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【考察】「建設業」倒産動向調査(2023年)を踏まえた小さな工務店の方向性
2024年1月10日に帝国データバンクが、「建設業」倒産動向調査(2023年)を公開しました。
2023 年に発生した建設業者の倒産件数は 1,671 件で、前年比+38.8%と急増したとのこと。しかも、増加率が30%を超えるのは、2000年以降では初めてで、リーマン・ショック期(2008 年は3,446 件で前年比+17.3%)にも見られなかった高い水準だったようです。
・・・まぁ、斜陽産業の数余りな状態での不測の事態でしたから、当然の結果でしょう。質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)でわずかながら延命できたところが倒産したのも多かったようです。
以下、これらの状況を鑑みて、小さな工務店はどうしていくのがいいのかを考察してみます。
はじめに:建設業界の現状と直面する課題
建設業界の倒産件数の増加とその背景
工務店経営者が日々の経営で感じている通り、建設業界は現在、多くの挑戦に直面しています。特に2023年は、8年ぶりに建設業の倒産件数が1,600件を超え、前年比で38.8%という急激な増加を見せました。この数字は、リーマン・ショック期を上回る増加率であり、2000年以降で最も大きな増加です。これは、単なる一時的な変動ではなく、業界全体に深刻な影響を及ぼす可能性がある事態を示しています。
この背景には、「人手不足」と「資材高」が大きく影響しています。特に小規模な工務店にとっては、これらの問題が経営に直接的な打撃を与えていることでしょう。人材が確保しにくい現状では、プロジェクトのスケジュールが遅れ、コストが上昇する一方で、資材の価格高騰は利益率を圧迫しています。
資材コストの上昇と人手不足の影響
2023年の建設業界は、資材コストの上昇という重大な問題に直面しました。原材料の価格高騰は、プロジェクトのコストを直接的に引き上げ、工務店の利益率を低下させています。さらに、資材の高騰は、下請け、孫請けを含む業界全体の収益力を低下させる原因となっています。
人手不足は、この問題をさらに複雑にしています。人材が不足することで、工期の延長が避けられず、完工時期の遅れが発生しています。これにより、元請け業者からの支払い延期が多くなり、特に小規模な工務店にとっては資金繰りに大きな圧力を与えています。
このような厳しい状況の中でも、工務店が生き残るためには、現状の理解を深め、対策を講じることが不可欠です。
倒産率増加の内訳:小さな工務店が直面する困難
倒産率の増加における地域別の特徴と原因
小規模な工務店の経営者の皆さんが日々直面している経営環境は、地域によって異なる特色を持っています。2023年のデータによると、「北海道」では前年比210%増の倒産が発生し、「九州」では過去10年で最多の倒産が確認されました。このような地域ごとの倒産率の増加には、それぞれ特有の原因があります。
たとえば、北海道では、戸建て住宅の建設コストの上昇により、建売住宅の在庫が滞留し、これが小規模業者の倒産に直結しています。一方、九州では、大型再開発プロジェクトや半導体関連の投資が活発化していることから、資材や人手の確保に伴うキャッシュアウトが先行し、資金繰りに窮するケースが多く見られました。
これらの事例から分かるように、地域の経済活動の特性が、建設業者の倒産率に大きな影響を与えています。特に小規模な工務店では、こうした地域特有の状況に柔軟に対応することが、経営の安定にとって非常に重要です。
小さな工務店が直面する具体的な財務課題
小規模な工務店は、経営規模の小ささから、資金繰りの問題に直面しやすいのが実情です。2023年の建設業倒産のデータによると、大手企業の倒産が全体の負債額を押し上げる一方で、多くの小規模業者が倒産している実態が明らかになりました。平均負債額が8,900万円と、小規模業者の倒産が中心となっていることが伺えます。
小規模業者が直面する財務課題は、主に資金流動性の問題です。資材の価格高騰や人手不足によるコスト増加、そしてプロジェクトの遅れに伴う収益の遅れは、小規模業者の手元資金を圧迫します。加えて、融資を受けるための借入余力が限られている状況では、資金繰りがさらに厳しくなります。
これらの課題に直面する中で、小規模な工務店は、資金繰りの改善と経営効率化に注力する必要があります。
建設コスト上昇の実情と今後の見通し
建設コスト上昇の要因と現在の市場状況
小規模工務店を経営する皆さんにとって、建設コストの上昇は経営に大きな影響を与える重要な課題です。2023年の建設業界の動向を見ると、資材の価格高騰と人手不足がコスト上昇の主要な原因となっています。このような状況下では、施工単価の上昇が期待しにくい中で、コスト増加が直接的に利益率の低下に繋がっています。
具体的には、木材や鉄鋼などの基礎資材の価格が国際的な供給問題によって高騰し、これが建築プロジェクトの予算に直接影響を及ぼしています。また、人手不足による労働コストの増加は、特に技術が必要な分野で顕著です。これらのコスト上昇が蓄積することで、プロジェクトの収益性が著しく低下しています。
2024年問題:労働時間の上限規制とその影響
2024年には、建設業界に新たな挑戦が待ち受けています。いわゆる「2024年問題」として知られる労働時間の上限規制が導入されることになり、これが業界に大きな影響を与えることが予想されます。この規制により、残業時間が制限され、プロジェクトの工期がさらに長引く可能性があります。これは、特に人手不足が顕著な小規模工務店にとって、大きな課題となるでしょう。
この新しい規制の導入により、業界内での価格転嫁や工期の適正化が進められていますが、これらの変化が下請業者にまで浸透するには時間がかかる可能性があります。その結果、建設コストのさらなる上昇や倒産件数の増加も懸念されています。
このような状況の中で、小規模工務店が生き残るためには、市場の変化に柔軟に対応し、コスト管理をさらに厳格に行う必要があります。具体的な対策としては、コスト効率の良い新しい技術の導入、効率的なプロジェクト管理、そして顧客との適切な価格交渉が挙げられます。
建設業界は今、大きな転換期を迎えています。小規模工務店がこの挑戦を乗り越え、持続可能な成長を遂げるためには、変化に対する適応力と、経営戦略の見直しが求められています。
生き残りをかけた戦略:小さな工務店の対策
資金繰りの改善と経営効率化
現在の建設業界の状況では、小規模工務店が資金繰りの改善に注力することが極めて重要です。資金繰りを改善するためには、まず現金流を常に把握し、不要な支出を削減することが必要です。具体的には、プロジェクトの予算管理を徹底し、無駄なコストが発生していないか定期的に見直しを行います。また、売掛金の回収を迅速に行い、買掛金の支払いスケジュールを適切に管理することで、手元の流動性を確保します。
経営効率化のためには、プロジェクト管理を最適化し、作業プロセスを標準化することが効果的です。これにより、無駄な時間や資源の浪費を減らし、コストを削減しつつ生産性を向上させることができます。さらに、デジタルツールやソフトウェアを導入することで、プロジェクトの進捗管理やコミュニケーションの効率を高めることも有効です。
価格交渉と請負単価の適正化
価格高騰の中で生き残るためには、施主や納入する業者との価格交渉が鍵となります。請求価格の適正化を図るためには、まず自社のコスト構造を正確に理解し、適切な利益を確保できる価格設定を行うことが重要です。また、長期的な関係を築いている信頼できる業者との交渉を通じて、材料費の削減を目指します。
施主に対しては、建築コストの現状と、品質を維持しつつプロジェクトを実行するための必要性を正確に伝え、理解を得る努力も必要です。価格交渉はデリケートなプロセスですが、双方にとって公平で持続可能な関係を築くことが、長期的な事業成功のためには欠かせません。
技術者不足への対応と人材育成
人手不足は現在の建設業界の大きな課題であり、小規模工務店も例外ではありません。この問題に対処するためには、優秀な技術者を確保し、育成することが必須です。従業員のスキルアップを図るためには、定期的な研修や教育プログラムを実施し、最新の建築技術や規制に関する知識を提供することが有効です。
また、優秀な人材を引きつけ、長期間留まってもらうためには、適切な報酬体系と労働環境の整備が必要です。従業員がやりがいを感じ、成長できる環境を作ることで、人材の定着率を高め、プロジェクトの品質と効率を向上させることができます。
小規模工務店が今後も競争力を維持し、成長を続けるためには、これらの対策を実施し、柔軟かつ効率的な経営戦略を展開することが重要です。
業界の変化に対応する:柔軟な事業戦略の採用
業界の変化に合わせた事業モデルの変更
建設業界は常に変化しており、小規模な工務店もそれに適応する必要があります。市場のニーズや技術の進歩に合わせて事業モデルを見直し、柔軟に変化することが重要です。たとえば、エコ建材の使用やスマートホーム技術の導入など、環境に配慮した建築や最新技術を取り入れたサービスを提供することで、新しい顧客層を開拓できる可能性があります。
さらに、デジタル化の進展を活用することも重要です。例えば、プロジェクト管理ツールなどを導入することで、設計から施工、メンテナンスまでのプロセスを効率化し、コスト削減と品質向上を図ることができます。
地域や市場の特性に応じたサービスの多様化
小規模な工務店では、地域社会のニーズを理解し、それに応じたサービスを提供することで、差別化を図ることが可能です。例えば、地域に根差した文化や環境を生かした住宅の設計、地域特有の材料を使用した施工など、地域性を反映したサービスを展開することで、顧客の信頼を得ることができます。
また、高齢化社会や都市部のコンパクト化など、社会の変化に合わせた住宅の提供も有効です。例えば、高齢者向けのバリアフリー住宅や、限られたスペースを有効活用する都市型住宅の提供は、新しい市場を開拓するチャンスになります。
業界の変化に対応するためには、外部の変化を敏感に察知し、内部の資源を効果的に活用することが求められます。小規模な工務店でも、柔軟な思考と積極的な取り組みによって、新たなビジネスチャンスをつかむことができます。
ちなみに、私が感じている工務店や住宅会社への違和感は、何千万円も払うのに、何十年も住む買い物なのに、請け負う会社が続くかどうかわからないことです。当然、会社経営なんて未来に何が起きるかなんてわかりませんが、現時点の経営状態もわからない現状は、何千万円も払う買い物としては不誠実だと感じています。
まとめ:小さな工務店がこれからどう進むべきか
今の難しい状況とこれからの道
今の建設業界は大変な時期を迎えています。多くの工務店が倒産し、材料費の高騰や人手不足に悩んでいます。でも、これは同時に新しいやり方を考え、ビジネスを強化するチャンスでもあります。
小さな工務店がこれからもしっかりとやっていくためには、しなやかに対応しながら、もっと効率的に仕事をする方法や新しい考え方を取り入れることが大切です。お金の管理をしっかりと行い、無駄を省き、新しい技術や人材に投資することが、これからの成功の鍵を握っています。
一言で言えば、小さな工務店(会社)ほど経営者次第なのです。
成長を続けるためには
小さな工務店が頑張って成長し続けるためには、以下のようなポイントに注意しましょう。
- 意見を聞く:お客様やスタッフからの意見を大切にして、常に改善につなげます。
- 新しい技術を取り入れる:時代に合った建築技術やコンピューターのツールを使って、もっと効率よく仕事をしましょう。
- スタッフを大事にする:スタッフの技術を磨き、チームとして一致団結することが大切です。
- 地元と仲良くする:地域のニーズに合ったサービスを提供し、地域に根ざした仕事をしていきましょう。
過去に、色々記事を書いていますので、以下もご覧ください。
確かに今は大変な時期ですが、斜陽産業である以上、これからもずっと大変になります。難しい道のりかもしれませんが、正しい方向性と前向きな決断力で、乗り越えていくしかないですね。