を実現する方法など、工夫と創意が求められます。


家族が注文住宅に求める価値は、ただの建物以上のものです。それは、家族の未来や夢、生活の質を向上させるための手段としての住宅です。工務店経営者として、この事実をしっかりと認識し、家族にとっての最大価値を引き出すための手段としての注文住宅を提供することが、今後の成功への鍵となるでしょう。顧客の満足度を高め、長期的な信頼関係を築くためにも、この認識は絶対に欠かせません。

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