工務店が住んでからの幸福度が高い注文住宅を提供したいなら、家づくりに『体験=経験』を加えた方が良い理由

モノよりコトと言われ始めて、数年が経ちますが、「モノの購買と経験(コト)の購買では、どちらが幸福度はどちらが高くなるか?」という実証研究が行われ、その結果が興味深いです。

実証の結果では、モノの購買よりも、経験的購買の方が、購買後の幸福度が高くなるということが報告されています。

工務店が住んでからの幸福度が高い注文住宅を提供したいなら、家づくりに『体験=経験』を加えた方が良い理由
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モノ購入の幸福度が経験購入より低い理由

被験者に自分の人生の幸福度を高めるために過去に行ったマテリアル購買、あるいは経験的購買について思い出してもらい、幸福に感じた程度を回答してもらう調査を行いました。その結果、幸福度はマテリアル購買よりも経験的購買のほうが高くなったのです。また、経験的購買のほうが、良いお金の使い方をしたと感じ、思い出したときの気分も良かったことも報告しています。

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実証研究なので、ちょっと小難しい話ですが、、、記事の中では、モノの購買よりも、経験的購買の方が、購買後の幸福度が高くなるその理由を3つ挙げています。

  1. ヘドニック・トレッドミル
  2. 購買意思決定プロセスの違い
  3. 人間関係の促進

要約すると、、、

1.モノの購買で得られる幸福感は、慣れるのが早い。

モノの購買によって得られる幸福も、経験によって得られる幸福も、人はだんだんとその状態に慣れてしまうため、その幸福感が次第に薄れていってしまうとのことです。

どちらも薄れますが、モノの購買は、その慣れが早いため、幸福感が下がりやすく、経験的購買の方が、その慣れが遅いため、モノの購買よりは幸福感を高く感じやすいとのことです。

家づくりの場合、引き渡し直後が一番幸福感が高く、だんだん下がっていくことが、示していますね。家という箱だけを提供しても、施主の幸福感はすぐ下がるということです。

工務店にできることとは?

家づくりのプロセスをただの建築作業ではなく、施主にとって一生の思い出に残る豊かな体験へと昇華させる必要があります。これは、施主が単に資金を提供し、完成品を受け取る受動的な役割から脱却し、家づくりのアクティブな参加者へと変貌することを意味します。施主が設計段階から積極的に意見を出し、自らのライフスタイルや価値観を反映させることで、家は単なる住居ではなく、施主の人生の一部としての意味を持ち始めます。

たとえば、工務店は設計段階でのワークショップを開催し、施主が自分たちの家に何を求めているのか、どのような生活を送りたいのかを深く掘り下げる場を提供します。これにより、施主は自分たちの家づくりに対するビジョンを明確にし、そのプロセスにおいて重要な決定を下すことができます。また、建築中の現場見学を定期的に行い、施主が自分たちの家が形になっていく過程を目の当たりにすることで、建築への理解を深め、期待感を高めます。

さらに、施主が自らの手で行う内装作業の機会を提供することも有効です。例えば、壁のペイントや庭の植栽など、施主自身が直接関わることができる作業を通じて、家づくりに対する愛着とプライドを育むことができます。これらの体験は、完成した家に対する満足度を高めるだけでなく、家族や友人との会話の中で語り継がれる貴重な思い出となります。

工務店はまた、家という物理的な空間の提供に留まらず、そこでの生活全体を豊かにする提案を行うべきです。地域のイベントへの参加を促したり、近隣住民との交流をサポートすることで、施主が新しいコミュニティの一員として受け入れられる手助けをします。これにより、施主は新しい環境においても社会的なつながりを築きやすくなり、家づくりが単なる建築プロジェクトではなく、人生の新たな章を開くきっかけとなります。

このように、物理的な家の提供と同時に、施主の経験を豊かにすることで、工務店は施主の生涯にわたる幸福度を高めることができます。家づくりは、施主の人生における重要な目標地点であり、工務店はその目標を最大限に価値あるものにするためのパートナーとなるのです。

2.モノの購買は、比較が起きやすいため、幸福感が下がりやすい。

モノの購買では、たくさんの選択肢の中から、比較しベストなものを選択します。そのため、機能、価格などの商品比較が簡単にできる現代では、より多くの商品を比較しようとしてしまいます。その結果、選択後の後悔も生まれたり、次々と出てくる類似の新商品との比較を行ってしまい、幸福感が下がりやすいのです。

経験的購買では、自分の中で、品質やパフォーマンスの最低基準を設定するため、その基準を満たしていれば、十分に満足感を得られるとのことです。また、状況や出来事などのエピソードも経験に含まれるため、他にはない記憶が残り、他と比較をすることがなく、幸福感が下がりにくい。

家づくりの場合も、『暮らし』に惹かれる方は、住んでからも幸福度が高いですね。

工務店にできることとは?

施主の「暮らし」を中心に据えた家づくりを推進することでしょう。これは、単に機能的な住宅を提供するのではなく、施主の日常生活がどのように豊かになるかを描くことを意味します。施主が家づくりを通じて得られる「暮らし」の質を重視することで、物質的な比較による不満や後悔を軽減し、長期的な満足感と幸福感を実現できます。

具体的には、工務店は家づくりのプロセスにおいて、施主のライフスタイルを深く理解し、それを反映した家づくりを行います。これには、施主の趣味や将来の計画を考慮した間取りの提案、家族構成の変化に柔軟に対応できる設計、地域の自然環境や文化を生かした屋外空間の活用などが含まれます。施主が自分たちの「暮らし」に合わせて家をカスタマイズできるようにすることで、他の家との比較ではなく、自分たちの生活に最適化された家に対する満足感を得られます。

また、施主が家づくりの過程で得る経験を重視し、彼らが自分の家を「創造する」過程に参加できるような機会を積極的に提供します。これは、施主が直接壁の色を選んだり、庭のデザインに関わったり、内装の一部を手作りするワークショップを通じて実現されます。このような参加型のアプローチにより、家づくりは単なる購買行為を超え、生活そのものを豊かにする経験へと昇華されます。施主は自分たちの家に対する愛着を深め、他の家との比較による幸福感の低下を防ぎます。

さらに、工務店は施主が家づくりを通じて得る経験を記憶に残るものにするために、家づくりの各段階での記念行事やイベントを企画することもできます。例えば、地鎮祭や上棟式、引き渡し前のお披露目パーティーなど、家づくりの重要な節目を祝うことで、施主とその家族にとっての特別な思い出を作り出します。これらのイベントは、施主が家づくりの過程を一つの物語として語ることを可能にし、家に対する感情的な結びつきを強化します。

工務店が提供するのは、単なる住宅ではなく、施主の「暮らし」そのものです。施主が日々の生活の中で感じる幸福感を高めるために、家づくりを通じて独自の経験を提供し、長期的な満足度を追求することが、工務店にとっての新たな使命となります。このアプローチにより、工務店は施主にとって単なる建築業者ではなく、生活全体の質を高めるパートナーとしての地位を確立することができるでしょう。

3.モノの購買は、コミュニケーションが希薄で、関係性が築きにくい。

経験的購買は、モノの購買よりも他の人と一緒に行う活動が多くなるため、人間関係を促進しやすいとのこと。経験的購買は、より良い人間関係を築くキッカケになりやすいのです。

家づくりの場合も、コミュニティが生まれやすいのは、経験的購買をする方です。また、施主も一緒に壁塗りをしたりすると、関係性がグッと近くなります。一緒に体験する経験が関係性を築いていきますね。家という箱だけを提供しても、関係性は築けないです。

工務店にできることとは?

工務店は家づくりのプロセス全体を通じて、施主とのコミュニケーションを深め、持続的な人間関係を築くことに注力する必要があります。物質的な購買がもたらす一時的な満足感を超え、共有される経験を通じて施主の心に深く根ざした満足感を植え付けることが、長期的な幸福感に繋がります。

具体的には、工務店は設計段階から施主を積極的に巻き込むことが重要です。これは、施主が自分の価値観やライフスタイルを家の設計に反映させるためのワークショップを開催することから始まります。施主が直接、間取りや素材選びに関わることで、家づくりは単なる購買から共創のプロセスへと変わります。また、施工段階では、施主が壁塗りや庭の植栽などの作業に実際に参加する「体験型イベント」を企画し、施主が家づくりの一部となり、その過程をより深く理解し、愛着を持つことができるようにします。

さらに、家が完成した後も、工務店は施主が自社のイベントやコミュニティ活動に参加することを促し、サポートします。これにより、施主はコミュニティの一員としての存在を作ることができ、他の施主との関係性を深めることができます。

このようなアプローチは、施主が家という物理的な空間だけでなく、そこでの生活と人間関係に価値を見出すことを可能にします。工務店は、家を提供するだけでなく、施主の社会的な幸福感を高めるためのプラットフォームを提供することにより、単なる建築業者から生活全体のクオリティを向上させるパートナーへと進化することができます。このような関係性の構築は、施主にとっての満足度を高めるだけでなく、工務店にとっても施主からの強い愛着と長期的なビジネスの成功に繋がります。

加えて、工務店は施主との関係性を維持するために、アフターサービスやメンテナンスの機会を通じて定期的なコミュニケーションを図るべきです。例えば、季節ごとのメンテナンスサービスを提供することで、施主との接点を持続させ、家づくりが終わった後も長期的な関係を維持します。また、施主が家に関する様々な疑問や問題を持った際に、迅速かつ的確なサポートを提供することで、信頼関係をさらに強化することができます。

工務店が目指すべきは、単に家を建てることではなく、施主の生活全体にわたる幸福感を高めることです。家づくりを通じて形成される人間関係やコミュニティは、施主の生活の質を向上させると同時に、工務店にとっても独自の価値提案となり、競争の激しい市場において差別化を図るための重要な要素となるでしょう。


以上です。これらの結果から、家づくりに『体験=経験』を加える事は、「幸福度が高くなる=満足度が高くなる」ことにも繋がりますね。

たとえ、同じ家をつくっていたとしても、家づくりを「モノの購買」として位置づけるのか、「経験的購買」に位置付けるのかによって、その後の満足度が変わるってことですよ。

もちろん、その土台となる品質(性能等)が良いことは当然の話ですけど。

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